2027年4月、新しい制度が始まります。
「育成就労制度」です。名前が変わるだけ、と思われるかもしれません。でも、変わるのは名前だけではありません。制度の目的そのものが、根本から変わります。
そもそも技能実習制度とは何だったのか
技能実習制度が始まったのは1993年。掲げられていた目的は「国際貢献」でした。
開発途上国の人に、日本で技術を学んでもらう。母国に帰って、その技術を役立ててもらう。日本の技術移転で、途上国の発展に貢献する。
これが建前です。
でも、実態はどうだったか。人手不足に悩む現場が、安価な労働力として受け入れる。3年、あるいは5年働いてもらって、期間が終われば帰ってもらう。技術を学ぶ、というのは名目で、実際には現場を回すための人手として機能してきた・・・そう指摘され続けてきました。
しかも、技能実習生は原則として転籍ができません。職場を変われない。どんなに労働環境が悪くても、そこで働き続けるしかない。
建前と実態のズレが生んだもの
この「建前と実態のズレ」が、深刻な問題を生みました。
厚生労働省の調査では、監督指導を受けた実習実施者の7割以上に労働基準関係法令違反が見つかっています。機械の安全基準を満たしていない。割増賃金が払われていない。健康診断の結果を医師に確認していない。
技能実習生本人からの申告で最も多いのは、賃金や割増賃金の不払いです。
「実習」という名前がついていても、彼らは労働者です。労働基準法も、労働安全衛生法も、労災保険法も、日本人とまったく同じように適用されます。それなのに、守られていなかった。
そして、辞めて帰ることもできない。多くの実習生が、母国の送出機関に高額な手数料を払っており、その原資は借金だからです。
育成就労制度は何を変えるのか
こうした批判を受けて創設されたのが、育成就労制度です。2024年6月の法改正で決まり、2027年4月1日から施行されます。
変わるのは、大きく三つです。
①目的が変わる
「国際貢献」から「国内の人手不足分野における人材育成と確保」へ。
建前を取り払って、日本のために人材を確保するのだ、と正面から認めた。これが最大の変更点です。
②期間が変わる
技能実習は1号・2号・3号と段階を踏んで、最長5年でした。
育成就労は、原則3年。段階の刻みはありません。この3年間で、特定技能1号の水準に育てる。それが制度の目的として明記されています。
③転籍ができるようになる
これが大きい。
一定の要件(就労期間、技能、日本語能力、転籍先の適正性など)を満たせば、本人の意向で職場を変われるようになります。
「使っておしまい」から「育てて定着させる」へ
三つの変更点を並べると、制度の思想がはっきり見えてきます。
技能実習は「実習」でした。だから、育つかどうかは本人次第、という構図になりやすかった。
育成就労は「3年で特定技能1号の水準に育てる」ことを目的に掲げています。つまり、受入れ企業の側にも「育てる責任」がある、ということです。
そして転籍が認められる。育成の質が低い職場、労働環境の悪い職場からは、人材が出ていってしまう。企業は「選ばれる職場」でなければ、人材を確保できなくなる。
制度としての義務づけと、市場の原理と。その両方から、受入れ企業に育成の責任を負わせる構造になっている・・・そう読めます。
その先にある「特定技能」
育成就労を終えた後、どうなるのか。
ここで登場するのが「特定技能」です。
特定技能には1号と2号があります。1号は在留期間が通算5年まで、家族を呼ぶことはできません。ところが2号になると、在留期間の上限がなくなり、配偶者と子を日本に呼べるようになります。要件を満たせば、永住許可の申請も可能です。
つまり、外国人本人にとって、特定技能2号に到達できるかどうかが、日本で家族と暮らしていけるかどうかの分かれ目になる。
ただ、この扉はかなり狭い。特定技能全体が33万人を超えているのに対し、特定技能2号は3000人程度にとどまっています。約1%です。
2号になるには、より難易度の高い技能評価試験に合格するだけでなく、複数の従業員を指導した実務経験も求められます。本人が努力するだけでは足りません。受入れ企業が、その人に指導的な立場を与えてくれるかどうか。そこに大きく左右されるのです。
整理:三つの制度の関係
ここまでを整理しておきます。
| 技能実習 | 育成就労 | 特定技能 | |
|---|---|---|---|
| 目的 | 国際貢献 | 人材確保・育成 | 労働力の受け入れ |
| 期間 | 最長5年 | 原則3年 | 1号:通算5年/2号:上限なし |
| 転籍 | 原則不可 | 要件を満たせば可 | 可能 |
| 家族帯同 | 不可 | 不可 | 1号:不可/2号:可 |
歴史的には、技能実習(1993年)→特定技能(2019年)→育成就労(2024年創設)の順に作られました。
でも、実際に外国人が歩む道筋は違います。育成就労が技能実習の「入り口」を置き換え、その先に特定技能がある。三つが一列に並んでいるわけではありません。
移行はゆるやかに進む
なお、2027年4月から技能実習が一斉になくなるわけではありません。
2027年3月31日までに認定された技能実習計画は、そのまま継続します。経過措置が設けられているので、概ね2030年頃までは、技能実習と育成就労が併存する見込みです。
おわりに
2025年末、日本にいる外国人は412万人を超えました。総人口の3.36%です。100人にひとりではなく、30人にひとり。もう「たまに見かける」規模ではありません。
その人たちがどんな制度のもとで日本に来て、どんな条件で働いているのか。
技能実習制度は、建前と実態がずれたまま30年以上続いてきました。育成就労制度は、その反省の上に作られた制度です。うまくいくかどうかは、これから分かることですが・・・少なくとも、「使っておしまい」ではなく「育てて定着させる」という方向に、舵は切られました。
2027年4月。制度は変わります。


コメント