1990年(平成2年)の「福祉八法改正」は、日本の社会福祉における歴史的な大改正です。
改正の目的は主に3つありました。
①「施設から在宅へ」②「市町村への一元化」③「計画的な福祉の推進」という大きな転換を図るためです。
当時の日本
当時の日本は、1970年に高齢化率7%を超える「高齢化社会」となり、1994年の「高齢社会(14%超)」に向けて急速に高齢化が進んでいました。当時の高齢者福祉は施設入所が中心でしたが、急速な高齢化に伴い、財政面や施設増設の限界が顕在化していました。また、「住み慣れた自宅で暮らしたい」という住民のニーズに応えられない構造が問題視されていました。
なぜ改正が行われたのか
こうした背景から、1989年(平成元年)に「ゴールドプラン(高齢者保健福祉推進十か年戦略)」が策定され、ホームヘルパーやデイサービスなどの具体的な整備目標が掲げられました。
しかし、当時の在宅サービスは単なる予算事業に過ぎず、法律上の明確な位置づけ(法定化)がありませんでした。また、施設への入所権限が住民に身近とは言えない都道府県にあった点も課題でした。そこで、制度の基盤を整え、現場の実情に合わせた福祉を実現するために行われたのが福祉八法改正です。
福祉八法とは
福祉八法とは、1990年(平成2年)に成立した「老人福祉法等の一部を改正する法律」(通称・福祉八法改正)によって、まとめて改正された次の8つの法律の総称です。
①老人福祉法 ②身体障害者福祉法 ③精神薄弱者福祉法(現在の知的障害者福祉法) ④児童福祉法 ⑤母子及び寡婦福祉法(現在の母子及び父子並びに寡婦福祉法) ⑥社会福祉事業法(現在の社会福祉法) ⑦老人保健法(現在の高齢者医療確保法) ⑧社会福祉・医療事業団法
この改正によって、主に次の3つの変化が生じました。
在宅福祉サービスの法定化
ゴールドプランの目標達成に向け、ヘルパー、デイサービス、ショートステイなどが、社会福祉事業法の第二種社会福祉事業として正式に規定されました。
念のため、もう少し正確に書いておくと、1963年の老人福祉法制定時から「老人家庭奉仕員」として存在していたホームヘルプが「老人居宅介護等事業」に改称されるとともに、老人デイサービス事業、老人短期入所事業を合わせた在宅3事業が、社会福祉事業法上の「第二種社会福祉事業」として正式に規定されました。
これにより、在宅サービスが法律に基づく事業として位置づけられることになります。
市町村への権限移譲
従来、入所決定(措置権限)は市と都道府県(町村分を代行)が行っていましたが、これが町村へ移譲されたことで、市町村が一括して福祉の実施主体となりました。特別養護老人ホームや養護老人ホーム、身体障害者施設などの入所措置が、住民に一番近い市町村で完結する仕組みへと整えられたのです。
地方公共団体による計画策定の義務化
ゴールドプランのような全国一律の目標ではなく、各自治体が地域のニーズを把握して計画を立てる「老人保健福祉計画(老人福祉法に基づく老人福祉計画と老人保健法に基づく老人保健計画の総称)」の策定が義務付けられました。これにより、福祉行政に計画的な運用が定着することになります。
過去問で理解度を確認しましょう
福祉八法改正に関するものだけ赤字にしています。
第29回 問題127(高齢者に対する支援と介護保険制度)
老人福祉法の展開に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 老人福祉法制定時(1963年(昭和38年))には、特別養護老人ホームは経済的理由により居宅において養護を受けることが困難な老人を収容するものとされていた。
→× 経済的理由による入所は、養護老人ホームです。
2 65歳以上の者に対する健康診査事業は、老人医療費支給制度の導入時(1972年(昭和47年))に法定化された。
→× 1963年の老人福祉法の制定時に法定化されました。
3 高齢者保健福祉推進十か年戦略(1989年(平成元年))を円滑に実施するため、老人福祉計画の法定化を含む老人福祉法の改正(1990年(平成2年))が行われた。
→○ 正答です。ゴールドプランを実施するために、翌年の福祉八法改正が行われました。
4 老人家庭奉仕員派遣制度は、老人福祉法改正時(1990年(平成2年))に、デイサービスやショートステイと共に法定化された。
→× 老人家庭奉仕員派遣制度は、1963年の老人福祉法の制定時です。1990年に法定化されたのはデイサービスとショートステイです。
5 介護保険法の全面施行(2000年(平成12年))に合わせて、老人福祉施設等の入所事務が都道府県から町村に権限移譲された。
→× 1990年の福祉八法改正で権限移譲されました。
第37回 問題86(高齢者福祉)
日本の高齢者福祉制度の発展過程に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 1963年(昭和38年)の老人福祉法の制定によって、デイサービスやショートステイを含む在宅福祉サービスが法定化された。
→× 在宅福祉サービスの法定化は、1990年の福祉八法改正です。
2 1982年(昭和57年)の老人保健法の制定によって、市町村及び都道府県における老人保健福祉計画の策定義務が法定化された。
→× 老人保健福祉計画の策定義務化も、1990年の福祉八法改正です。
3 1997年(平成9年)の介護保険法の制定によって、介護保険の保険者は市町村及び特別区であることが法定化され、併せて広域連合や一部事務組合も保険者になることができるようになった。
→○ 正答です。
4 2005年(平成17年)の「高齢者虐待防止法」の制定によって、使用者(高齢者を雇用する事業主)による虐待が高齢者虐待の定義の一つとして、法定化された。
→× 高齢者虐待防止法の定義は、養護者によるものと養介護施設従事者等によるものです。使用者による虐待を定めているのは障害者虐待防止法です。
5 2023年(令和5年)の「認知症基本法」の制定によって、国民に対して、認知症の人を不当に差別する行為を禁止することが法定化された。
→× 認知症基本法に、差別行為を禁止する規定はありません。共生社会の実現を推進することを目的とした法律です。
→オレンジプランから認知症基本法策定まで流れはこちらをご参照ください

上記2問の問題は「高齢者」の分野での出題になっています。高齢者分野では歴史の問題が1問出題される年が多いです。その中でも今回は福祉八法改正に焦点をあてて解説しました。
歴史の勉強の仕方にはコツがあります。こちらをご参照ください。
今回もこの考え方にそって解説しています!



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