相対的貧困率とは
貧困には、絶対的貧困と相対的貧困の2つの捉え方があります。
絶対的貧困は、衣食住といった生きるために必要なものを欠く状態です。世界銀行はこれを国際貧困線という基準で測っており、1日あたり3.00ドル未満で生活する状態を極度の貧困としています(2025年6月改定)。
相対的貧困は、その社会の標準的な生活水準と比べて著しく低い状態です。日本の子どもの貧困は、こちらの考え方を用います。
相対的貧困率は、以下の考え方で算出します。
①世帯の手取り収入を、世帯人員に応じて1人あたりに調整する(等価可処分所得)
②全世帯員の等価可処分所得を並べて中央値を出す
③中央値の半分を貧困線とする
④貧困線に満たない世帯員の割合が相対的貧困率
この算出方法はOECD(経済協力開発機構)が作成し、加盟国全てが同じ計算式を用いているため、国際比較が可能です。
貧困線と中央値
2025(令和7)年国民生活基礎調査によると、2024(令和6)年の等価可処分所得の中央値は277万円、その半分である貧困線は138万円です。
つまり、1人あたりに調整した手取りが年間138万円に満たない世帯で暮らす人が、相対的貧困の状態にあると判断されます。
たとえば1人世帯なら、手取りが138万円未満で貧困線を下回ります。2人暮らし以上は、世帯人員に応じた調整が入るため、2人世帯の貧困線は約195万円、4人世帯で約276万円となります。
なお、国民生活基礎調査は3年ごとに大規模調査を行い、貧困率はその年にだけ公表されます。
全体・子ども・ひとり親世帯の貧困率
| 区分 | 2024年 (2025年調査) | 2021年 (2022年調査) | 増減 |
|---|---|---|---|
| 相対的貧困率(全体) | 15.0% | 15.4% | △0.4 |
| 子どもの貧困率(17歳以下) | 11.0% | 11.5% | △0.5 |
| 子どもがいる現役世帯 | 9.0% | 10.6% | △1.6 |
| そのうち大人が一人 | 44.7% | 44.5% | +0.2 |
| そのうち大人が二人以上 | 6.7% | 8.6% | △1.9 |
この調査から読み取れることをまとめます。
①相対的貧困率、子どもの貧困率、子どもがいる現役世帯の貧困率は、いずれも前回より低下しています。
②大人が一人の世帯は44.5%から44.7%へと、わずかに上昇しています。ここでいう大人が一人の世帯とは、17歳以下の子どもがいて、大人が1人だけの世帯のことで、主に母子家庭と父子家庭がこれにあたります。大人の単身世帯は含まれません。およそ2人に1人が貧困線を下回っているということは、就労支援や手当だけでは届いていない層があることを示しています。
OECDの貧困率の平均と我が国の貧困率の比較
相対的貧困率はOECDが算定した計算式に基づいて算出されるため、国際比較が可能です。
日本の子どもの貧困率は、これまでOECD加盟国の中でも高い水準にあると指摘されてきました。近年は改善傾向にありますが、現在でも日本の相対的貧困率はOECD加盟国の平均を上回っています。2018年の数値では日本が15.7%、加盟国の平均が11.7%です。
子どもの貧困に対応する法律
これらの現状を受け、2013(平成25)年に子どもの貧困対策の推進に関する法律が制定されました。2024(令和6)年の改正で、こどもの貧困の解消に向けた対策の推進に関する法律に名称が変わっています。
また、生活困窮者自立支援法には子どもの学習・生活支援事業が置かれ、貧困の連鎖を断つための事業が導入されています。
→「生活困窮者自立支援法」を簡単に説明すると?概要を理解して試験に備えましょう
過去問と演習問題
第36回 問題24(現:原理と政策)
日本の貧困に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 日本の2010年代における「貧困率」は,経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均を大きく下回っている。
2 「2019年国民生活基礎調査の概況」(厚生労働省)によれば,子どもがいる現役世帯の世帯員の「貧困率」は,「大人が二人以上」の世帯員よりも「大人が一人」の世帯員の方が高い。
3 「2019年国民生活基礎調査の概況」(厚生労働省)によれば,子どもの「貧困率」は10%を下回っている。
4 「平成29年版厚生労働白書」によれば,高齢者の「貧困率」は,子どもの「貧困率」に比べて低い。
5 2018年(平成30年)の時点で,生活保護世帯に属する子どもの大学進学率は60%を超えている。
(注) ここでいう「貧困率」とは,等価可処分所得が中央値の半分に満たない世帯員の割合(相対的貧困率)を指す。
まとめて解説
1 →× 日本の相対的貧困率はOECD加盟国の平均を上回っており、これは現在も変わりません。
2 →○ 出題当時の2019年調査では、大人が一人の世帯員が48.1%、大人が二人以上の世帯員が10.7%でした。今なら44.7%と6.7%です。差はむしろ広がっています。
3 →× 出題当時の子どもの貧困率は13.5%でした。今は11.0%で、いずれも10%を上回っています。
4 →× 当時の白書では、高齢者の貧困率のほうが子どもの貧困率より高いとされています。
5 →× 生活保護世帯の子どもの大学等進学率は、出題当時で35.3%でした。全体の73.0%と比べて半分以下です。
この設問は2019年調査の数値で作られていますが、現在の数値と対応させて解説しています。
演習問題
日本の貧困に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 日本の相対的貧困率は,経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均を大きく下回っている。
2 2025年国民生活基礎調査によれば,相対的貧困率は前回調査より上昇した。
3 2025年国民生活基礎調査によれば,子どもの貧困率は20%を上回っている。
4 相対的貧困率は,世帯の手取り収入をそのまま用いて算出する。
5 貧困線は,等価可処分所得の中央値の半分の額である。
(注) ここでいう「貧困率」とは,等価可処分所得が中央値の半分に満たない世帯員の割合(相対的貧困率)を指す。
まとめて解説
1 →× 日本の相対的貧困率はOECD加盟国の平均を上回っています。2018年の数値では日本が15.7%、加盟国の平均が11.7%です。
2 →× 相対的貧困率は15.4%から15.0%へ低下しています。上昇しているのは大人が一人の世帯で、44.5%から44.7%になっています。
3 →× 子どもの貧困率は11.0%です。
4 →× 世帯の手取り収入を世帯人員に応じて1人あたりに調整した等価可処分所得を用います。
5 →○ 2024年の所得では、中央値277万円に対して貧困線は138万円です。
第37回 問題16(社会学と社会システム)
次の記述のうち,2022(令和4)年の国民生活基礎調査の結果(「2022(令和4)年国民生活基礎調査の概況」(厚生労働省))についての説明として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 1世帯当たり平均所得金額は300万円を下回っている。
2 現在の暮らしの状況が「大変苦しい」「やや苦しい」とした世帯は,50%を超えている。
3 相対的貧困率は20%を超えた。
4 子ども(17歳以下)の相対的貧困率は25%を超えた。
5 公的年金・恩給を受給している高齢者世帯の中で「公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%の世帯」は,90%を超えている。
まとめて解説
1 →× 出題当時の2021年の1世帯当たり平均所得金額は545万7千円でした。
2 →○ 「大変苦しい」と「やや苦しい」を合わせた「苦しい」は51.3%でした。
3 →× 出題当時は15.4%、今は15.0%です。いずれも20%には届きません。
4 →× 出題当時は11.5%、今は11.0%です。いずれも25%には届きません。
5 →× 公的年金・恩給が総所得の100%を占める世帯は44.0%でした。
相対的貧困率は調査開始以降12%台から16%台の間で動いており、20%を超えたことはありません。子どもの貧困率も10%台です。
第34回 問題26(現:原理と政策)
イギリスにおける貧困を問う設問です。相対的貧困率に関係する選択肢を抜粋します。
4 タウンゼント(Townsend, P.)は,等価可処分所得の中央値の50%を下回る所得しか得ていない者を相対的剥奪の状態にある者とし,イギリスに多数存在すると指摘した。
解説
→× 等価可処分所得の中央値の50%を下回る状態は、相対的貧困率の考え方です。タウンゼントの相対的剥奪は、所得の額そのものではなく、その社会で当たり前とされている生活様式や活動から締め出されている状態を指します。周りの子が持っているものを持てない、行事に参加できないといった形で表れるものです。
相対的貧困率と相対的剥奪は、どちらもその社会の標準と比べるという発想は共通しています。違いは、相対的貧困率が所得で線を引くのに対し、相対的剥奪は生活の中身で捉える点です。
絶対的貧困・相対的貧困・相対的剥奪の違いが曖昧な方はこちらをご覧ください
→絶対的貧困と相対的貧困|SDGsの極度の貧困は国際貧困線
→相対的貧困と相対的剥奪の違い|所得で測るか、生活様式で測るか


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