「商助」とは?21世紀福祉ビジョンの自助・共助・公助・商助を整理

社会福祉の原理と政策
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①現在の典型的なバランス

現在、自助・共助・公助のバランスについて、国は以下のように考えています。

①自助が基本
②共助は自助を補完する(社会保険として共助の仕組みを作る)
③上記①②がうまく機能しない場合は公助で対応する

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②1950年勧告の考え方

この考え方は、1950年(昭和25年)の社会保障制度審議会「社会保障制度に関する勧告」からもある程度読み取れます。

「いわゆる社会保障制度とは疾病、負傷、分娩、廃疾、死亡、老齢、失業、多子その他困窮の原因に対し、保険的方法又は直接公の負担において経済保障の途を講じ、生活困窮に陥った者に対しては、国家扶助によって最低限度の生活を保障するとともに、公衆衛生及び社会福祉の向上を図り、もって全ての国民が文化的社会の成員たるに値する生活を営むことができるようにすることである」

という文章の通り、この時から「保険的方法」(共助)と、生活困窮に陥った者に対する「国家扶助」(公助)が対応するという考え方が示されています。

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③1979年・2006年・2012年に見る同じ骨格

1979年(昭和54年)の新経済社会7ヵ年計画は、次のように述べています。

個人の自助努力と家庭や近隣・地域社会等の連帯を基礎としつつ、効率のよい政府が適正な公的福祉を重点的に保障するという自由経済社会のもつ創造的活力を原動力とした我が国独自の道を選択創出する、いわば日本型ともいうべき新しい福祉社会の実現を目指すものでなければならない」

自助と地域の連帯を基礎に置き、公的福祉は「重点的」な保障にとどめる、という考え方です。公的福祉を最大限に拡充する、という方向ではありません。

2006年の社会保障の在り方に関する懇談会の最終報告書は、

自助を基本に、共助が補完し、これらでは対応できない状況に公助で対応するとしています。

2012年の社会保障制度改革推進法も、

第二条 社会保障制度改革は、次に掲げる事項を基本として行われるものとする。
一 自助、共助及び公助が最も適切に組み合わされるよう留意しつつ、国民が自立した生活を営むことができるよう、家族相互及び国民相互の助け合いの仕組みを通じてその実現を支援していくこと。

表現は時代によって変わっても、自助が基礎にあり、共助が支え、公助が最後の砦として機能する、という骨格は一貫しています。

④第38回の「商助」について

第38回問題22に、「企業による商助」という表現がありました。21世紀福祉ビジョン(1994年)が示したのは自助・共助・公助の3分類で、企業は共助を担う主体の一つとして位置づけられていますが、独立した枠組みとして「商助」というものを明確に位置付けているわけではありません。

ただし、企業は社会保障を支える担い手としての役割を長年果たしていますし、年々その役割を増しています。
例えば、健康保険や厚生年金の保険料は労使折半で、半分は企業が負担しています。さらに、児童手当の財源の一部にあたる子ども・子育て拠出金も、事業主が全額を負担する仕組みです。
「商助」という言葉こそ実在しませんが、企業が共助の一員として社会保障を支えているということは覚えておきましょう。

⑤21世紀福祉ビジョンとは

最後に、21世紀福祉ビジョンは、1994年(平成6年)に厚生省の高齢社会福祉ビジョン懇談会がまとめた提言です。背景にあったのは、高齢化の急速な進行でした。1970年に高齢化社会(高齢化率7%以上)となった日本は、1995年には高齢社会(高齢化率14%以上)を迎えることが確実視されており、社会保障の給付構造をどう組み替えるかが課題になっていました。

当時、年金・医療・福祉その他の給付構造は、年金:医療:福祉その他=5:4:1となっており、福祉その他の割合が低い構造でした。そこで、医療の割合を抑え、介護や福祉サービスに資源を厚く配分し直すことで、年金:医療:福祉その他=5:3:2を目指すことになり、あわせて、地域社会を中心とする自助、社会保障による共助が適切に組み合わされた重層的な福祉構造を実現するという考え方も示しました。企業は、この共助を担う主体の一つとして位置づけられています。

このビジョンを基に、同じ1994年に新ゴールドプラン(高齢者福祉分野)とエンゼルプラン(少子化対策分野)が策定されています。さらに2000年の介護保険の導入によって、それまで医療保険が担っていた高齢者介護の費用の一部が介護保険(福祉その他)へ移りました。

現在、年金:医療:福祉その他=42:34:25です(2026年8月現在)。福祉その他は25%まで大きく伸びており、その部分については、提言の方向には進んでいると言えます。

過去問で確認しましょう

日本における自助・共助・公助等に関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。

1 新経済社会7ヵ年計画(1979年(昭和54年))は、自助努力や家庭及び社会の連帯の限界を踏まえ、公的福祉を最大限に拡充するとした。 
2 21世紀福祉ビジョン(1994年(平成6年))は、地域社会を中心とする自助、社会保障による共助、企業による商助とが適切に組み合わされた重層的な福祉構造を実現するとした。 
3 社会保障の在り方に関する懇談会の最終報告書(2006年(平成18年))は、自助を基本に、共助が補完し、これらでは対応できない状況に公助で対応するとした。 
4 「地域包括ケア研究会報告書」(2009年(平成21年))は、介護保険制度を含む社会保険と社会福祉の2分野を公助の仕組みに位置づけた。 
5 社会保障制度改革推進法(2012年(平成24年))は、自助、共助及び公助が最も適切に組み合わされるよう留意しつつ、国民が自立した生活を営むことができるようにすることを旨として、実施されなければならないとした。

1→× 新経済社会7ヵ年計画は「効率のよい政府が適正な公的福祉を重点的に保障する」としており、自助と地域の連帯を基礎に置く方向性を示した。公的福祉を最大限に拡充する内容ではない。 
2→× 21世紀福祉ビジョンが示したのは自助・共助・公助の3分類。企業は共助を担う主体の一つとして位置づけられており、「商助」という独立した分類は存在しない。 
3→○ 2006年の社会保障の在り方に関する懇談会の最終報告書は、自助を基本に、共助が補完し、これらでは対応できない状況に公助で対応するとしている。 
4→× 地域包括ケア研究会報告書が示すのは自助・互助・共助・公助の4分類。介護保険などの社会保険は共助にあたり、社会保険と社会福祉をまとめて公助に位置づけるものではない。 
5→○ 社会保障制度改革推進法第2条は、自助、共助及び公助が最も適切に組み合わされるよう留意しつつ、国民が自立した生活を営むことができるよう、家族相互及び国民相互の助け合いの仕組みを通じてその実現を支援していくことを基本としている。

第33回問題50(選択肢2)
「1950年(昭和25年)の『社会保障制度に関する勧告』における社会保障制度の定義には、社会保険、国家扶助、治安維持及び社会福祉が含まれている。」
→× 1950年勧告の定義に含まれるのは、社会保険・国家扶助・公衆衛生・社会福祉の4つ。「治安維持」は含まれていない。

第36回問題50(選択肢4)
「児童手当の費用は、国と地方自治体が折半して負担する。」
→× 児童手当の財源は国・地方に加えて事業主拠出金でも構成されており、国と地方の折半だけではない。企業も財源の一部を負担している。

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