原理と政策の難しさ
「社会保障」は難しいとよく言われていますが、出題のパターンがかなりしっかりしているので、勉強するのが楽な科目だと思います。楽というのは語弊があるかもしれませんが、予想と全く違う問題が出る可能性がかなり低いです。勉強したことがそのままストレートに出てくれる科目と表現するといいかもしれません。
「貧困に対する支援」、「保健医療サービス」なども、枠組みがしっかりしているので、問題にほとんどブレがありません。同じ枠の中から同じような問題が何度も出題されています。
一方で「社会福祉の原理と政策」は「とらえどころがない」と表現する受験生が多いです。これを勉強したら必ず点数がとれるとか、これは毎回出ているという問題が少なく、バリエーションが広いのが特徴です。旧カリキュラムでは「現代社会と福祉」という名前で、ほぼ同じ内容を扱っており、科目名は変わっても、「歴史」「思想・哲学」「福祉政策の仕組み」を扱うという中身の骨格は大きく変わっていません。
出題傾向にあわせた効率のよい勉強方法
第29回から第38回までの10回・98問を集計しても、いちばん出題数が多い項目で18問ですので、どこか1か所を重点的に取り組めば得点が安定するという構造にはなっていません。それらを踏まえて、過去問を分析した結果、次の順番で勉強することをお勧めします。国試対策も原則としてこれらを重視してすすめています。
1 社会福祉の歴史(イギリスの救貧法と日本の歴史)
↓
2 思想・哲学と理論、ニーズの考え方(人名と学説)
↓
3 福祉政策の動向(社会福祉法、地域共生社会、多文化共生)
↓
4 関連施策(労働・住宅・教育)
↓
5 国際比較、福祉サービスの供給と利用過程、政策評価
↓
6 社会問題(貧困、人口、孤立)
歴史・人名を最初に置いたのは、出題数が最も多いことに加えて、統計や白書のように毎年更新されることも、法律のように改正されることもなく、一度覚えたものがそのまま第39回でも活用できる可能性が高いからです。第37回問19のサッチャー、第37回問20の大正期の社会事業、第38回問19のスピーナムランド制度、第38回問24の福祉関係八法改正と、定番の問題が新カリキュラムの第37回・第38回でも9問中2問ずつ出ています。
6を最後に置いたのは、貧困率や人口の数値が白書の刊行に合わせて更新されるためです。出題数は少なくありませんが、最新の数値がそろってから直前期にまとめて覚えたほうが効率的です。
この科目の中心は歴史と人名です
この科目は、日本と欧米、それぞれの社会福祉の歴史的展開や有名な思想、それに関する人名についての知識が確認される問題が中心です。「人名」+「歴史」の問題が中心と言っていいでしょう。歴史は社会保障や児童、高齢者、障害の各論でも出題されるので、必ずおさえなければならないポイントです。現代にいたるまでの歴史(プロセス)を知っておくことは、社会福祉士の国家試験には不可欠です。
歴史は、日本とイギリスをそれぞれ時代順にまとめてあります。どこから読めばよいかも並べていますので、順番に進めてください。
→【流れで覚える歴史シリーズ】全記事一覧
人名は、6つのグループに分けて整理しています。それぞれがどのような関係にあるのかを整理しながら覚えることが大切です。
→人名シリーズ全体マップ
歴史はまず大枠から、いきなり完璧を求めない!
日本は、まず大きな枠組みから覚えてください。ざっくりいうと、こういう流れです。
1910年代 第一次世界大戦、済世顧問制度・方面委員制度ができる、同時期に米騒動
1920年代 関東大震災・世界恐慌、救護法制定、はじめて医療保険ができる(健康保険法)
1930年代 国民健康保険法制定(まだ皆保険ではない)、社会事業法・国家総動員法・厚生省設置
1940年代 第二次世界大戦が終わり、生活困窮者緊急生活援護要綱から福祉三法が制定される
1950年代 社会福祉事業法(現在の社会福祉法)が制定され、高度経済成長がはじまる
1960年代 福祉六法が完成し、国民皆保険・皆年金が実現する、児童扶養手当法制定
1970年代 児童手当法制定、1973年は「福祉元年」、老人医療費無料化
1980年代 老人保健法制定(老人医療費一部負担金導入)、ゴールドプラン策定
1990年代 福祉八法改正から基礎構造改革が動き始める
2000年 社会福祉基礎構造改革、措置から契約へ
2000年代以降 地域包括ケアシステム、地域共生社会、重層的支援体制整備事業と「地域」がキーワードに
この流れがつかめてきたら、少しずつ間を埋めていきます。
・高齢化率が7%、14%、21%を超えたのはいつか
・ゴールドプランやエンゼルプランや障害者プランはいつ作られたか
・児童・高齢・障害の虐待防止法はいつ制定されたか
大きな流れをつかんでいないうちに、年表を完璧に覚えようとするのは効率が良くありません。まずは国家試験によく出題されている年表を覚え、たまにしか出ていない問題を覚え、めったに出ていない問題は余力があれば覚えるくらいの気持ちでいきましょう。
国家試験はカッコ埋め式のような問題は出題されませんので、年代だけ暗記しようとするのもやめましょう。大切なのは「時代背景」と「内容」です。
さらに、この年表にあわせて、海外では何があった?を整理するともっとすっきりします。
歴史については国・時代別にこちらにまとめてあります。
→【流れで覚える歴史シリーズ】全記事一覧
大項目3(社会福祉の思想・哲学、理論)の14問は、思想・哲学が6問、理論が3問、ニーズが3問、論点が2問という内訳です。ブラッドショーのニード類型は第35回問27と第36回問25の2回、ロールズは第30回問22と第35回問24の2回に登場しています。
大項目8(福祉政策の動向と課題)の14問のうち、社会福祉法そのものを問う出題が5問あります。第31回問30、第32回問22、第32回問29、第33回問22、第36回問30です。多文化共生と外国人施策は第32回問27、第36回問27、第37回問23の3問でした。
大項目9(福祉政策と関連施策)の13問は、労働が6問、住宅が3問、教育が2問、保健医療が2問です。
第37回・第38回の18問では、歴史が4問で最も多く、旧カリキュラムと比べて比重は変わっていません。目立つのは2つ選ぶ形式の増加で、98問全体では8問ですが、第38回は9問中4問がこの形式でした。
分析データ
ここから先は、上の勉強の仕方をまとめる根拠にした集計です。勉強の仕方だけ知りたい方は、ここまでで大丈夫です。
かっこ内は、前半が過去4年の出題数、後半が過去10年間の出題数です。旧カリキュラムの「現代社会と福祉」の出題回数も含めています。
①社会福祉の原理 (1/1)
②社会福祉の歴史 (5/18)
③社会福祉の思想・哲学、理論 (5/14)
*②③は主に歴史と人名問題
④社会問題と社会構造 (4/11)
⑤福祉政策の基本的な視点 (7/7)
⑥福祉政策におけるニーズと資源 (0/2)
⑦福祉政策の構成要素と過程 (3/7)
⑧福祉政策の動向と課題 (6/14)
⑨福祉政策と関連施策 (5/13)
*⑧⑨は時事問題
⑩福祉サービスの供給と利用過程 (2/7)
⑪福祉政策の国際比較 (0/4)
上位5つの項目で70問となり、98問のおよそ7割を占めます。反対に、大項目6(福祉政策におけるニーズと資源)は2問、大項目1(社会福祉の原理)は1問でした。
大項目2(社会福祉の歴史)の18問は、日本が10問、欧米が8問という内訳です。欧米8問のうち7問はイギリスで、残る1問は第36回問23のアメリカのニューディール政策でした。日本の10問は、戦前が5問、戦後が5問です。


コメント