この記事は、社会福祉法人の計算書類シリーズの2回目です
次の順番で読むと、計算書類がすっきり整理できます。
①3つの計算書類をすっきり整理(全体像)
②貸借対照表の読み方 ←今読んでいる記事
③事業活動計算書と減価償却
④計算書類の承認プロセス|監事監査から評議員会まで
前回の記事で、社会福祉法人の3つの計算書類の「違い」を整理しました。今回はその中で一番よく出題される、貸借対照表だけを取り上げます。
簿記の教科書のような細かさは必要ありません。国家試験の選択肢を8割は理解できるようになる、そこまでの深さで見ていきましょう。ゴールは「何が、どこに、なぜ書かれるのか」がわかることです。
まず全体像:右は「どう集めたか」、左は「今どんな姿か」
復習です。貸借対照表は、会計年度末という一時点における法人の財務状況を明らかにする計算書類です。左(借方)に資産、右側(貸方)に負債と純資産を書き、左右の合計は必ず一致します。「かりかた」の「り」は左にはらう、「かしかた」の「し」は右にはらう、でしたね。
今回はもう一歩だけ進みまして、右側と左側にそれぞれ何が書いてあるのかもう少し詳しく確認します。
まず右側は、法人がお金を「どうやって集めたか」を表しています。お金を用意する方法は2つしかありません。
①借りて集めたのか(負債)
②貯めたか、返さなくていい形で用意したか(純資産)
左側は、その集めたお金が「今どんな姿になっているか」を表しています。
現金のまま持っているのか、それとも土地や建物、車などに姿を変えたのか。
同じお金を「集め方」と「使われ方」の両面から見ているのですから、左右が一致するのは当たり前です。バランスシートと呼ばれていることは前回もやりましたね。
Q「借方(左側)は資金使途を示す」
A〇左側には、資金を何に使ったのか(現金のまま? 車や土地に使った?)を記載しますから、正しい文章です。この言い回し、そのまま覚えておきたいですね。
左側(資産の部):流動と固定の分かれ目は「1年」
左側の資産の部は、さらに流動資産と固定資産に分かれます。分かれ目は、

流動か固定はおおむね「1年以内に現金化しそうかどうか」です。
現金・預金や、介護報酬などの入金待ちのお金(事業未収金)のように、1年以内に現金になるものが流動資産。土地、建物、車両のように、長く使い続けるものが固定資産です。
【過去問】「土地や建物は流動資産である」
→ ✕。土地や建物は、売ってすぐ現金にするために持っているものではありませんよね。事業のために長く使うものなので、固定資産です。
<頻出分野ではありませんが補足>
もうひとつ、社会福祉法人ならではの言葉を紹介します。「基本財産」です。社会福祉法人の固定資産は、「基本財産」と「その他の固定資産」に分かれます。施設の土地や建物のように、社会福祉事業を行うために欠かせない財産は、定款に定めたうえで、この「基本財産」に区分されます。法人の土台となる財産なので、処分したり担保に入れたりするときは、所轄庁の承認が必要です。日々こまごま動く現金とは、扱いがまるで違います――そんなイメージで頭に入れておいてください。
右側(負債の部・純資産の部):返すのか、返さなくていいのか
次に右側です。上から、負債の部、純資産の部の順に並びます。

まずは右上の負債。負債は、返済義務のある財源です。そして負債にも「1年以内」という基準があります。1年以内に返す短期借入金や、支払い待ちの事業未払金などが流動負債で、返済が1年を超える長期借入金などが固定負債。左側と同じ物差しですね。
次に右下の純資産。こちらは、返済義務のない財源です。計算上は、資産から負債を引いた残りが純資産になります。仮に法人の全財産を現金に換えて、借りているものを全部返したら、手元に残るのはいくらか。それが純資産です。
ここで過去問チェック
「負債とは返済義務のない財源である」
→ ✕(負債は返済義務が「ある」財源です)。
「純資産は借方(左側)に計上される」
→ ✕(純資産は右側=貸方に計上されます)。
財務の健全性は「流動」同士を見比べる
最後に、資産と負債を比較することで何がわかるのか説明します。
流動資産と流動負債、この2つを見比べると、法人の財務の健全性がチェックできます。
理屈はシンプルです。
流動負債は「1年以内に払わなければいけないお金」、流動資産は「1年以内に支払いに使える状態にできるお金」。
もし流動負債のほうが大きかったら、
近い将来の支払い>支払いに使える状態にできるお金
(流動負債) (流動資産)
支払いに現金が追いついていません。ちょっと危ないですよね。
ということで最後の過去問です。
「健全性チェックができるのは事業活動計算書である」
→ ✕。事業活動計算書でわかるのは1年間トータルでみた時に、黒字か赤字かまではわかりますが、支払いが滞りそうにないかまではわかりません。健全性のチェックは、流動資産と流動負債を確認できる貸借対照表の役割です。
すっきり整理:貸借対照表の中身
| 場所 | 区分 | 中身の例 | 覚え方 |
| 左(借方)資産の部 | 流動資産 | 現金・預金、事業未収金 | 1年以内にすぐ使える状態にできるお金 |
| 左(借方)資産の部 | 固定資産 | 土地、建物、車両(基本財産を含む) | 長く使い続ける |
| 右(貸方)負債の部 | 流動負債 | 短期借入金、事業未払金 | 1年以内に返済 |
| 右(貸方)負債の部 | 固定負債 | 長期借入金 | 返済は1年より先 |
| 右(貸方)純資産の部 | 純資産 | 資産−負債の残り | 返済義務のない財源 |
迷ったら、右は「集め方」、左は「今の姿」。そして流動か固定かは「1年以内かどうか」。この2つの物差しだけで、貸借対照表の選択肢はほぼ判定できます。
我が家の貸借対照表
ここまで読んだ方は、試しに私の家の貸借対照表を想像してみてください。左に、預金と、マイホームと、車。右に、住宅ローン(立派な固定負債です)。そして資産からローンを引いた残りが、我が家の純資産。
この「我が家に置き換える」感覚、計算書類の勉強にすごく役立ちます。住宅ローンは長期の借金だから固定負債。家は売るために持っているんじゃないから固定資産。選択肢を前に迷ったら、一度、我が家に置き換えてみてください。案外するっと答えが出ますよ。
次は事業活動計算書を確認しましょう。


「福祉サービスの組織と経営」の出題傾向と勉強法は、こちらにまとめています。



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