「時事問題って、今年のニュースを追えばいいんですよね?」
受験生からよく聞かれる質問です。答えは、半分正解で、半分違います。
国家試験の時事問題は、一度出たら終わり……ではありません。数前に「時事」として登場したテーマが、形を変えて何度も出題されます。つまり、時事問題は生まれ変わりながら、出題され続けるのです。(この考え方そのものは、こちらの記事で詳しくお話ししています)

今回はその実証編です。第34回から第38回までの5年分の試験問題から、「社会福祉の原理と政策(旧:現代社会と福祉)」と「地域福祉と包括的支援体制(旧:地域福祉の理論と方法)」の2科目にわたって、時事問題として出題されたテーマを実際に拾い出してみました。
すると……何度も出題され続けているテーマが見えてきます。
結論:5年間で「生まれ変わり続けている」4つのテーマ
先に結論をお伝えします。過去5年の出題を並べたとき、繰り返し登場していたのは次の4テーマでした。
- 多文化共生・外国人支援:第36回から第38回まで、科目をまたいで毎年のように出題されています。もはや「時事」というより「定番」です。
- 重層的支援体制整備事業:第36回・第37回・第38回と3年連続。知識問題から事例問題へと、問われ方も進化しています。
- 災害福祉:第35回、第37回、第38回に登場。最新の第38回では、②の重層的支援体制整備事業と組み合わせた事例問題になりました。
- 地域共生社会から孤独・孤立対策へ(理念→法制化):第35回に「理念」として問われたテーマが、法制化を経て第38回に「法律の問題」として再登場しました。
①多文化共生は、もはや「時事」ではなく「定番」
流れを時系列で並べてみます。
第36回では「外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ」(2022年策定の政府文書)がそのまま出題され、同じ回の地域福祉では、外国人居住者の社会的孤立を扱う事例問題が出ました。第37回では多文化共生の実現に向けた施策が問われ、第38回では技能実習生に関する知識・動向を問う事例問題が登場しています。
1つの政府文書から始まったテーマが、施策の問題になり、事例問題になり……と、毎年角度を変えて出続けているのが分かります。ここまで連続すると、第39回で出ない理由を探すほうが難しいくらいです。外国人材の受入れは育成就労制度の創設など、制度そのものが動いている真っ最中でもあります。(多文化共生については、こちらの記事でまとめていますのであわせてどうぞ)

②重層的支援体制整備事業は3年連続
重層的支援体制整備事業は、第36回で制度の枠組みが問われ、第37回では「事業を所管する社会福祉士の対応事例」に、第38回では災害支援と組み合わせた事例問題になりました。
3年連続というだけでも要注意ですが、注目してほしいのは問われ方の変化です。最初は「どんな事業か知っていますか」だったのが、いまは「この事業を使って、あなたならどう動きますか」に変わっています。名称と3つの支援(包括的相談支援・参加支援・地域づくり)を暗記するだけでは解けない問題でした。
③災害福祉は複合問題へ
災害時における支援体制は、第35回で単独のテーマとして出題されました。その後、第37回でも災害時の支援が問われ、第38回では、先ほどの重層的支援体制整備事業と組み合わせた事例問題として登場します。
これも出題の「進化パターン」として興味深い点です。単独テーマとして定着したものは、次の段階として、別の頻出テーマと組み合わせて出題されます。避難行動要支援者名簿、福祉避難所、災害ボランティアセンターといった基本用語を押さえたうえで、「平時の地域づくりと災害対応はつながっている」という視点を持つことが求められています。
④理念 → 法制化 → 再出題(地域共生社会から孤独・孤立対策推進法へ)
この記事で一番お伝えしたいのが、この4つ目です。
第35回で「近年の政府による福祉改革の基調となっている地域共生社会」が問われました。この時点では、まだ「理念」の問題です。その後、社会的孤立への対策は2023年の孤独・孤立対策推進法として法制化され、2024年に施行。そして第38回で、今度は「孤独・孤立対策推進法」という法律の問題として出題されました。
「まず理念や報告書として出題され、法律になってからもう一度出題される」というのは、国家試験の傾向における定番の流れといえます。
回ごとの出題一覧は別記事にまとめています
「4つのテーマ以外も含めて、5年分の出題をすべて見たい」という方のために、第34回から第38回までの時事問題の出題テーマ一覧を別の記事にまとめてあります。この記事の分析は、すべてこの一覧が根拠です。
社会福祉士の試験で求められる2つの知識
社会福祉士に必要な知識は、「普遍的なもの」と「時代の変化にあわせて進化していくもの」の2つに分類されます。試験委員は、普遍的に必要な知識だけでなく、社会福祉の「今」を受験生に問いたいと考えています。歴史や人名などを問うのが前者なら、時事は後者にあたります。
- 単独世帯が増えたら?
- 婚姻率が下がったら?
- 貧困率が上がったら?
- 離婚が増加したら?
- 外国人が増えたら?
社会の変化に伴い、社会福祉士に求められる役割や知識もバージョンアップしなければなりません。それに合わせて新しい報告書や制度が出題され、一度出題されたテーマは、切り口を変えて何度も「生まれ変わりながら」繰り返し出題されます。
「時事対策のためにニュースを毎日チェックしましょう」……とはいっても、なかなかハードルが高いと感じる方も多いはずです。だからこそ、まずはこの記事で挙げた4つのテーマを押さえてください。
すでに出題された「また生まれ変わってくる時事」を把握することこそが、もっとも効率のよい時事対策です。

令和7年度の法改正(これから出る時事)のまとめは、試験が近づいた頃に公開予定です。


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