生活困窮者自立支援制度は平成27年4月にはじまった制度です。法律ができてからコンスタントに出題されていますが、近年特に出題傾向が高い法律です。
生活困窮者自立支援法は平成25年12月に制定され、平成27年4月に施行されました。生活保護に至る前の段階で、経済的困窮に加えて社会的孤立などの課題を抱える人を包括的・早期に支援する「第2のセーフティネット」として作られました。令和6年の改正(令和7年4月施行)で対象者や事業の中身が広がっているので、あわせて確認しておきましょう。
法律の目的と生活困窮者の定義
生活困窮者自立相談支援事業の実施、生活困窮者住居確保給付金の支給その他の生活困窮者に対する自立の支援に関する措置を講ずることにより、生活困窮者の自立の促進を図ることを目的としています(第1条)。
「生活困窮者」とは、就労の状況、心身の状況、地域社会との関係性その他の事情により、現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある者と定義されています。
事業内容と実施主体
①生活困窮者自立相談支援事業(必須事業)
対象者:生活困窮者 実施主体:福祉事務所設置自治体(委託可)
生活困窮者からの相談を受け止め、アセスメントを行ったうえで自立に向けた支援計画(プラン)を作成し、その計画に基づく支援が包括的に行われるよう関係機関と連絡調整を行います。令和6年改正により、住まいに関する相談支援も行うことが明確化されました。
②生活困窮者住居確保給付金(必須事業)
対象者:生活困窮者 実施主体:福祉事務所設置自治体
離職等により住居を失った、または失うおそれのある生活困窮者に対して、一定期間、家賃相当額を支給する事業です。令和6年改正により、収入減少等で住居確保が困難になった人に対する転居費用の支援も対象に加わりました。
③生活困窮者就労準備支援事業(努力義務)
対象者:生活困窮者、特定被保護者 実施主体:福祉事務所設置自治体(委託可)
すぐに一般就労することが難しい人(長期離職者、ひきこもり、心身に課題がある人など)に対し、日常生活自立、社会生活自立の段階から有期で訓練を行う事業です。令和6年改正により、一定の要件を満たす生活保護受給者(特定被保護者)も対象にできるようになりました。
④生活困窮者家計改善支援事業(努力義務)
対象者:生活困窮者、特定被保護者 実施主体:福祉事務所設置自治体(委託可)
家計の状況を把握し、家計の改善に向けた意欲を高める支援や、必要な資金の貸付けのあっせんなどを行う事業です。平成30年改正で「家計相談支援事業」から「家計改善支援事業」に名称が変わりました。令和6年改正では国庫補助率が原則2分の1から3分の2に引き上げられ、対象にも特定被保護者が加わっています。
⑤生活困窮者居住支援事業(努力義務)
対象者:生活困窮者 特定被保護者(事業の一部のみ)実施主体:福祉事務所設置自治体(委託可)
もとは「生活困窮者一時生活支援事業」という名称で、住居を持たない生活困窮者への一定期間の宿泊場所・食事の提供が中心でした。令和6年改正で、地域で安定的に居住を継続していくための支援も両輪として位置づけられたことで事業の範囲が広がり、名称も「居住支援事業」に改められています。新設ではなく、既存の事業が拡張・改称されたものです。
⑥子どもの学習・生活支援事業(任意事業)
対象者:生活困窮世帯の子ども 実施主体:福祉事務所設置自治体(委託可)
生活困窮世帯の子どもに対する学習支援に加え、生活習慣や育成環境の改善に関する助言、進路選択に関する情報提供なども行います。任意事業なので、すべての自治体に実施の責務があるわけではありません。
就労訓練事業(中間的就労)
すぐに一般就労が難しい人が、認定を受けた事業者のもとで就労の場を提供してもらいながら段階的に一般就労を目指す事業です。就労の体験を中心とする非雇用型と、雇用契約を結んだうえで支援を受ける雇用型があります。
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過去問で確認しましょう
第35回問67
生活困窮者自立支援法に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 生活困窮者自立相談支援事業は、委託することができないとされている。
2 生活困窮者自立相談支援事業と生活困窮者家計改善支援事業は、必須事業である。
3 子どもの学習・生活支援事業は、全ての都道府県、市町村に実施の責務がある。
4 生活困窮者一時生活支援事業は、生活困窮者に対し、生活に必要な資金の貸付けのあっせんを行うものである。 5 生活困窮者就労準備支援事業は、雇用による就業が著しく困難な生活困窮者に対し、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練を行うものである。
→× 1 自立相談支援事業は委託することができる。
→× 2 必須事業は自立相談支援事業と住居確保給付金の2つで、家計改善支援事業は任意事業。
→× 3 子どもの学習・生活支援事業は任意事業であり、実施の責務まではない。
→× 4 資金の貸付けのあっせんは家計改善支援事業の内容。一時生活支援事業(現:居住支援事業)は宿泊場所や食事の提供が内容。
→○ 5
第37回問99
生活困窮者自立支援法に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 生活困窮者自立支援法の改正(2018年)により、任意事業に健康管理支援事業が追加された。
2 住居確保給付金の支給審査や支給決定及び支給の業務は、福祉事務所設置自治体が行う。
3 生活困窮者自立支援法では、相談支援とともに飲食物費や光熱水費について金銭給付を行うことを通じて自立を図ることを目的としている。
4 一時生活支援事業は、低所得世帯であって世帯内の高齢者や子どものケアを行っている家族が一時的に休息をとれるようにサポートする事業である。
5 生活困窮者自立支援法は、日本の永住者資格を有する外国籍の人を対象外としている。
→× 1 健康管理支援事業という事業はこの法律にはない。
→○ 2 住居確保給付金の支給業務は福祉事務所設置自治体が行う。
→× 3 金銭給付が中心ではなく、包括的な相談支援が中心。
→× 4 これはレスパイトケアの説明。一時生活支援事業(現:居住支援事業)は住居のない人への宿泊場所提供が内容。
→× 5 国籍要件は設けられていない
第36回問68(事例)
Eさん(50歳)は実家で両親と3人暮らしで、5年前に退職してから定職に就かず、ひきこもり状態にある。自立相談支援機関のD相談支援員が提案する支援内容として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 社会福祉協議会での被保護者就労支援事業の利用
2 公共職業安定所(ハローワーク)での生活困窮者就労準備支援事業の利用
3 認定事業者での生活困窮者就労訓練の利用
4 地域若者サポートステーションでの「求職者支援制度」の利用
5 生活保護法に基づく授産施設の利用
→× 1 被保護者就労支援事業は生活保護受給者向けの事業で、Eさんは受給者ではない。
→× 2 就労準備支援事業はハローワークではなく、福祉事務所設置自治体が実施する事業。
→○ 3 いきなり一般就労が難しい人が、認定事業者のもとで段階的に一般就労を目指す就労訓練事業の利用が最も適切。
→× 4 求職者支援制度は雇用保険を受給できない人向けの職業訓練制度である。また、地域若者サポートステーションは49歳までしか利用できない。
→× 5 授産施設は保護施設であり、被保護者が対象である
第38回問99
2024年(令和6年)の生活困窮者自立支援法の改正内容に関する次の記述のうち、正しいものを2つ選びなさい。
1 生活困窮者自立相談支援事業の事業費負担について、国と都道府県で折半することとした。
2 生活困窮者自立相談支援事業において、居住に関する相談が加えられた。
3 同法に基づく新しい事業として進学・就職準備給付金事業を創設した。
4 「生活困窮者一時生活支援事業」が「生活困窮者居住支援事業」に改められた。
5 市町村は、地域の関係機関により協議する支援会議を設置しなければならないこととした。
→× 1 事業費負担の割合は国3/4、都道府県等1/4である。
→○ 2 自立相談支援事業に住まいに関する相談支援が明確化された。
→× 3 進学準備給付金は生活保護制度上の給付であり、この法律の事業ではない。
→○ 4 本文で解説した改称そのもの。
→×支援会議の設置は努力義務です(令和6年改正~)詳細はこちらをご覧ください。

第38回48(地域福祉)
生活困窮者自立支援法に関する次の記述のうち、正しいものを2つ選びなさい。
1 生活困窮者に対する自立の支援は、生活困窮者の資産及び収入の状況、健康状態、地域社会からの孤立の状況に応じて、包括的かつ早期に行わなければならないとしている。
2 生活困窮者家計改善支援事業は、被保護者を対象とすることはできないとしている。
3 福祉事務所設置自治体は、居住支援法人が行う業務や関連施策との連携を図るよう努めるものとしている。
4 福祉事務所設置自治体は、生活困窮者就労準備支援事業を実施しなければならないとしている。
5 福祉事務所設置自治体は、支援会議の開催、地域住民相互の交流を行う拠点との連携や訪問等により、生活困窮者の状況を把握するよう努めるものとしている。
→× 1 就労の状況、心身の状況、地域社会との関係性その他の事情により、現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある者であり「資産や収入の状況」は含まれない。
→× 2 特定被保護者は家計改善支援事業の対象にできる(令和6年改正)。
→○ 3 令和6年改正で追加された努力義務。
→× 4 就労準備支援事業は任意事業であり、実施の義務まではない。
→〇支援会議の詳細はこちらをご覧ください。

*********以下は2019年の記事になります
パンフレットを確認しましょう
厚生労働省が作っているパンフレットが大変参考になります。
表紙には
「働きたくても働けない、住むところがないなど、まずはお困りごとをお聞かせください」
「地域の相談窓口が一緒に考え、解決のお手伝いをします」
「相談無料」
という内容が、とても分かりやすく書かれています。
具体的には「将来が不安」「社会に出るのが怖い」「家賃が払えない」「病気で働けない」方を対象にしていることも、優しいタッチの絵で伝わるように表現されています。
具体的な事業内容
まず必須事業として行われているのが、こちらの2事業です。

その他にも次のような事業があります


このほか、「一時生活支援事業」等もあります。これはネットカフェ等の不安定な住居形態にある方に、一定期間宿泊場所や衣食を提供するものです。あわせて就労支援等の自立支援も行われています。
これらの事業について、厚生労働省は以下のように説明しています。
新制度においては、全国の福祉事務所設置自治体が実施主体となって、官民協働による地域の支援体制を構築し、自立相談支援事業、住居確保給付金の支給、就労準備支援事業、一時生活支援事業、家計相談支援事業、学習支援事業その他生活困窮者の自立の促進に関し包括的な事業を実施します 。
就労訓練事業とは?
生活困窮者の自立と一言でいっても、背景に様々な問題を抱えているケースもあります。
例えばハローワーク等に通い求職活動をするというのは、就労を考える時にまず思い浮かぶ方法なのかもしれませんが
そもそもそれ以前の問題として・・・
すぐに一般企業等で働くことが難しい、例えば長期離職者、ニート、ひきこもり、心身に課題があったり、精神疾患を抱える方、生活保護受給者などは、ハローワークに行く前に、それらの問題を解決しなければなりません。その時に利用できるのが、就労訓練事業です。
これは、いきなり仕事をするのではなく、自治体から認定をうけた(生活困窮者の自立支援に協力してくれる)事業者で訓練として就労を経験し、慣れてもらったり、自信をつけてもらったりする事業です。
ただ就労を体験する非雇用型と、支援付きの就労として行う雇用型に分類されています。
企業内では様々な配慮をしながら、少しずつステップアップできるように支援していきます。また、身だしなみ、健康管理、ビジネスマナー、コミュニケーションに関する支援も行っていきます。
仕事をすることに「慣れ」「自信をもち」「就職に向けて前向きな気持ちになる」ための支援ということですね。
これをふまえて全体像を確認しましょう
まず、包括的な相談支援が行われ、それぞれの状況に応じて住宅、就労、緊急的な支援、家計再建、子どもの支援が行われていることになります。

特に、近年ではひきこもり等の問題に対応するために、まずは就労の準備を整え、次に支援をしっかりしてくれる企業で訓練を行い、そこから自治体とハローワークが共同して一体的な支援を行うというスモールステップを踏むことによって、無理なく就労に結びつくようにプランニングされているのがわかると思います。
相談支援事業は、福祉事務所は市町村の窓口のみで対応?
相談支援事業は、社会福祉協議会が中心になって行っていますが、NPO法人や社会福祉法人、株式会社等が窓口になっている地域もあります。
より間口を広げて、相談しやすい体制を作り、生活保護に至る前の段階で、包括的な支援を行うのが生活困窮者自立支援制度の目的です。
できるだけわかりやすく厚生労働省のHPをまとめたつもりですが、こちらもご参照ください。


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