今日はパーソンズの主意主義的行為理論とダブルコンティンジェンシーを整理します。
どちらも「人はなぜルールを守って、社会はなぜ成り立っているのか?」という疑問から生まれた概念です。順番に見ていきましょう。
そもそもの出発点:ホッブズ問題
パーソンズが向き合ったのは、哲学者ホッブズが提起した古典的な問い、いわゆるホッブズ問題でした。
人間がみんな、自分の利益だけを追求して行動したら、社会は「万人の万人に対する闘争」、つまり奪い合いと争いだらけになってしまうはずです。でも、現実の社会を見てみると、多くの人はルールを守り、社会には秩序が保たれています。
なぜでしょうか。「警察や法律で取り締まられるから」だけでは、説明がつきません。誰も見ていない場面でも、私たちは案外ちゃんとルールを守っています。この「なぜ社会に秩序があるのか」という問いに、パーソンズは行為の理論から答えようとしました。
主意主義的行為理論とは
パーソンズの答えはこうです。人間の行為は、本能や環境といった外側の要因だけで決まるものではない。行為者自身の主体的な選択が、必ず含まれている、と。
ここでポイントになるのが、規範の内面化という考え方です。
人は成長する過程で、社会のルールや価値観を「外から押し付けられるもの」としてではなく、自分自身の内側の基準として取り込んでいきます。
「ルールだから仕方なく守る」のではなく、「ルールは守るべきだと自分で考えて、守ることを選ぶ」。
つまり、私たちがルールを守るのは、強制されているからではなく、内面化された規範に基づいて、自分の意志で選択しているからだ、というわけです。
「主意主義」という難しそうな言葉は、要するに「人間の意志を主役に置く」という意味です。人間は操り人形ではなく、自分の意志で選択する存在だ、という人間観が、この名前に込められています。
ダブルコンティンジェンシーとは
もう1つの長いカタカナ、ダブルコンティンジェンシーは、「二重の条件依存性」と訳されます。これも、身近な場面に置き換えると、意外とすんなり分かります。
たとえば、初対面の人と挨拶する場面を想像してみてください。
「先に挨拶した方がいいかな。でも、相手が返してくれなかったら気まずいな・・・」
そして相手も、まったく同じことを考えています。
「先に挨拶した方がいいかな。でも、返してもらえなかったら気まずいな・・・」
自分の出方は、相手の出方次第。でも、相手の出方も、自分の出方次第。
お互いがお互いの様子をうかがい合って、行為が宙に浮いてしまう。
この「お互いに相手に依存し合っている」状態が、
二重(二人とも)の条件依存(依存してる:コンティンジェンシー)です。
では、この宙ぶらりんの状態は、どうやって解消されるのでしょうか。
パーソンズの答えは、共通の価値観やルールが共有されていることでした。
「挨拶されたら挨拶を返すものだ」という共通のルールをお互いが内面化していれば、安心して先に挨拶できます。つまりここでも、社会に秩序があるのは共有された規範のおかげだ、という結論につながっていくわけです。
まとめると
主意主義的行為理論も、ダブルコンティンジェンシーも、パーソンズが「社会の秩序はなぜ成り立つのか」というホッブズ問題に答えるために組み立てた概念です。
人は自分の意志で行為を選択する。でもその選択の基準には、内面化された社会の規範がある。そして、お互いの出方が読めない不確実な場面でも、共通の価値観があるからこそ、私たちは安心して行為を選べる・・・。
何だか難しそうな単語ですが、中身は「誰も見ていなくても信号を守ってしまう私たち」や「挨拶のタイミングをうかがい合う私たち」の話です・・・意外と身近な話題ですね。
この記事は「頻出!合格のために必ず覚えておきたい人名シリーズ」の一つです。
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