障害者差別解消法とは
障害者差別解消法:2013年(平成25年)に成立し、2016年(平成28年)4月に施行
障害者権利条約との関係性
この法律は、障害者の権利に関する条約(障害者権利条約)を締結するために国内の法制度を整える一環として制定されました(第28回問題56で出題)日本は2007年(平成19年)に条約に署名し、国内法の整備を進めたうえで、2014年(平成26年)1月に批准しています。
差別の禁止
障害者基本法は、第4条で障害を理由とする差別を禁止しています。この規定を具体化し、行政機関等と事業者が何をしなければならないかを定めたのが障害者差別解消法です。障害者基本法には、2004年(平成16年)の改正時に差別の禁止が基本理念として明文化されています。
障害者基本法についての記事はこちら
→【流れで覚える歴史シリーズ】障害者福祉②|心身障害者対策基本法から障害者基本法へ
差別解消法の障害者の定義
障害者差別解消法の障害者は、第2条で、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものと定義されています。これは障害者基本法第2条の定義と同じ内容です。
社会モデル
障害者の定義の後半にある「障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態」という定め方は、障害を心身の機能だけでとらえるのではなく、社会の側にある障壁とあわせてとらえる考え方によるものです。この考え方を社会モデルといいます。第32回問題57では、この法律が障害者を医学モデルに基づいて定義しているという誤った記述が出題されました。
社会的障壁の定義
社会的障壁は、第2条で、障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営むうえで障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものと定義されています。段差や狭い通路のような物理的なものだけでなく、利用の条件を定めた制度、これまでの慣行、周囲の人がもつ意識も社会的障壁に含まれます。
不当な差別的取扱いの禁止
この法律は、行政機関等だけでなく事業者にも不当な差別的取り扱いを禁止しています。
不当な差別的取扱いとは、障害を理由として、正当な理由なくサービスの提供を拒否したり、提供する場所や時間帯を制限したり、障害のない人には付けない条件を付けたりすることです。正当な理由があり、サービスの提供などが難しい場合は、行政機関等や事業者が、その理由を障害者に説明し、理解を得るよう努めます。
事業者とは:第2条で、商業その他の事業を行う者と定義されています。営利を目的とするかどうか、個人か法人かは問いません。社会福祉法人や特定非営利活動法人も事業者にあたります。
合理的配慮の提供
合理的配慮の条文を分解すると、次のようになります。
①障害者から、現に社会的障壁の除去を必要としているという意思の表明があった場合に、
②その実施に伴う負担が過重でないときは、
③社会的障壁の除去について必要かつ合理的な配慮をしなければならない
上記のことから、仮に意思の表明があった場合でも、過重な負担にある場合は、合理的配慮を絶対的に求められるものではないということです。過重な負担かどうかは、事務や事業への影響の程度、実現可能性の程度、費用や負担の程度、財政や財務の状況などから、個別の場面ごとに判断します。仮に、求められた方法が過重な負担であっても、ほかにできる方法がないかを障害者と適切に話し合うことが求められます。
合理的配慮の提供は、行政機関等には施行当初から義務が課されていました。事業者は当初は努力義務でしたが、2021年(令和3年)の改正により義務となり、この改正は2024年(令和6年)4月1日から施行されています。現在は、行政機関等と事業者の双方に義務が課されています。
環境の整備
第5条は、行政機関等と事業者に、施設の構造の改善、設備の整備、関係職員に対する研修その他の必要な環境の整備に努めることを求めています。努力義務です。
合理的配慮は、目の前にいる特定の障害者に対して、その場面に応じて行う個別の対応です。これに対して環境の整備は、不特定多数の障害者を対象として、あらかじめ行っておく対応です。事前的改善措置といいます。
基本方針・対応要領・対応指針等
基本方針(政府が定める)
基本方針は、第6条により、政府が定めなければならないとされています。障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策を総合的かつ一体的に実施するためのもので、閣議決定によって定められます。
対応指針(主務大臣が事業所向けに定める)
対応指針は、第11条により、主務大臣が、事業者向けに定めるものです。事業者が適切に対応するために必要な指針で、事業の分野ごとに作成されています。
対応要領(国・独立行政法人・地方公共団体等が職員向けに策定)
対応要領は、行政機関等が、その職員が適切に対応するために定めるものです。第9条により、国の行政機関の長と独立行政法人等は定めなければならないとされています。第10条により、地方公共団体の機関と地方独立行政法人は定めるよう努めるとされています。
障害者差別解消支援地域協議会
国と地方公共団体の機関が、その地域における障害を理由とする差別に関する相談や、差別解消の取組を効果的に進めるためのネットワークとして、障害者差別解消支援地域協議会を組織することができると定めています。
協議会はあらゆる法律に規定されています。詳細についてはこちらをご参照ください。
→要保護児童対策地域協議会等「協議会」5つを整理|設置義務と調整機関
雇用の分野は障害者雇用促進法による
第13条は、事業主が労働者に対して行う障害を理由とする差別を解消するための措置については、障害者雇用促進法の定めるところによるとしています。雇用の分野は障害者差別解消法の対象から外れ、障害者雇用促進法が適用されます。第37回「権利擁護を支える法制度」問題39で出題。
障害者雇用促進法についての記事はこちら
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第37回 障害者福祉 問題55
「障害者差別解消法」に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 この法律が施行される前から、障害者基本法に「差別の禁止」の規定があった。
2 民間事業者の合理的配慮の提供は、努力義務である。
3 この法律に基づき、市町村障害者虐待防止センターが設けられている。
4 障害者差別をした事業者には、この法律に基づき科料が科される。
5 この法律に基づく障害者の定義は、障害者基本法に規定されている障害者の定義より狭い。
(注)「障害者差別解消法」とは、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」のことである。
解説
1 ○ 障害者基本法には、2004年(平成16年)の改正で差別の禁止が基本理念として明文化されています。障害者差別解消法の施行は2016年(平成28年)4月です。
2 × 2021年(令和3年)の改正により義務となり、2024年(令和6年)4月1日から施行されています。
3 × 市町村障害者虐待防止センターは、障害者虐待防止法に規定されています。
4 × 科料は科されません。この法律の罰則は、報告をせず、または虚偽の報告をした者に対する20万円以下の過料です。
5 × 障害者基本法の定義と同じ内容です。
正答 1
第37回 権利擁護を支える法制度 問題39
「障害者差別解消法」に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 都道府県知事は、障害を理由とする差別の解消に関する施策の総合的かつ一体的な実施のため、基本方針を定めなければならない。
2 市町村長は、障害を理由とする差別の禁止に関して、事業者が適切に対応するために必要な指針を定めなければならない。
3 事業者は、障害を理由とする差別の禁止に関する職員対応要領を定める義務がある。
4 事業者は、障害者から社会的障壁の除去につき意思の表明があり、過重な負担でない場合、社会的障壁の除去について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。
5 事業主が労働者に対して行う障害を理由とする差別の解消のための措置についても「障害者差別解消法」の定めるところにより実施される。
(注)「障害者差別解消法」とは、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」のことである。
解説
1 × 基本方針を定めるのは政府です。閣議決定によって定められます。
2 × 事業者向けの対応指針を定めるのは主務大臣です。
3 × 職員対応要領を定めるのは行政機関等です。国の行政機関の長と独立行政法人等は義務、地方公共団体の機関と地方独立行政法人は努力義務です。事業者が対応要領を定めるという規定はありません。
4 ○ 第8条第2項のとおりです。
5 × 雇用の分野については、第13条により障害者雇用促進法の定めるところによります。
正答 4
第33回 障害者に対する支援と障害者自立支援制度 問題57
「障害者差別解消法」に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 国際障害者年(1981年(昭和56年))に向けて、国内法の整備の一環として制定された。
2 「不当な差別的取扱いの禁止」について、国・地方公共団体等には義務が、民間事業者には努力義務が課されている。
3 「合理的配慮の提供」について、国・地方公共団体等と民間事業者に、共に義務が課されている。
4 障害者の定義は、障害者基本法に規定されている障害者の定義より広い。
5 国や地方公共団体の関係機関は、地域における障害を理由とする差別に関する相談や差別解消の取組のネットワークとして、障害者差別解消支援地域協議会を設置できる。
(注)「障害者差別解消法」とは、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」のことである。
解説
1 × 障害者の権利に関する条約を締結するための国内法整備の一環として制定されました。国際障害者年ではありません。
2 × 不当な差別的取扱いの禁止は、制定当初から国・地方公共団体等と民間事業者の双方に義務が課されています。
3 出題当時は× 出題当時、民間事業者の合理的配慮の提供は努力義務でした。2021年(令和3年)の改正により義務となり、2024年(令和6年)4月1日から施行されていますので、現在は正しい記述です。
4 × 障害者基本法の定義と同じ内容です。
5 ○ 第17条のとおりです。設置は義務ではありません。
正答 5(出題当時)
第28回 障害者に対する支援と障害者自立支援制度 問題56
「障害者差別解消法」に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 障害者基本法には、障害者差別の禁止についての基本的理念が定められていなかったため、この法律が制定された。
2 人種を理由とする差別の禁止も包含した規定とされている。
3 障害者の権利に関する条約を締結するための国内法制度の整備の一環として制定された。
4 差別の解消の推進に関する政府の基本方針は、いまだ策定されていない。
5 差別を解消するための支援措置として、新たに専門の紛争解決機関を設けることとされている。
解説
1 × 障害者基本法には、2004年(平成16年)の改正で差別の禁止が基本理念として明文化されていました。
2 × 障害を理由とする差別を対象とする法律です。人種を理由とする差別の禁止は規定されていません。
3 ○ 2007年(平成19年)の署名から2014年(平成26年)の批准までの間に、国内法の整備の一環として制定されました。
4 × 基本方針は2015年(平成27年)2月に閣議決定されています。
5 × 新たな専門機関は設けず、既存の機関を活用してその充実を図るという考え方がとられています。
正答 3


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