ピンカスとミナハンの4つのシステムは、多くの受験生を悩ませていますよね。毎年、毎年聞かれます。「ここやらないといけませんか?」と。除外したくなるほどわかりにくいということですよね。私も長いあいだ、これをすっきり説明できませんでした。教科書も参考書もブログも読みましたが、どれもしっくりきませんでした。
まず、このシステムを理解しようとするとき、多くの人は「クライエントから理解しよう」としていると思います。そこから脱却することが大切です。私たちが意識すべきなのは「クライエントとエージェントの関係は契約からはじまる」という点です。契約というのは依頼する側と依頼を引き受ける側が必ずいます。そのことを意識しながら、みていきましょう!
私は、この理解の仕方に気づいてから、システムそのものを聞かれても事例をみても、なんでもすらすら解けるようになりましたので大丈夫です!ご心配なく!ピンカスの問題は怖くありません!!
まず気をつけてほしい「単語の使い方」から
まずこの3つの単語の読み取り方をくみ取ってください。それができるようになれば、問題が解けるようになるのを実感できます。
でもここで躓いていると、たぶんどんな解説を読んでもわかりません。ぜひ、まずこの3つの単語の理解を!
①「エージェント」
エージェントという言葉には、それ単独では「代理人」という意味しかありません。旅行の代理人も、保険の代理人も、みなエージェントです。ですから、何の代理人なのかを言わなければ、意味が定まりません。もちろん「エージェント」の契約の相手方は「クライエント」です。
ということは「チェンジエージェント」というのは、「変化を起こすことを引き受けた代理人」です。もう少し付け足すと「変化を起こしてより良い状態にすることを契約上約束した代理人」です。
もちろんその契約の相手方は「クライエント」であり、「ターゲット」ではありませんので、その点は誤解のないように。
②「ターゲット」
ターゲットは、その変化を引き受けた代理人が、変わってもらう必要があると見定めた相手です。契約の相手方である「クライエント」とエージェントが「変わる必要があると判断した人」は同一であることもありますし、同一ではないこともあります。
クライエント ≠ ターゲット (変わる必要があると判断した人)となることもある
クライエントはAさんでターゲットがAさんの家族や職場であることもあり得ますよね。
③「システム」
そしてもうひとつ、この「システム」です。
システムと聞くと、制度や仕組みのことだと思いませんか。チェンジ・エージェント・システムと言われると、「変化を引き受ける代理人制度」のような、何かの名前に見えてきますが、そこが違います。
ここでのシステムは、システム論から来ている言葉で、人の集まりのことです。制度でも仕組みでもありません。
これから出てくる4つの「システム」ですが、これは「制度」や日本語の「システム」のことではなく、どれも、「人の集まり」とイメージしてください。
契約から、外へ広がっていきます
言葉の意味が決まれば、あとは順番だけです。
① チェンジ・エージェントが、クライエントと契約する
↓
② 何をどう変えるのか、目標を立てる
↓
③ その目標のために、変わってもらう必要がある相手=ターゲットが決まる
↓
④ その目標のために誰と組むかを考えて、今回の顔ぶれ=アクションが決まる
これだけです。
大事なのは、②が入っていること。目標が決まらないと、ターゲットもアクションも決まりません。教科書を読んでも、何の解説を読んでもすっきりしないのは、時間軸に沿った流れを見ずに4つを並べていたからでした。時間軸がわかればあとは、この表で理解できると思います。
4つのシステム
| システム | 誰のことか | 決め手 |
|---|---|---|
| チェンジ・エージェント システム | ソーシャルワーカー本人と、その所属機関 | 支援を引き受け、責任を負う側 |
| クライエント システム | 契約のもとで、援助によって利益を受ける人々 | 契約の本人 |
| ターゲット システム | 目標達成のために、影響を及ぼす必要がある人々 | クライエントの契約内容と目標により 変わる必要がある人(たち) |
| アクション システム | 目標達成のためにエージェントと 協働していく人々 | 力を貸してくれるあらゆる社会資源 |
補足を2つだけ。
クライエントとターゲットは、同じこともあれば、違うこともあります。本人に変わってもらう必要があるなら同じですし、変わってもらう相手が職場や家族や制度なら、まったく別になります。
チェンジ・エージェントとアクションは、似て見えますが違います。契約を結んで責任を負っているのがチェンジ・エージェントです。契約の張本人ですね。その人が今回声をかけて、力を貸してほしいとお願いしているのがアクションシステムです。児童相談所やハローワークなど、所属機関の外に広がっていくことも多くあります。
さて、過去問を解いてみましょう!
第31回・問題100 ピンカス(Pincus, A.)らによる「4つの基本的なシステム」の中の、ターゲット・システムとチェンジ・エージェント・システムに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ターゲット・システムは、役割を遂行するソーシャルワーカーを指す。
→× チェンジ・エージェント・システムです
2 ターゲット・システムは、ソーシャルワーカーが所属している機関を指す。
→× チェンジ・エージェント・システムです
3 ターゲット・システムは、変革努力の目標達成のためにソーシャルワーカーが影響を及ぼす必要のある人々を指す。
→〇
4 チェンジ・エージェント・システムは、契約の下、ソーシャルワーカーの努力によって利益を受ける人々を指す。
→× クライエント・システムです
5 チェンジ・エージェント・システムは、目標達成のため、ソーシャルワーカーと協力していく人々を指す。
→× アクション・システムです
正答は3です。わ!解けるわ!ってなっていませんか???
もう1問、去年も出ています
第38回・問題76 次のうち、ピンカス(Pincus, A.)とミナハン(Minahan, A.)の提示した「ターゲットシステム」に該当するものとして、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 変化をもたらすために働く人や機関
→× チェンジ・エージェント・システムです
2 ソーシャルワークの支援や利益を享受する人々
→× クライエント・システムです
3 目標達成に向けて協働する人々
→× アクション・システムです
4 機能不全状態にある社会制度や人々
→× 4つのシステムのどれでもありません
5 目標を達成するために変化を必要とする人々
→〇
正答は5です。
4について、補足しておきます。
「機能不全状態にある」と書かれると、いかにもターゲットらしく見えます。
機能不全→問題あり→うまくいっていない→変えなければいけないという図できあがっていませんか。
でも、ターゲットの決め手はそこではありません。「目標を達成するために、変化を必要とするかどうか」です。
たとえば、Aさんの復職が目標だとします。Aさんの勤務先が、法令も守り、他の社員にとっては何の問題もない、きちんと機能している会社だったとしても、Aさんの復職のために勤務時間の調整をしてもらう必要があるなら、その会社はターゲットです。機能不全ではありません。
ターゲットを決めるのは、相手の状態ではなく、こちらの目標なのです。
4つのシステムは並列ではなく順番
契約を結び、目標を立て、変わってもらう相手を見定め、一緒に動く顔ぶれを決める。
4つは並列に並んだ分類ではなく、順番に決まっていくものだった、ということですね。
この記事は「頻出!相談援助のアプローチシリーズ」の一つです。
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お疲れ様でした!

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