第38回の「原理と政策」をみて、「孤独孤立対策推進法」を検索した結果、ここどり着いた方、多いんじゃないでしょうか。
必ずではないですが、一度出題されると連続で出題されることも多いです。今回出題されていない視点も簡単に押さえておきましょう。
立法の背景
条文(第1条)には、この法律の背景について「社会の変化により個人と社会及び他者との関わりが希薄になる中で」と表現しています。単身世帯(単独世帯)の増加や高齢化、地域のつながりの弱まり等が背景となり、制定された法律です。
ここが必須チェック|「孤独・孤立の状態」の定義
新しい法律などが出題されるとまず確認しないといけないのは「定義」です。
例えば、「生活困窮者自立支援法」を勉強するのであれば、まずは「生活困窮者」の定義の確認しなければなりません。実際の定義は「就労の状況、心身の状況、地域社会との関係性その他の事情により、現に経済的に困窮し、最低限度の生活を維持することができなくなるおそれのある者をいう」となっています。
孤独・孤立対策推進法では、第1条(目的)の中で、孤独・孤立の状態を「日常生活または社会生活において、孤独を覚えることにより、または社会から孤立していることにより、心身に有害な影響を受けている状態」と定義しています。
キーワードは、最後の「心身に有害な影響を受けている状態」です。ただ「ひとりでいる」「単身世帯である」というだけでは、この法律のいう孤独・孤立の状態には当たりません。
この定義の考え方は生活困窮者自立支援法と似ていますよね。ただ「経済的に困窮している人」ではなく「就労の状況」「心身の状況」「地域社会との関係性」にまで言及しています。
(参考までに。国会答弁では、孤独=主観的な概念〈独りぼっちと感じる精神的な状態〉、孤立=客観的な概念〈社会とのつながりや助けが少ない状態〉という整理が示されていますが、これは「考え方」の説明であって、条文の定義ではありません)
いつできて、いつから始まった?
成立したのは2023年(令和5年)5月31日。公布が同年6月7日。そして施行が2024年(令和6年)4月1日です。
「孤独・孤立」が、個人の心の問題ではなく社会全体で取り組むべき課題だと位置づけられたわけです。
実はその前段階として、2021年に、世界でも例の少ない「孤独・孤立対策担当大臣」が置かれ、内閣官房に担当室がつくられていました。その積み重ねの上に、いよいよ根拠となる法律として生まれたのが、この孤独・孤立対策推進法です。ぽっと出の法律ではなく、数年がかりの流れの到達点なんですね。
何を決めた法律なの?
大きくは、①基本理念、②国や地方公共団体の責務、③推進体制、この3本柱を定めた法律です。
基本理念として押さえておきたいのは、次の考え方です。
①孤独・孤立は人生のどの段階でも、誰にでも起こりうるものであり、社会全体の課題であること。当事者やその家族の立場に立って、状況に応じた支援が継続的に行われること。
②本人の意向に沿って、社会や他者とのつながりを取り戻し、孤独・孤立の状態から脱却して日常生活・社会生活を営めるようにすること
「孤立させないように支援者が動く」のではなく、あくまで本人の意向に沿ってつながりを取り戻す・・・ここ、地味ですが大事な視点です。支援する側の意向でつながりを強制するタイプのものではありません。
重要ポイント①|推進本部は「内閣府」、本部長は「内閣総理大臣」
この法律を根拠に設置されたのが、内閣府の孤独・孤立対策推進本部です。
本部長は内閣総理大臣で、すべての国務大臣(全閣僚)が構成員です。国を挙げての司令塔、というわけですね。
こういう時には管轄する省庁を意識!主に「厚生労働省」か「内閣府」が管轄しているので、整理しましょう!
多くの法律に「推進本部」「推進会議」がおかれています。ここでいう推進会議は、個別事案などを検討する「支援会議」とは別物です。国におかれる本部として機能していますので自治体レベルで設置されている会議と区別しましょう。
重要ポイント②|重点計画の策定
そして、この推進本部の大きな役割が、「孤独・孤立対策重点計画」の作成で、義務化されています。
*だいたい国や政府が策定する〇〇計画はどの法律でも義務になっていることがほとんどです。一方、地方公共団体は法律が新しい間は義務化されておらず(任意)、ここから努力義務→義務となっていいくことが多いです。
重要ポイント③|地域協議会の設置は「努力義務」
市町村など地方公共団体には、孤独・孤立対策地域協議会という仕組みが用意されています。関係する機関や団体が集まって、情報交換や支援内容の協議を行う場です。
この協議会、地方公共団体が「置くよう努めるものとする」――つまり努力義務です。「設置しなければならない(義務)」ではありません。
この協議会はあらゆる法律で作られています。
障害者総合支援法八十九条の三 地方公共団体は、単独で又は共同して、障害者等への支援の体制の整備を図るため、関係機関、関係団体並びに障害者等及びその家族並びに障害者等の福祉、医療、教育又は雇用に関連する職務に従事する者その他の関係者(以下この条において「関係機関等」という。)により構成される協議会(以下この条において単に「協議会」という。)を置くように努めなければならない。
発達障害者支援法第十九条の二 都道府県は、発達障害者の支援の体制の整備を図るため、発達障害者及びその家族、学識経験者その他の関係者並びに医療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を行う関係機関及び民間団体並びにこれに従事する者(次項において「関係者等」という。)により構成される発達障害者支援地域協議会を置くことができる。
児童福祉法第二十五条の二地方公共団体は、単独で又は共同して、要保護児童(第三十一条第四項に規定する延長者及び第三十三条第十九項に規定する保護延長者を含む。次項及び第六項において同じ。)の適切な保護又は要支援児童若しくは特定妊婦への適切な支援を図るため、関係機関、関係団体及び児童の福祉に関連する職務に従事する者その他の関係者(以下「関係機関等」という。)により構成される要保護児童対策地域協議会(以下「協議会」という。)を置くように努めなければならない。
また今回の孤独孤立対策地域協議会は、
孤立対策調整機関を指定することができるという構造は、上記要対協に似ています。
まとめ
多くの場合国が設置する点を覚えておくと「協議会」「支援会議」「推進会議」という単語が少しすっきり整理しやすいなると思います。
| 正式名称 | 孤独・孤立対策推進法(令和5年法律第45号) |
| 成立・公布 | 2023年(令和5年)5月31日成立/6月7日公布 |
| 施行 | 2024年(令和6年)4月1日 |
| 「孤独・孤立の状態」の定義 | 孤独を覚える、または社会から孤立していることにより 心身に有害な影響を受けている状態。 |
| 推進本部 | 内閣府に設置。本部長=内閣総理大臣、構成員=全閣僚 |
| 重点計画の作成 | 推進本部の役割。作成は義務 |
| 地域協議会 | 地方公共団体が「置くよう努める」=努力義務 |
| 基本的な考え方 | 社会全体の課題/当事者の立場に立つ/本人の意向に沿って脱却を目指す |
最後に過去問にチャレンジ!
孤独・孤立の状態が,青年期と高齢期に生じやすく,その状況も深刻であることに鑑み,若者と高齢者の孤独・孤立対策を重点的に講じる。
→×孤独・孤立は人生のどの段階でも、誰にでも起こりうるものと位置付けています
孤独・孤立の状態やその要因が多様であることに鑑み,孤独・孤立の状態にある者や,その家族等にも状況に応じた支援を行う。
→〇当事者やその家族の立場に立って、状況に応じた支援が継続的に行われることと条文に記載されています
孤独・孤立対策に関する施策に関し,国と地方公共団体との調整を目的として,孤独・孤立対策地域協議会を設置する
→×対策を推進するために必要な連携・協働を図ることです。国と自治体の調整は主たる目的ではありません。また設置義務ではなく努力義務である点も要注意です。
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