統計法とは
〇統計法は、公的統計の作成と提供について基本となる事項を定めた法律です。第1条は次のように定めています。
この法律は、公的統計が国民にとって合理的な意思決定を行うための基盤となる重要な情報であることにかんがみ、公的統計の作成及び提供に関し基本となる事項を定めることにより、公的統計の体系的かつ効率的な整備及びその有用性の確保を図り、もって国民経済の健全な発展及び国民生活の向上に寄与することを目的とする。
〇現在の統計法は、2007年(平成19年)に全部改正されたものです。それ以前の統計法は1947年(昭和22年)に作られたもので、公的統計は行政のための統計として位置づけられていました。改正では、この位置づけを、社会全体で利用される情報基盤としての統計へと転換させています。
〇旧統計法にも指定統計調査について申告の義務があり、申告をしなかった者や虚偽の申告をした者への罰則も定められていました。
〇統計法に基づいて、総務省に統計委員会が置かれます。委員は13人以内で、学識経験のある者のうちから内閣総理大臣が任命します。基本計画の案、基幹統計の指定、基幹統計調査の変更、匿名データの作成などを調査審議します。2016年(平成28年)から総務省(以前は内閣府)が管轄しています。
公的統計と基幹統計
〇この法律において「公的統計」とは、行政機関、地方公共団体又は独立行政法人等(以下「行政機関等」という。)が作成する統計をいう。
〇公的統計のうち、特に重要なものが基幹統計です。
基幹統計は①国勢統計②国民経済計算③総務大臣が指定する統計の3つです(第2条第4項)。
〇統計調査は、次の2つに分かれます。
・基幹統計調査は、基幹統計の作成を目的とする統計調査です(第2条第6項)。
・一般統計調査は、行政機関が行う統計調査のうち、基幹統計調査以外のものです(第2条第7項)。
統計調査=基幹統計+一般統計
〇基幹統計調査の代表が国勢調査です。総務大臣が、本邦に居住している者として政令で定める者について、人と世帯に関する全数調査を行います(第5条)。10年ごとに本調査を行い、その間の年に簡易な方法による調査を行いますので、5年ごとの実施になります。全数調査で実施されます。
主な基幹統計
基幹統計は、令和7年1月21日現在で54本あります。このうち厚生労働省が所管するものは9本です。福祉の科目で出てくる統計や調査のうち、どれが基幹統計に当たるのかを一覧にしました。
〇国家試験データそのものがよく出題されるのは、人口動態統計・国民生活基礎調査・社会保障費用統計です。
〇家計統計は総務省が作成する基幹統計で、これを作成するための統計調査が家計調査です。生活扶助基準の改定方式である水準均衡方式は、一般国民の消費実態との均衡を図るという考え方に立ちますので、その消費実態をとらえる資料として家計調査の結果が用いられます。
基幹統計調査に適用される規定
基幹統計調査には、一般統計調査にはない規定が置かれています。
〇報告の義務:報告を求められた者は、これを拒み、又は虚偽の報告をしてはなりません(第13条)。報告を求められた者が未成年者又は成年被後見人である場合は、その法定代理人が本人に代わって報告する義務を負います。
〇かたり調査の禁止:国勢調査その他の基幹統計調査の報告の求めであると人を誤認させるような表示や説明をして、個人や団体から情報を取得することが禁じられています(第17条)。
〇地方公共団体が実施:基幹統計調査の事務の一部を法定受託事務として、地方公共団体の長又は教育委員会が行うこととすることができます(第16条)。
〇罰則:報告を拒み、又は虚偽の報告をした者は50万円以下の罰金です(第61条)。かたり調査をした者は、2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金です(第57条)。
〇基幹統計を作成したときは、行政機関の長が、速やかにこれを公表しなければなりません(第8条)。公表の方法は、インターネットの利用その他の適切な方法によることとされています。
調査票情報の二次利用
調査票情報は、統計の作成という本来の目的以外に使ってはならないのが原則です(第40条)。そのうえで、統計法は次の4つの利用方法を定めています。
・行政機関等が、自ら行う統計の作成などのために、自分で保有する調査票情報を利用します(第32条)。
・学術研究の発展に資する場合や教育の発展に資する場合など、公益に資すると認められる場合に、調査票情報を提供します(第33条、第33条の2)。
・委託を受けて統計の作成等を行います(第34条)。オーダーメード集計と呼ばれます。
・特定の個人や法人を識別できないように加工した匿名データを作成し、提供します(第35条、第36条)。基幹統計に係る匿名データを作成するときは、あらかじめ統計委員会の意見を聴かなければなりません。
二次利用が禁じられているのではなく、条件を満たした場合に認められる仕組みになっています。
過去問を解いてみましょう
第30回 問題84
現行の統計法に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 一般統計調査は、行政機関が行う統計調査のうち基幹統計調査以外の調査のことをいう。
2 基幹統計調査である国勢調査は、10年ごとに無作為抽出による調査が行われる。
3 調査を実施する行政機関は、その機関内に統計委員会を置かなければならない。
4 基幹統計の公表の場合には、インターネットを利用した公表が禁じられている。
5 成年被後見人には、基幹統計調査の報告を求められることはない。
解説
正答は1です。
1 ○ 第2条第7項のとおりです。
2 × 国勢調査は5年ごとに実施される全数調査です。周期も方法も誤りです。
3 × 統計委員会は総務省に置かれます。
4 × インターネットの利用その他の適切な方法により公表しなければならないと定められています。
5 × 報告を求められた者が成年被後見人である場合は、その法定代理人が本人に代わって報告する義務を負います。
第32回 問題85
2007年(平成19年)の統計法改正に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 調査票情報の利用制度が変わり、目的を問わず誰でも二次利用できるようになった。
2 改正の目的は、公的統計の位置づけを「行政のための統計」から「社会の情報基盤としての統計」へと転換させることである。
3 基幹統計は、それ以前の指定統計と異なって、回答の義務を規定している。
4 統計委員会は、各都道府県に設置されるようになった。
5 調査対象者の秘密保護の扱いは、改正前と変わっていない。
解説
正答は2です。
1 × 二次利用が認められるのは、統計法が定める場合に限られます。誰でも目的を問わず利用できるわけではありません。
2 ○ 改正の目的として正しい記述です。
3 × 旧統計法にも指定統計調査について申告の義務があり、罰則も定められていました。
4 × 統計委員会は、改正により内閣府に置かれました。その後、2016年(平成28年)に総務省へ移されています。
5 × 改正により、秘密の保護に関する規定が整えられました。
第35回 問題85
統計法に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 行政機関の長は、一定の要件を満たす学術研究に対して調査票情報を提供することができる。
2 行政機関の長は、基幹統計調査のデータを加工して、匿名データを自由に作成できる。
3 個人情報の秘密漏えいに関する罰則は定められていない。
4 厚生労働省が実施する社会福祉施設等調査は、基幹統計調査である。
5 一般統計調査には、基幹統計調査も含まれる。
解説
正答は1です。
1 ○ 学術研究の発展に資する場合など、公益に資すると認められる場合に提供できます。
2 × 基幹統計に係る匿名データを作成するときは、あらかじめ統計委員会の意見を聴かなければなりません。
3 × 業務上知り得た秘密を漏らした者に対する罰則が定められています。
4 × 社会福祉施設等調査は一般統計調査です。
5 × 一般統計調査は、基幹統計調査以外のものをいいます。
第36回 問題84
次のうち、統計法における基幹統計調査として、正しいものを1つ選びなさい。
1 社会福祉施設等調査
2 福祉行政報告例
3 介護サービス施設・事業所調査
4 労働安全衛生調査
5 国民生活基礎調査
解説
正答は5です。
1 × 一般統計調査です。
2 × 業務のなかで集まるデータを集計して作られる業務統計です。
3 × 一般統計調査です。
4 × 一般統計調査です。
5 ○ 国民生活基礎調査は、基幹統計である国民生活基礎統計を作成するための基幹統計調査です。
第38回 問題82
統計法に関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。
1 公的統計を国民にとって合理的な意思決定を行うための基盤となる重要な情報として位置づけている。
2 調査票情報の二次利用が禁じられている。
3 国勢調査の報告の求めであると人を誤認させるような説明をして、個人又は団体から情報を取得した者に対しては、罰則が適用される。
4 厚生労働省が実施する介護サービス施設・事業所調査は、基幹統計に含まれる。
5 都道府県に統計委員会を設置する。
解説
正答は1と3です。
1 ○ 第1条の文言のとおりです。
2 × 統計法が定める場合には、二次利用が認められています。
3 ○ かたり調査の禁止に違反した者には、2年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金が定められています。
4 × 介護サービス施設・事業所調査は一般統計調査です。
5 × 統計委員会は総務省に置かれます。
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