語呂合わせで、年表を覚えようとしていませんか? 法律は「いつできたか」ではなく「どのような背景で、どのような内容だったか」を覚えていないと解けません。 時代背景と一緒に、流れで覚えていきましょう。
今回のテーマは「老人福祉法(1963年)から、高齢化率7%(1970年)まで」です。
老人福祉法ができる前は、生活保護法が支えていた
老人福祉法ができる前、高齢者の生活は生活保護法の枠組みの中で支えられていました。つまり、高齢者は「貧困状態」になっているのであれば、恤救規則や救護法、旧生活保護法、新生活保護法での救済対象となっていましたが、高齢者を対象とする独立した法律は制定されてこなかったということです。この流れから、生活保護法の保護施設の一つだった養老施設に、経済的な理由で居宅での生活が難しい高齢者が収容されていました。この養老施設は、1963年の老人福祉法によって「養護老人ホーム」へとそのまま引き継がれます。
このように、高齢者だけを対象とする法律が必要とされた背景には、高度経済成長期の家族の変化があります。平均寿命が延びる一方で核家族化が進み、家庭内で高齢者を支える体制そのものが弱くなっていきました。その結果として、一人暮らしや寝たきりの高齢者が増えてきたのです。
1963年、老人福祉法が制定される
そうして1963年(昭和38年)、老人福祉法が制定されました。老人の福祉に関する原理を明らかにし、老人に対して心身の健康の保持及び生活の安定のために必要な措置を講じることを目的とする法律です。
この法律で規定された内容を、3つに整理しておきましょう。
①老人福祉施設
養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、老人福祉センターなどが、老人福祉施設として規定されました。軽費老人ホームも、この1963年の時点ですでに規定されています。
②老人家庭奉仕員の派遣
老人家庭奉仕員(今のホームヘルパーの前身)は、長野県上田市などが独自に始めた「家庭養護婦派遣制度」という地方自治体の事業がルーツで、1962年に国庫補助の対象となり、この老人福祉法で初めて法律に位置づけられました。
③老人健康診査事業
65歳以上の高齢者を対象とした健康診査事業も、この老人福祉法で規定されています。この健康診査の仕組みは、のちに1982年の老人保健法へと引き継がれていくことになります。
老人福祉法ができた1963年の時点では、当然契約制度は導入されていませんので、大半のサービスは措置として提供されていました。
1970年、高齢化率7%を超える
老人福祉法の制定から7年後の1970年(昭和45年)、日本の高齢化率(65歳以上人口の割合)が7%を超えました。国際的な基準で「高齢化社会」に区分される数字です。同じ1970年、厚生省は社会福祉施設緊急整備5か年計画を策定しています(実施期間は1971〜1975年度)。老人福祉法の施設整備を量的に進めるための計画で、特別養護老人ホームなどの施設が、この計画のもとで増えていきました。税収が右肩上がりで伸びていた高度経済成長期だからこそ実現できた計画で、今のような財源の制約はありませんでした。
| 年 | できごと |
|---|---|
| 1950年 | 生活保護法(現行法)制定。養老施設を規定 |
| 1956年 | 長野県上田市等で家庭養護婦派遣制度(老人家庭奉仕員の前身)が始まる |
| 1961年 | 国民皆保険・皆年金の実現 |
| 1963年 | 老人福祉法 制定(老人福祉施設・老人家庭奉仕員・老人健康診査事業) |
| 1970年 | 高齢化率7%突入(高齢化社会へ)→社会福祉施設緊急整備5か年計画を策定 |
過去問で確認しましょう!
第35回 問題127 選択肢4
住まいと介護の双方のニーズを有する高齢者の増加に対応するため,2000年代の老人福祉法の改正によって軽費老人ホームが創設された。
× 軽費老人ホームは1963年の老人福祉法制定時から規定されている。
第36回 問題127 選択肢1
1950年(昭和25年)の生活保護法では,常時介護を必要とする老人の家庭を訪問する老人家庭奉仕員が規定された。
× 老人家庭奉仕員は生活保護法ではなく1963年の老人福祉法で法定化された。
第36回 問題127 選択肢2
1963年(昭和38年)の老人福祉法では,養護老人ホーム,特別養護老人ホーム,軽費老人ホームを含む,老人福祉施設が規定された。
○
第37回 問題86 選択肢1
1963年(昭和38年)の老人福祉法の制定によって,デイサービスやショートステイを含む在宅福祉サービスが法定化された。
× 在宅福祉サービスの法定化は1990年(福祉八法改正)。1963年の時点では,まだ在宅サービスは法定化されていない。
第35回 問題134
老人福祉法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 法律の基本的理念として,要援護老人の自立支援の重要性が規定されている。
2 老人福祉施設の一つとして,介護老人保健施設が規定されている。
3 やむを得ない事由で介護保険法の保険給付などが利用できない場合,市町村が採ることのできる福祉の措置の一つとして,居宅における介護等が規定されている。
4 市町村社会福祉協議会には,老人福祉センターを設置する義務があることが規定されている。
5 市町村老人福祉計画は,社会福祉法に基づく市町村地域福祉計画と一体のものとして作成されなければならないことが規定されている。
正答:3
1 × 基本理念は「生きがいのある生活の保障」「社会的活動への参加」等。
2 × 介護老人保健施設は介護保険法上の施設。
3 ○ 正答。
4 × 設置義務は規定されていない。
5 × 一体的に作成するのは市町村介護保険計画。
次回予告
次回②は、福祉元年(1973年)から老人保健法(1982年)まで。老人医療費の無料化と、その後のオイルショックによる方針転換を追いかけます。
▼他のシリーズはこちら
高齢者福祉の歴史シリーズ(ただいま全シリーズ準備中)


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