高齢者福祉の歴史シリーズ
語呂合わせで、年表を覚えようとしていませんか。法律は、いつできたかではなく、どのような背景で、どのような内容だったかを覚えていないと解けません。時代背景と一緒に、流れで覚えていきましょう。
高齢者福祉の歴史は全4回です。
→①老人福祉法の制定
→②老人医療費無料化と老人保健法
→③ゴールドプランと福祉八法改正
→高齢者福祉の歴史④|介護保険法の制定と改正(この記事)
歴史の勉強の仕方についての記事はこちら
→歴史の勉強の仕方
今回のテーマは介護保険法の制定と改正
高齢者福祉の歴史、第4回は介護保険法の制定と改正です。1997年の制定から、その後繰り返されてきた改正までを確認します。この時代の中心は、1997年の介護保険法の制定と、2005年・2011年・2014年・2017年の改正、認知症施策です。
1994年〜2000年、介護保険法の制定と施行
1994年(平成6年)、厚生省に設置された高齢者介護・自立支援システム研究会が「新たな高齢者介護システムの構築を目指して」という報告書をまとめました。それまで積み重ねられてきた議論を整理し、次の4つを柱とする新しい介護システムを提言したものです。
①高齢者自身によるサービスの選択
②介護サービスの一元化
③ケアマネジメントの確立
④社会保険方式の導入
社会連帯を基礎とした「高齢者の自立支援」を基本理念に据えた点が、のちの介護保険法の土台になりました。
背景には、高齢化が進んで介護を必要とする高齢者が増え、家族だけで介護を担うことが難しくなっていたことがあります。それまでの高齢者福祉は、市町村が「措置」として決める仕組みでした。誰にどのサービスを提供するかを行政が判断するため、利用者が自分でサービスを選ぶことはできませんでした。福祉サービスを利用することへの心理的な抵抗が大きいことも指摘されていました。
社会保険方式であれば、保険料を負担することで、給付を受けることが権利として位置づけられます。利用者はサービスを選べるようになり、事業者を選ぶ幅も広がります。財源についても、税だけで賄うよりも国民の理解が得られやすいと考えられました。
こうして1997年(平成9年)、介護保険法が制定されました。高齢者のニーズに応じた総合的なサービス利用を支援するため、居宅介護支援(ケアマネジメント)が定められ、2000年(平成12年)に施行されました。
当時の介護保険の枠組みは、次のとおりです。
<保険者>
市町村及び特別区(広域連合・一部事務組合含む)
<被保険>
・第1号被保険者:65歳以上の者
・第2号被保険者:40歳以上65歳未満で医療保険に加入している者
第1号被保険者は原因を問わず、要介護・要支援と認定されればサービスを利用できますが、第2号被保険者が利用できるのは、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する特定疾病によって要介護・要支援状態になった場合に限られます。この特定疾病は、当初は15疾病でした。
<認定の区分>
要支援と要介護1から要介護5までの6段階
ただし、現在のように、要介護、要支援者用のサービスが明確に分類されていたわけではありませんでした。
<利用者負担>
所得にかかわらず一律1割負担
介護保険の被保険者についての記事はこちら
→介護保険の被保険者|第1号・第2号の区分と保険料の徴収方法
介護保険が5つ目の社会保険として生まれた経緯についての記事はこちら
→社会保障の歴史④|介護保険から後期高齢者医療制度・適用拡大まで
国家試験では、次のように出題されました。
×「高齢者介護・自立支援システム研究会「新たな高齢者介護システムの構築を目指して」(1994年(平成6年))において,措置制度による新たな介護システムの創設が提言された。」(第34回問題127)→提言されたのは措置制度ではなく、社会保険方式による新しい介護システムです。
○「介護保険法(1997年(平成9年))が制定され,高齢者のニーズに応じた総合的なサービス利用を支援するため,居宅介護支援(ケアマネジメント)が定められた。」(第34回問題127)
×「1997年(平成9年)の介護保険法では,要介護認定を受け,要介護と判定された高齢者等は,原則3割の利用者負担で,介護サービスを利用できることが規定された。」(第36回問題127)→利用者負担は原則1割です。
○「1997年(平成9年)の介護保険法の制定によって,介護保険の保険者は市町村及び特別区であることが法定化され,併せて広域連合や一部事務組合も保険者になることができるようになった。」(第37回問題86)
2005年改正 予防重視型システムへ→高齢化率21%へ
施行から5年、介護保険の認定者は大きく増えていました。とくに増え方が著しかったのが、要支援と要介護1という軽度の人たちです。そこで2005年(平成17年)、大きな改正が行われました(施行は2006年4月)。主な内容は次の4点です。
①予防重視型システムへの転換
要支援が要支援1と要支援2に分けられ、要介護1のうち状態の改善が見込まれる人が要支援2に移りました。この要支援1・2の人を対象とする新予防給付が創設され、「介護予防訪問介護」「介護予防通所介護」というように、要支援者専用のサービスとして再編されました。あわせて、市町村が実施する地域支援事業も創設されました。
②新たなサービス体系の確立
住み慣れた地域で暮らし続けられるよう、地域密着型サービスが創設されました。そして、予防重視型システムと地域包括ケアを支える中心的な機関として、地域包括支援センターが設置されました。
③施設給付の見直し
施設の居住費と食費が保険給付の対象外となりました。在宅で暮らす人との負担の公平を図るためです。ただし低所得者には、特定入所者介護サービス費(補足給付)による負担軽減が設けられました。
④サービスの質の確保・向上
介護サービス情報の公表が義務づけられ、介護支援専門員の資格に更新制が導入されました。
このほか、第2号被保険者が対象となる特定疾病に末期がんが加えられ、15疾病から16疾病になりました。
2007年、高齢化率21%を超える
1970年に高齢化率が7%、1994年に14%となり、2007年には21%を超えました。「超高齢社会」に区分される数字です。介護保険が始まって7年、介護サービスを支える制度は整備されましたが、支える側の負担はここからさらに重くなることが想定される数字です。
2011年改正 地域包括ケアシステムの推進
2011年(平成23年)の改正では、24時間対応の定期巡回・随時対応型訪問介護看護と、複合型サービス(現在の看護小規模多機能型居宅介護)が創設されました。また、一定の研修を受けた介護職員等が、医師の指示のもとで喀痰吸引等を実施できるようになりました。
この改正では、地域包括ケアシステムの推進が盛り込まれました。「地域包括ケア」という言葉が、いつから、どのようにして使われるようになったのかを、次の年表で整理します。
2003年
高齢者介護研究会報告書「2015年の高齢者介護」で、考え方として示されました。
2005年
介護保険法改正時、厚生労働省が改正内容を説明する資料の中で「地域包括ケアシステム」という言葉が使われています。ただし介護保険法の条文には書かれていません。
2011年
介護保険法第5条第3項が追加され、国及び地方公共団体は、高齢者が住み慣れた地域で自立した日常生活を営めるよう、保健医療・福祉・介護予防・生活支援の施策を、医療と住まいに関する施策と連携させながら包括的に推進するよう努めなければならないと定められました。ただし「地域包括ケアシステム」という言葉そのものは、この条文には出てきません。
2013年
「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律」の中で、条文上はじめて地域包括ケアシステムとは「地域の実情に応じて、高齢者が、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、医療、介護、介護予防、住まい及び自立した日常生活の支援が包括的に確保される体制」と定義されました。
2014年改正 予防給付の一部を地域支援事業へ
2014年(平成26年)の改正では、予防給付のうち訪問介護と通所介護が、市町村が実施する地域支援事業(介護予防・日常生活支援総合事業)へ移されました。特別養護老人ホームの新規入所者が原則要介護3以上に限定されたのも、この改正です。
地域支援事業についての記事はこちら
→地域支援事業とは|サービス・活動事業と一般介護予防事業・包括的支援事業・任意事業を整理
2017年改正 介護医療院の創設
2017年(平成29年)の改正では、日常的な医学管理や看取りの機能と、生活施設としての機能を兼ね備えた介護医療院が創設されました。
共生型サービスが位置づけられたのも、この改正です(施行は2018年4月)。介護保険と障害福祉のどちらか一方の指定を受けている事業所が、もう一方の指定も受けやすくなる仕組みで、高齢者と障害児者が同じ事業所でサービスを利用できるようにするものです。対象となるのは、訪問介護(居宅介護)、通所介護(生活介護)、短期入所の3種類です。介護保険法だけでなく、障害者総合支援法・児童福祉法もあわせて改正されました。
2017年の介護保険法等改正についての記事はこちら
→2017年(平成29年)介護保険法等改正まとめ|地域福祉計画・3割負担・介護医療院・共生型サービス
認知症施策のまとめ
介護保険法の改正と並んで、認知症に関する施策も作られてきました。年号と内容は、次のとおりです。
| 年 | できごと |
|---|---|
| 2012年 | オレンジプラン(認知症施策推進5か年計画) 厚生労働省単独の計画 |
| 2015年 | 新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略) 関係府省庁が共同で策定 |
| 2019年 | 認知症施策推進大綱 「共生」と「予防」を車の両輪に |
| 2023年 | 認知症基本法 認知症施策をはじめて法律として位置づけ |
国家試験では、次のように出題されました。
×「認知症高齢者の急増に対応してオレンジプラン(認知症施策推進5か年計画)が1990年代に策定され,その計画推進を目的の一つとして介護保険法が制定された。」(第35回問題127)→オレンジプランが策定されたのは2012年で、介護保険法の制定(1997年)より後です。
認知症施策の変遷についての記事はこちら
→新オレンジプランとは?認知症施策の変遷を整理しよう(オレンジプラン→新オレンジプラン→認知症施策推進大綱→認知症基本法)
→認知症基本法をわかりやすく解説|地域共生社会の実現|演習問題つき
シリーズはここまでです
高齢者福祉の歴史シリーズは、老人福祉法の制定から介護保険法の改正までの4回です。①から順に読むと、各制度がどのような背景で変わったかを確認できます。
→①老人福祉法の制定
介護保険制度の一問一答についての記事はこちら
→介護保険制度の一問一答(30問)|要介護認定と給付・保険料や財源・指定権限
高齢者福祉の一問一答についての記事はこちら
→高齢者福祉の一問一答(30問)|地域支援事業・歴史・老人福祉法と虐待防止
ほかの分野の歴史の記事はこちら
→歴史の記事マップ
過去問を解いてみましょう
第34回問題127
高齢者保健福祉施策の変遷に関する次の記述のうち,正しいものを 1 つ選びなさい。
1 高齢者介護・自立支援システム研究会「新たな高齢者介護システムの構築を目指して」(1994 年(平成 6 年))において,措置制度による新たな介護システムの創設が提言された。
2 介護保険法(1997 年(平成 9 年))が制定され,高齢者のニーズに応じた総合的なサービス利用を支援するため,居宅介護支援(ケアマネジメント)が定められた。
3 高齢者介護研究会「2015 年の高齢者介護~高齢者の尊厳を支えるケアの確立に向けて~」(2003 年(平成 15 年))において,「第 2 次ベビーブーム世代」が高齢者になる時期を念頭に,既存の介護保険施設の拡充が提言された。
4 「医療介護総合確保法」(2014 年(平成 26 年))において,地域包括ケアシステムが「全国一律に医療,保健予防,社会福祉及び自立支援施策が包括的に確保される体制」と定義づけられた。
5 「認知症施策推進大綱」(2019 年(令和元年))において,認知症の人の事故を補償する給付を現行の介護保険制度の中で創設することの必要性が明示された。
(注)「医療介護総合確保法」とは,「地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律」のことである。
解説
1→× この報告は措置制度の問題点を指摘し、「高齢者自身の選択」による新しい介護システムの構築を提言しました。
2→○ 1997年の介護保険法で、居宅介護支援(ケアマネジメント)が定められました。
3→× 「2015年の高齢者介護」が念頭に置いたのは、「団塊の世代」(1947年〜1949年生まれの第1次ベビーブーム世代)が高齢者になる時期です。第2次ベビーブーム世代は1971年〜1974年生まれの世代で、「団塊ジュニア」とも呼ばれます。
4→× 地域包括ケアシステムは、「地域の実情に応じて」医療、介護、介護予防、住まい及び自立した日常生活の支援が包括的に確保される体制と定義されています。全国一律ではありません。
5→× 認知症施策推進大綱が示したのは、認知症の人とその監督義務者等を被保険者とする民間の損害賠償責任保険が普及するよう、保険会社の取組を後押しすることです。介護保険制度の中で給付を創設することは示していません。
第35回問題127
日本の高齢者保健福祉施策の変遷に関する次の記述のうち,正しいものを 1 つ選びなさい。
1 老人医療費支給制度による老人医療費の急増等に対応するため,1980 年代に老人保健法が制定された。
2 人口の高齢化率が 7 %を超える状況を迎えた 1990 年代に高齢社会対策基本法が制定され,政府内に厚生労働大臣を会長とする高齢社会対策会議が設置された。
3 認知症高齢者の急増に対応してオレンジプラン(認知症施策推進 5 か年計画)が 1990 年代に策定され,その計画推進を目的の一つとして介護保険法が制定された。
4 住まいと介護の双方のニーズを有する高齢者の増加に対応するため,2000 年代の老人福祉法の改正によって軽費老人ホームが創設された。
5 高齢者の医療の確保に関する法律による第 3 期医療費適正化計画では,2010 年代から 2020 年代の取組の一つとして,寝たきり老人ゼロ作戦が初めて示された。
解説
1→○ 老人医療費支給制度(1973年施行)により老人医療費が急増したことなどに対応するため、1982年に老人保健法が制定されました。
2→× 高齢化率が7%を超えたのは1970年です。高齢社会対策基本法は1995年に制定され、高齢社会対策会議の会長は内閣総理大臣です。
3→× オレンジプランが策定されたのは2012年です。介護保険法は1997年に制定されています。
4→× 軽費老人ホームは、1963年の老人福祉法制定時から規定されています。
5→× 寝たきり老人ゼロ作戦は、1989年のゴールドプランで示されました。
第36回問題127
第二次世界大戦後の日本における高齢者保健福祉制度の展開過程に関する次の記述のうち,最も適切なものを 1 つ選びなさい。
1 1950 年(昭和 25 年)の生活保護法では,常時介護を必要とする老人の家庭を訪問する老人家庭奉仕員が規定された。
2 1963 年(昭和 38 年)の老人福祉法では,養護老人ホーム,特別養護老人ホーム,軽費老人ホームを含む,老人福祉施設が規定された。
3 1982 年(昭和 57 年)の老人保健法では,70 歳以上の高齢者にかかる医療費のうち,その自己負担分を無料化する老人医療費支給制度が規定された。
4 1997 年(平成 9 年)の介護保険法では,要介護認定を受け,要介護と判定された高齢者等は,原則 3 割の利用者負担で,介護サービスを利用できることが規定された。
5 2000 年(平成 12 年)の社会福祉法の改正では,高齢者保健福祉推進十か年戦略(ゴールドプラン)が策定されたことを受け,地域包括ケアシステムが規定された。
解説
1→× 老人家庭奉仕員は、1963年の老人福祉法で規定されました。
2→○ 1963年の老人福祉法は、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、老人福祉センターを老人福祉施設として規定しました。
3→× 老人医療費支給制度は、1972年の老人福祉法改正で規定され、1973年に施行されました。1982年の老人保健法は、老人医療に一部負担を導入しました。
4→× 介護保険法が規定した利用者負担は、原則1割です。
5→× ゴールドプランの策定は1989年です。地域包括ケアシステムの推進は、2011年の介護保険法改正で国と地方公共団体の責務として規定されました。
第37回問題86
日本の高齢者福祉制度の発展過程に関する次の記述のうち,正しいものを 1 つ選びなさい。
1 1963 年(昭和 38 年)の老人福祉法の制定によって,デイサービスやショートステイを含む在宅福祉サービスが法定化された。
2 1982 年(昭和 57 年)の老人保健法の制定によって,市町村及び都道府県における老人保健福祉計画の策定義務が法定化された。
3 1997 年(平成 9 年)の介護保険法の制定によって,介護保険の保険者は市町村及び特別区であることが法定化され,併せて広域連合や一部事務組合も保険者になることができるようになった。
4 2005 年(平成 17 年)の「高齢者虐待防止法」の制定によって,使用者(高齢者を雇用する事業主)による虐待が高齢者虐待の定義の一つとして,法定化された。
5 2023 年(令和 5 年)の「認知症基本法」の制定によって,国民に対して,認知症の人を不当に差別する行為を禁止することが法定化された。
(注)1 「高齢者虐待防止法」とは,「高齢者虐待の防止,高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」のことである。
2 「認知症基本法」とは,「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」のことである。
解説
1→× 1963年の老人福祉法で法定化された在宅福祉サービスは、老人家庭奉仕員によるサービスです。デイサービスとショートステイは、1990年の福祉関係八法改正で法定化されました。
2→× 老人保健福祉計画の策定義務は、1990年の福祉関係八法改正で法定化されました。
3→○ 介護保険法は、市町村及び特別区を保険者と規定しています。広域連合や一部事務組合も、地方自治法に基づいて保険者になることができます。
4→× 高齢者虐待防止法が定義する高齢者虐待は、養護者による虐待と養介護施設従事者等による虐待です。使用者による虐待を定義に含むのは障害者虐待防止法です。
5→× 認知症基本法は、国民の責務として、認知症に関する正しい知識と認知症の人に関する正しい理解を深め、共生社会の実現に寄与するよう努めることを定めています。


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