2017年の社会福祉法改正で、地域共生社会の理念が法律に明記されました。これは、制度や分野ごとの縦割りを超えて、誰もが住み慣れた地域で自分らしく暮らせる社会を目指す考え方です。
8050問題、ダブルケア、ヤングケアラー、ひきこもり、生活困窮、社会的孤立など、ひとつの世帯が複数の課題を同時に抱えるケースが増えてきました。ところが法律も制度も窓口も、高齢者、障害者、子ども、生活困窮者という単位で縦割りに構築されていました。
この状態を見直すために地域共生社会の実現が目指されるようになり、この理念を具体化する仕組みとして2020年(令和2年)の社会福祉法改正で創設されたのが、重層的支援体制整備事業です。詳細はこちらの記事をご覧ください。

この制度は、複数の機関で情報を共有しながら支援をしていくことを前提としています。ひとつの部局やひとつの機関の中だけで完結せず、さまざまな人たちが関わりながら問題を包括的に解決していこうとするものです。
そのためには、それぞれが持っている情報や知恵を出し合い、支援の方向性を共同で検討する場が必要になります。これが支援会議です。支援会議は、ひとつの課やひとつの部だけで開催されることを想定していません。
支援会議と同意の関係を整理する
支援会議は、本人の同意がなくても開催できる会議として紹介されることがあります。この説明自体は誤りではありませんが、同意が不要という理解と、守秘義務があるから話し合いができるという理解には、少し補足が必要です。
①社会福祉法の支援会議は、同意が不要であるという点
本来であれば、本人の同意を得たうえで情報を共有し、支援の方向性を話し合うことが望ましい形です。ただ、世帯が抱える課題が複雑化・複合化している現代では、本人の同意を得るのが難しい状態でも、支援の方向性を決めるべきタイミングがあります。
本人の同意が得られていない以上、細かなプランを立てることはできません。そのため、アプローチの方向性や役割分担といった大枠を意識しながら、今後の取り組み方の方向性を議論する場として設けられているのが支援会議です。
支援会議で認められているのは、「本人の同意が得られない場合であっても、必要な範囲で関係機関が情報共有できる」という点です。同意を得なくてよいと定めているわけではなく、共有できる範囲も「必要な範囲」に限定されています。
②守秘義務があるから、同意がなくても話し合いができるという点
守秘義務は、本人の同意があってもなくても解除されることはありません。それはどの会議でも同じで、支援会議にも当然のように守秘義務があります。
守秘義務は、支援会議に限らずどの会議にもある規定です。そのため、守秘義務があるから同意なしで情報を共有してよい、という理解は正確ではありません。
その上で、これらの会議を開催するかどうかについては、市町村の判断に任されています。
生活困窮者自立支援法の支援会議
生活困窮者自立支援法の支援会議も、社会福祉法の支援会議と位置づけはほぼ同じと理解してよいでしょう。
生活困窮者が抱える課題は、単に お金がないというだけではありません。人間関係のトラブルや孤独・孤立、家族関係の課題、本人の病気や障害など、さまざまな原因が重なっていることが多くあります。
そのため社会福祉法の支援会議と同様、本人の同意が難しい場合でも、縦割りの行政の枠組みでは解決できない問題を情報共有し、地域課題を発見し、さまざまな支援に関わる人たちが連携しながら生活改善を図っていくことを前提としています。
生活困窮者自立支援法の支援会議も、本人の同意を得なくてよいと定めているわけではありません。同意が得られていない段階でも必要な話し合いができる場を設け、そこには他の会議と同じように守秘義務が課されています。
なお、こちらの会議の開催については令和6年改正で任意ではなく努力義務になりました。
すっきり整理:4つの会議
一度出た問題は、切り口を変えて何度も出題されることがあります。以下の点を確認しておきましょう。
| 同意がない段階の会議 | 同意を得てプランを作る会議 | |
|---|---|---|
| 社会福祉法 (重層的支援体制整備事業) | 支援会議(第106条の6) 市町村が「組織することができる」=任意 | 重層的支援会議 (法律上の文言ではない) |
| 生活困窮者自立支援法 | 支援会議(第9条) 「組織するよう努めるものとする」=努力義務 (令和6年改正・令和7年4月1日施行) | 支援調整会議 (法律上の文言ではない) |
左の列の支援会議は、法律に規定されていますが、右の列は、法律上の名称ではありません。重層的支援会議は実務上の呼び方で、支援調整会議は自治体の要綱や国のマニュアルに基づくものです。
ここまで読まれた方は、支援会議と協議会も混乱するかもしれません。協議会についてはこちらをご参照ください。

大きな役割の違いや法律上の位置づけの違いについては、こちらの記事で整理しています。

ここで過去問を確認しましょう
第38回・問題50
事例を読んで、次のうち、総合相談窓口のA相談員(社会福祉士)が他機関とともに地域生活支援を検討するために、考えられる会議体として、適切なものを2つ選びなさい。
〔事例〕 B市では、総合相談窓口を行政直営で運営している。ある時、地域住民から総合相談窓口に対して、近所の家が庭にごみを溜めており、異臭がするので撤去してほしいという相談が入った。Aが当該地区の民生委員に連絡すると、以前は高齢の母親と60歳代前半の息子Cさんが暮らしていたが、去年、母親が認知症グループホームに入居してからは訪問する機会がなかったとのことだった。Cさんについては、子どもの頃は養護学校に通っていたらしいが、詳しくはわからず、またCさんには妹がおり、母親の入居手続きを行う際、Cさんには一切関わりたくないと言っていたことが分かった。そこでAは、Cさん宅を訪問し、最初は会うこともできなかったが、次第に言葉を交わすようになり、ごみを片付けたいが体調が悪くお金もないので悩んでいることが分かり、Cさんの同意は得られていないが、関係者による情報共有や支援体制構築に向けた会議の開催を検討することとした。
1 行政相談委員法に基づく行政相談懇談会
2 生活困窮者自立支援法に基づく支援会議
3 「障害者総合支援法」に基づく地域連携推進会議
4 社会福祉法に基づく支援会議
5 社会福祉法に基づく重層的支援会議
正答 2・4
5は選びたくなる選択肢ですが、重層的支援会議は法律に基づく会議ではありません。この会議は、本人の同意を得たあとにプランを作るための会議です。詳細は下記の表をご確認ください。


コメント