【頻出!すっきり整理したい単語シリーズ】社会学における「役割概念」まとめ|役割期待・役割葛藤・役割距離・役割分化・役割猶予

社会学と社会システム
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国家試験の勉強をしているとごちゃごちゃする単語、ありますよね。

今回は「役割〇〇」の整理です。この役割理論を土台にしてミードの「主我と客我」の考え方に発展しているので、整理しておきましょう。*★の数は出題頻出を表しています

【頻出!人名シリーズ⑲】ミード・ブルーマー・ゴッフマン|主我と客我・象徴的相互作用論・スティグマ
人は、他者とのやりとりの中で、自分というものを作っていく・・・ミード・ブルーマー・ゴッフマン|主我と客我・象徴的相互作用論・スティグマ

役割取得★★★

個人が、他者との相互作用を通じて、他者から期待されている役割を自分の中に取り入れていくことです。自己形成の基盤になるものです。

とにかく「他者から期待されている役割を取り入れること」なので、これは「自分の価値観からうまれる」ものではなく、他者との相互作用の中で獲得していきます。

役割期待★★★

特定の社会的役割を持つ人の行動パターンに対して、他者や集団が抱く期待のことです。当然「規範的」側面がります。「〇〇ならこうあるべき」「〇〇ならこういう時に〇〇のように行動すべき」など。ここから先の役割適応、役割形成、役割葛藤、役割距離は、すべてこの「役割期待」があってこそ成り立つ概念です。

役割適応(過度に同調してしまう現象)★

この役割期待に対して、順応しようと頑張りすぎることがあります。役割期待に応えている状態のことを、役割適応といいます。ただし、その期待に応えようとするあまり、必要以上に同調してしまうことがあります。これを「過剰同調」と呼びます。

たとえば「新入社員」という役割。世間は、新入社員に対して「若々しくて、フレッシュで、エネルギッシュに働くもの」というイメージを抱いている・・・そんなふうに、本人が思っているとします。

すると、どうなるか。

朝は誰よりも早く出社しなければ。返事は元気よくしなければ。しんどくても、疲れた顔は見せられない。「新入社員らしくない」と思われるわけにはいかない・・・。

誰かに直接そう命じられたわけではありません。上司から「もっと元気を出せ」と言われたわけでもない。それでも、自分が思い描いた「世間が期待する新入社員像」に、自分自身を一生懸命寄せていってしまう。

これが過剰同調です。

役割形成★

役割期待に単に従うだけでなく、他者との相互行為の中で、自分自身が新たな役割を作り出していくことです。役割は、一方的に与えられるだけのものではなく、やりとりの中で作り変えられていくこともある、ということですね。

たとえば講師(特に非常勤講師)は、本来「知識を教える」ことが役割です。決められた時間内で知識や経験について語り、新たな知識や価値観を提供する。そんな仕事ですから。でも実際には、「困っていること」「辛いこと」「乗り越えたいこと」の相談を受けることが多く(国家試験だけでいうと「モチベーションが続かない」「働きながらだと時間が取れない」等ですが、それ以外にも様々)、「教える」という役割を超えて、新たな役割を担うことはよくあることです。これは、学生側の期待に応じて、私の「非常勤講師」という役割そのものが作り変えられていった結果です。

もちろん、支える仕事は講師という仕事にもともと内包されているものかもしれません。それでも、学生一人ひとりとの関わりの中で、その比重や具体的な形が少しずつ変化していく・・・これもまた、役割形成のひとつのかたちだと思います。

⑤役割認知★

他者ではなく、自分自身が「自分の役割はこれだ」と認識することです。「上司」の役割をどう捉えるのか、同じ上司という立場にいても、その役割をどう捉えるかは人それぞれで、そこに個人差が生まれます。

役割演技★★

個人が、その場面にふさわしい役割を意識的に演じ遂行することです。私はいつも、これをやっています。

本来の私には私なりの「性格」「特性」があるのですが、「学生の前では講師らしくふるまう」「夫の同僚の前では良き妻であるようにふるまう」「PTAに行けば母親らしくふるまう」。色々な顔を使い分け、うまく社会生活を回しています。

・・・うまくいっていないときもありますが、回そうと努力はしています!

皆さんも、バイト先にはバイト先の顔が、大学内には大学内の顔が、友達には友達の顔が、恋愛のパートナーにはパートナーの顔が・・・そんなふうに、色々使い分けていると思います。

それが役割演技です。TPOに応じて役割を演じ分けている場面、日常にたくさんありますよね。

役割距離(ゴフマン)★★

役割期待に対して、意図的にその期待から少しずらした行動をとることをいいます。それによって、自己の自律性を確保しようとする、というのがポイントです。役割には、時に「らしさ」の押しつけが伴う、という点も意識しておきたいですね。

私が大学生だったころ、ある授業を担当していた教授がこう言っていました。「教授らしく、真面目に、堅く振る舞う場面が求められれば求められるほど、そちらの方向に染まりたくないという気持ちになってしまって、髪を伸ばしたり染めたり、ラフな格好をしたくなるんだよね」と。

確かにその教授は、当時の大学教員らしからぬカジュアルな服装で、髪は伸ばして一つに束ねたり束ねなかったり、メッシュが入っていました。念のため付け加えておくと、学会でもとても有名で、しっかりとした業績を残している方です。

教授としての役割(研究・教育)はきちんと果たしながらも、見た目で少しだけ型からズレることで、「型通りの教授」に完全には染まらない自分を保っている・・・これが役割距離です。

役割葛藤★★★

同時に課された複数の役割期待が、相互に矛盾や対立を起こし、どの役割期待に応えるべきか板挟みになる状態のことです。

同じ人でも、「父として」「夫として」「職業人として」、それぞれの立場から求められることは違います。仕事を優先すれば職業人としての期待には応えられても、夫・父としての期待からは外れてしまう。逆に家庭を優先すれば、今度は職業人としての期待から外れてしまう・・・同時に背負っている複数の役割期待が、互いに矛盾し合ってしまう状態、これが役割葛藤です。

いろいろな役割を場面ごとにうまく使い分けられているうちは役割演技ですみますが、複数の役割の要求が同時にぶつかってきて、どちらも立てられない状態になると、役割葛藤に変わる・・・そんなふうに理解しておくと、両者の違いがすっきりすると思います。

役割分化★★

役割が、社会・集団の課題に対応して、機能ごとに分けられていくことです。

総務、営業、企画、生産・・・会社の中にはさまざまな部署がありますよね。これは、組織全体の課題(会社を回すこと)に対応するために、役割がそれぞれの機能ごとに分かれていった結果です。これが役割分化です。

役割猶予(エリクソン)

青年期に、社会的責任や役割を猶予されたなかで、様々なことに取り組みながら、成人としての役割を獲得していく期間のことです。モラトリアムとも呼ばれます。

「モラトリアム」というと、なんとなく「大人になりきれない、ふらふらしている期間」というネガティブなイメージで語られることもありますよね。でも、エリクソンの言う役割猶予は、決してマイナスの意味だけではありません。

アルバイトを転々としてみる。サークルに打ち込んでみる。初めてお酒を飲んだのはサークル活動の仲間という方も多いかもしれません。そしてそのとき覚えたお酒が潤滑油となって、社会人になってから上司と仲良くなったり、同僚とより打ち解けたりする方もいると思います。

ちなみに私はお酒はいただかないので、お酒という潤滑油はありませんが、それでもみんなと楽しく食べたり飲んだりしています。

私の息子たちも、学生時代に色々な経験をし、それぞれ希望していた分野に就職しました。あのモラトリアムの時代が彼らの社会人人生の土台になっていることを感じます。

傍から見ると遠回りに見えるようなその時間も、本人にとっては必要な試行錯誤ですね。親からみると、時としてもやもや(イライラ)する時間ですけどね(笑)

役割交換

両者の役割を交換し、その役割を演じることによって、相手の立場や考えを理解したり、内省したりすることです。

大人になると、おままごとはしないので、役割の演技というのとは少し違いますが、こんな例に置き変えるとわかりやすいです。

たとえば、初めて妻が外で働きに出てみる。すると夫は、「働くというのは、こんなに理不尽なことがあるものなんだ。いつもありがとう」と気づく。逆に、妻が外出している間、初めて夫が一人で子どもの面倒をみる。すると今度は妻が、「子どもの世話を一人でこなすのは、本当に大変なことなんだ。いつもありがとう」と気づく・・・お互いに、相手がいつも担っている役割を実際にやってみて初めて、その大変さが実感としてわかる、ということはよくありますよね。これも役割交換に近い概念なのかなと感じます。

増えるほど息苦しくもなるし、減って寂しくなる時もある

こうして並べてみると、「役割」というのは、私たちが社会の中で生きていくための土台でありながら、時に私たちを縛るものでもあるんだなと感じます。

期待に応えようとする役割適応、期待からあえて外れる役割距離、複数の期待の板挟みになる役割葛藤・・・私も、講師として、一人の社会人として、日々この間を行ったり来たりしている気がします。

また、私に関していえば、子供たちが社会人になり、母親の顔はほとんど必要なくなりました。寂しいような嬉しいような・・・役割は人生のステージによっても変わるものですね。

この記事は『頻出!すっきり整理したい単語シリーズ』の一つです。

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