困難女性支援法とは(売春防止法から女性支援新法)
「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」(女性支援新法、困難女性支援法)は、令和4年5月に成立し、令和6年4月1日に施行されました。
この法律は、性的な被害や暴力、家庭関係の破綻、貧困、居場所の喪失など、様々な事情によって困難を抱えた女性を支援するための法律です。それまで女性への支援は売春防止法を根拠として行われていましたが、困難女性支援法の成立により、女性支援は独立した法律の下に置かれることになりました。
売春防止法そのものは現在も存続していますが、残っているのは売春に関する行為の規制と処罰を定める部分であり、女性支援は困難女性支援法に移り、現在のかたちになっています(売春防止法の補導処分と保護更生の条文は削除され、婦人補導院法も廃止)。
定義と基本理念
法の目的と困難な問題を抱える女性の定義
1条は、困難な問題を抱える女性の福祉の増進を図るための支援について必要な事項を定め、女性の人権が尊重され、女性が安心して、かつ、自立して暮らせる社会の実現に寄与することを目的としています。
この法律における困難な問題を抱える女性とは、「性的な被害、家庭の状況、地域社会との関係性その他の様々な事情により日常生活又は社会生活を円滑に営む上で困難な問題を抱える女性」をいい、そのおそれのある女性を含みます(2条)。困難を抱えるに至った理由や経緯を限定していない点が特徴です。
基本理念
3条の基本理念は次の3つです。
①意思を尊重し、問題や背景、心身の状況に応じた最適な支援を受けられるよう、包括的に提供する体制を整備すること
②関係機関及び民間の団体の協働により、早期から切れ目なく実施されるようにすること
③人権の擁護を図るとともに、男女平等の実現に資することを旨とすること
基本方針と基本計画
厚生労働大臣→基本方針を定めなければならない(7条)。
都道府県→基本方針に即して基本計画を定めなければならない(8条1項)。
市町村は→基本計画を定めるよう努めるものとする(8条3項)。
支援を担う3つの柱
支援の中核となるのは、女性相談支援センター、女性相談支援員、女性自立支援施設の3つです。いずれも婦人保護事業の時代からある機関等が、名称と位置づけを改めて引き継がれたものです。
女性相談支援センター
都道府県→設置しなければならない・指定都市→設置することができる(9条)(旧・婦人相談所)
相談に応じること、緊急時の安全確保と一時保護、心身の健康の回復のための医学的・心理学的な援助、自立に向けた情報提供や関係機関との連絡調整などを行います。一時保護を行う施設を設けなければならず、一時保護は厚生労働大臣が定める基準を満たす者に委託して行うこともできます。
女性相談支援員
都道府県→置くものとする 市町村→置くよう努めるものとする(11条)(旧・婦人相談員)
困難な問題を抱える女性の発見に努め、その立場に立って相談に応じ、専門的技術に基づいて必要な援助を行う職員です。都道府県では女性相談支援センターや福祉事務所、市町村では福祉事務所や本庁に置かれ、市町村の女性相談支援員は、支援対象者にとって最も身近な相談先になります。
女性自立支援施設
都道府県→設置することができる(12条)(旧・婦人保護施設)
入所させて保護するとともに、心身の健康の回復のための援助と自立に向けた生活支援を行い、退所した者の相談にも応じます。入所者が同伴する児童への学習・生活支援も行います。
設置は義務か、任意か
| 女性相談支援センター | 都道府県は設置しなければならない(指定都市は設置することができる) |
| 女性相談支援員 | 都道府県は置くものとする(市町村は置くよう努めるものとする) |
| 女性自立支援施設 | 都道府県は設置することができる |
DV防止法との関係
女性相談支援センターは、DV防止法に基づく配偶者暴力相談支援センターとしての機能も担っています。女性相談支援員は被害者の相談に応じ、女性自立支援施設は被害者の保護を行うことができるとされており、3つの柱はDV防止法における被害者支援の担い手でもあります。
DV防止法についての記事はこちら
→ DV防止法(配偶者暴力防止法)
支援調整会議
支援調整会議は、関係機関や民間の団体が集まり、支援に必要な情報を共有して支援内容を協議する場です(15条)。
①地方公共団体が組織するよう努める(努力義務)
②関係機関、民間の団体、支援に従事する者などで構成する
③必要な情報の交換と、支援の内容に関する協議を行う
④関係機関等に資料や情報の提供、協力を求めることができ、求められた側は協力するよう努める
⑤構成員には守秘義務があり、違反すると罰則がある
基本方針は、代表者会議、実務者会議、個別ケース検討会議に分けて実施することを想定しています。個別ケース検討会議は、健康状態が許さない場合等の例外を除き、本人の参画を得るものとされています。
本人の同意について
生活困窮者自立支援法や社会福祉法の支援会議のように、本人の同意がなくても情報を共有できると明確に定めた規定は、私が読む限り読み取れません。以下の資料でご確認ください。
このページから、法律の条文、基本方針(令和5年3月29日厚生労働省告示第111号)、関係通知を確認できます。
なお、国家試験で同意の要否が問われているのは、生活困窮者自立支援法と社会福祉法の支援会議です。
支援会議についての記事はこちら
→ 社会福祉法と生活困窮者自立支援法の支援会議をわかりやすく|同意なしでOK?
過去問を解いてみましょう
第37回 問題96
困難な問題を抱える女性への支援に関する法律(女性支援新法)に関する次の記述のうち,正しいものを 1 つ選びなさい。
1 本法成立前までは,配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律に婦人相談所や婦人保護施設が規定されていた。
2 本法における困難な問題を抱える女性とは,障害及び社会的障壁により継続的に日常生活または社会生活に相当な制限を受ける状態にある女性を指す。
3 都道府県は,厚生労働大臣が定めた困難な問題を抱える女性への支援のための施策に関する基本的な方針に即して,基本的な計画を定めることができるとされている。
4 都道府県は,女性相談支援センターを設置しなければならない。
5 都道府県は,困難な問題を抱える女性を入所させて,その保護及び支援を目的とする女性自立支援施設を設置しなければならない。
解説
1 →× 婦人相談所や婦人保護施設が規定されていたのは売春防止法です。
2 →× これは障害者基本法における障害者の定義です。
3 →× 都道府県の基本計画は「定めなければならない」とされています。
4 →○
5 →× 女性自立支援施設は「設置することができる」とされています。
第37回 問題93
事例を読んで,Aさんの状況を踏まえ,B市子育て支援課がAさん親子の支援のために,この時点で危機介入として速やかに連携すべき機関・施設として,適切なものを 2 つ選びなさい。
〔事 例〕
Aさん(32 歳)から,これまでも「夫(35 歳)から繰り返し暴言を浴びせられ,時に暴力を振るわれている。どうしたらよいか悩んでいる。夫から逃れたい」という相談を受けてきた。ある日「もう限界です」という訴えがあった。Aさんは, 4 歳の子を帯同しており,子には母親をかばう様子もみられる。Aさんの家庭は夫の収入によって生計を立てているが,その収入はほとんど夫が管理しており,Aさんは手元に所持金が全くない状況である。Aさんは,子とともに生活したいと望んでいる。B市子育て支援課は緊急受理会議を行った。
1 児童養護施設
2 母子生活支援施設
3 B市の女性相談支援員
4 女性自立支援施設
5 女性相談支援センター
解説
1 →× 児童養護施設は子どもだけが入所する施設です。子とともに生活したいというAさんの意向に沿いません。
2 →× 母子生活支援施設は母子で入所できますが、その後の生活の場です。危機介入として速やかに連携する段階では優先されません。
3 →○
4 →× 女性自立支援施設も入所による保護と自立支援を行う施設で、この段階の連携先ではありません。
5 →○
入所施設である1・2・4が誤りで、相談を受け止める市の女性相談支援員と、一時保護の機能をもつ女性相談支援センターが正解という構造です。
DV防止法についての記事はこちら
→ DV防止法(配偶者暴力防止法)
第38回 問題49
地域福祉における支援・配慮を要する者に関する次の記述のうち,正しいものを 1 つ選びなさい。
1 子ども・若者育成支援推進法に基づくヤングケアラーとは,家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる 18 歳未満の者をいう。
2 「困難女性支援法」における困難な問題を抱える女性とは,犯罪等により害を被った女性及びその家族又は遺族をいう。
3 「住宅セーフティネット法」における住宅確保要配慮者とは,生活困窮者自立支援制度による住居確保給付金の支給対象にならない者をいう。
4 災害対策基本法における避難行動要支援者とは,都道府県が作成する避難行動要支援者名簿への登載を希望する者をいう。
5 「ひきこもり支援ハンドブック」におけるひきこもり支援対象者とは,社会的に孤立し,孤独を感じている状態にある人や,様々な生きづらさを抱えている状態の人をいう。
解説
2 →× 犯罪被害者等基本法における犯罪被害者等の定義です。困難女性支援法における困難な問題を抱える女性とは、性的な被害、家庭の状況、地域社会との関係性その他の様々な事情により日常生活又は社会生活を円滑に営む上で困難な問題を抱える女性であり、そのおそれのある女性を含みます。
→ ヤングケアラーとは?定義と支援の仕組みをわかりやすく解説
→ 住宅セーフティネット法とは?住宅確保要配慮者への支援と令和6年改正をわかりやすく解説
→ 災害対策基本法とは?要配慮者・避難行動要支援者・個別避難計画をわかりやすく解説
→ 「ひきこもり」の定義が見直し|人数、ひきこもり地域支援センター事業も確認


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