特定技能には1号と2号がありますが
2号になれば在留期間の上限がなくなり、家族を呼べるようになります。
外国人本人からしてみると、1号と2号の差はとんでもなく大きいということです。
ところが、介護分野には特定技能2号がありません。
特定技能16分野のうち、介護だけが2号の対象外なのです。
なぜ介護だけないのか
理由は、はっきりしています。
介護には、すでに在留資格の中に「介護」があるからです。
介護福祉士の国家資格を取れば、在留期間の上限はなくなり、家族も呼べ、永住許可の申請もできます。
つまり、特定技能2号とまったく同じ効果が得られるわけです。
だから、わざわざ2号を作る必要がない。国はそう説明しています。
理屈としては、その通りです。
でも、扉の高さが違う
問題は、そこに至るルートの厳しさです。
他の分野でも特定技能2号になるには、技能評価試験に合格し、実務経験を積まなければなりませんが
介護分野で在留資格「介護」に移るには、技能評価と実務経験だけでなく
介護福祉士の国家試験に合格しなければなりません。
母国語でない日本語で、13科目。
日本人の受験生でも苦労する試験です。
しかも、受験するには実務経験3年に加えて、実務者研修の修了が必要です。
研修は無資格なら6か月かかります。
そして、これを特定技能1号の在留期間である通算5年以内にやり遂げなければなりません。
日本語を学びながら、慣れない現場で働きながら、実務者研修に通い、国家試験の勉強をする・・・5年で。
合格率が語るもの
EPAで来日した介護福祉士候補者の、第36回介護福祉士国家試験の合格率は43.8%でした。
同じ試験の全受験者の合格率は82.8%ですので、その難しさがわかります。
EPA(Economic Partnership Agreement)は、経済連携協定のことです。
国と国とが結ぶ協定で、貿易の自由化に加えて、投資、人の移動、知的財産の保護など、幅広い経済関係の強化を目的とするものです。FTA(自由貿易協定)より対象範囲が広い、と説明されること
が多いです。
日本は、インドネシア(2008年)、フィリピン(2009年)、ベトナム(2014年)とのEPAに基づいて、外国人看護師・介護福祉士候補者の受け入れを行っています。
EPAの候補者は、母国で看護学校や大学を出て、政府の認定を受けた人たちですから
決して能力が低いわけではありません。
それでも、この差が出るということは、言葉の壁が、そのまま結果に出ているということです。
母国語以外で会話をすることさえ難しいにもかかわらず
法律や制度の名前を外国語で勉強することの難しさは容易に想像できます。
国も動き出している
この状況を、国も問題として認識しています。
2025年度から、介護福祉士国家試験に「パート合格」が導入されることになりました。13科目を3分野に分割し、一度で全部に受からなくても、次回は落とした分野だけを受け直すことが可能です。
導入の背景には、「特定技能の通算5年という期間内に、国家試験に合格することの難しさ」があった、と説明されています。
つまり、制度の側が、無理があると認めたということです。
社会福祉の分野に、これが何をもたらすか
ここからが本題です。
厚生労働省の推計では、2040年に約57万人の介護職員が不足するとされています。
その穴を埋める存在として、外国人材への期待は高まる一方です。特定技能「介護」の受入れ見込数は、2024年度からの5年間で13万5000人に設定されました。
でも、その人たちが5年で帰ってしまうとしたら、どうなるでしょうか。
現場で3年、5年と経験を積んで、ようやく利用者の名前も癖も覚えて、チームの一員になった頃に、期限が来る。国家試験に受からなければ、帰るしかありません。
そして新しい人を一から育てなおす・・・その繰り返しです。
これは、外国人本人にとっての不幸であると同時に、
受け入れる側にとっても、ケアの質にとっても、大きな損失です。
介護は、人と人との関係の上に成り立つ仕事です。信頼関係を築くのに時間がかかり
その時間を積み上げた人が、制度の期限で去っていくというのは制度の趣旨に反します。
「専門職として認める」ということ
介護に特定技能2号がないのは、「介護福祉士という国家資格があるから」です。
これは、見方を変えれば、介護を専門職として位置づけているということでもあります。誰でもできる仕事ではない、国家資格に裏打ちされた専門職なのだ、と。
その理念は、間違っていないと思います。しかし、専門職として認めるという建前が、結果として人を排除する装置になっていないか・・・そこは、考えてみる価値がある問いです。
おわりに
2040年には57万人が不足する介護人材
特定技能2号がない、という一行の制度設計の背後には、介護という仕事をどう位置づけるのか、外国人材をどう迎えるのか、そして日本の介護をこれからどう支えていくのか、という問いが詰まっています。


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