訴訟の類型(社会福祉士・精神保健福祉士の国家試験対策として)

権利擁護と成年後見制度

第28回に出題された訴訟の類型

第28回に「生活保護の申請をしたが、不支給決定なされた。審査請求をしたが棄却されたために訴訟を提起することになった。次のどの訴訟類型が適切か選びなさい」という問題が出題されました。権利擁護の問題です。

正解は「取消訴訟」です。この訴訟、朝日訴訟と同じパターンであることに気が付かれましたか?朝日訴訟は「不支給決定」に対してではなく、「保護変更処分」に対して不服申し立てをしているという点で若干の違いはありますが、「処分(行政が行った決定)」を取り消してほしいという意味では類似しています。

上記の第28回の問題では、取消訴訟の選択肢以外に「当事者訴訟」「民衆訴訟」「機関訴訟」「無効等確認訴訟」がありました。

訴訟の4類型

行政事件訴訟には「抗告訴訟」「当事者訴訟」「民衆訴訟」「機関訴訟」があります(行政事件訴訟法第2条)。抗告訴訟と当事者訴訟は、国民の個人的な権利を守ることを目的とする主観訴訟であるのに対し、民衆訴訟と機関訴訟は客観的な法秩序の維持を目的として行われる客観訴訟になります。ただし、客観訴訟は法律に根拠がある場合しか提起できません。

抗告訴訟と当事者訴訟

まずは「抗告訴訟」と「当事者訴訟」の違いについてです。

私が行政法を勉強し始めたばかりの頃、行政法の先生が次のような説明をしてくれました(かなり簡素化して書くのでやや正確ではありません)。「抗告訴訟は、権力に抵抗するための訴訟だから、「抗」という漢字が使われている。行政訴訟法によって、行政より立場が弱い(弱くなりやすい)国民が、行政の決定に不服がある時に堂々と争えるように用意されている制度」。そのため、訴えの内容は行政が国民の権利義務を一方的に形成してしまうような行為が対象になります。「そういう決定は不当だと思うので取り消してくれ」とか「補助金の制度があるのだから、補助金を出してくれ」と、不満をもっている国民が行政に対して訴えをおこすのが抗告訴訟のイメージだと思ってください。

一方で、当事者訴訟は、そういう公権力の行使が対象ではありません。「当事者同士」の争いということは、行政と国民は対等な立場で争います(土地収用に関する収容委員会の裁決というのが公務員試験等ではよく出ますが、社会福祉士に関係があるとはあまり思えないので説明は割愛します)。少なくとも、生活保護の決定や介護保険等の決定のようなものでないことは理解していただけるのではないかと思います。

民衆訴訟と機関訴訟

民衆訴訟とは「国や地方公共団体が機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、選挙人たる資格その他の自己の法律上の利益にかかわらない資格」で提起するものです。また、機関訴訟とは「国と公共団体の機関相互における権限の存否又はその行使に関する紛争についての訴訟」です。よって、この2つの訴訟は、要介護認定に不服があるとか、生活保護に関する決定に不服があるという時に行われるような訴訟ではありません。

まとめ

過去問を見ていると、訴訟の類型はさほど出題傾向が高いわけではありませんが、一度、整理しておくと安心ですね。気になる方は第28回問題77を確認して下さい。

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