障害者福祉の歴史シリーズ
語呂合わせで、年表を覚えようとしていませんか。法律は、いつできたかではなく、どのような背景で、どのような内容だったかを覚えていないと解けません。時代背景と一緒に、流れで覚えていきましょう。
障害者福祉の歴史は全4回です。
→①戦後から福祉六法体制へ
→②障害者基本法の歴史
→③支援費制度から障害者自立支援法へ
→障害者福祉の歴史④障害者権利条約の批准が与えた影響(この記事)
日本の制度史とあわせて、国連の流れも押さえておきましょう。
→国際障害者年とは?完全参加と平等|権利宣言から障害者権利条約までの流れ
歴史の勉強の仕方についての記事はこちら
→歴史の勉強の仕方
今回のテーマは条約の批准と国内法の整備
障害者福祉の歴史、第4回は障害者権利条約の批准です。2006年の障害者権利条約の採択から、2014年の批准までの国内法整備を確認します。この時代の中心は、条約の採択、国内法の整備、2014年の批准です。
障害者権利条約は何を求めたのか
障害者権利条約は、2006年(平成18年)に国連総会で採択されました。この条約で重視されたのは3つです。
①私たちのこと抜きに決めないこと
②差別の禁止
③合理的配慮
Nothing about us without us(私たちのことを、私たち抜きに決めないで)
条約の作成過程には、障害のある人自身が参加しました。障害者を保護の対象としてではなく、権利の主体として位置づける。これがこの条約の土台です。
差別の禁止と合理的配慮
条約では、合理的配慮が提供されないことも差別に含まれると定義しました。障害のある人がほかの人と平等に権利を行使できるよう、必要で適当な変更や調整を行うことを締約国に求めています。
日本は翌2007年に署名していますが、批准したのは2014年(平成26年)です。その間に多くの法改正を行い、7年かけて条約を批准しました。
条約の採択と発効、署名と批准の違いについての記事はこちら
→条約の読み方|採択・署名・批准・発効、そして留保
条約批准への道
批准までの間に、改正または制定された法律は、次の4つです。
国内法整備① 障害者基本法改正(2011年)
まず2011年(平成23年)、障害者基本法が改正されました。障害者の定義に社会的障壁が加わり、社会モデルの考え方が反映されました。合理的配慮の考え方もここで入りました。
基本法の歴史の全体は②で整理しています。
→障害者福祉の歴史②障害者基本法の歴史
同じ2011年には、障害者虐待防止法も成立しています(2012年施行)。養護者、障害者福祉施設従事者等、使用者による虐待を対象とし、市町村障害者虐待防止センターが規定されました。条約の批准に向けた障害者制度改革の流れの中で成立した法律です。
障害者虐待防止法についての記事はこちら
→障害者虐待防止法をわかりやすく|通報先・障害者の定義・虐待類型
国内法整備② 障害者総合支援法(2012年)
2012年(平成24年)、障害者自立支援法が障害者総合支援法に改正、改称されました(2013年施行)。障害者の範囲に難病等が加わり、障害程度区分は障害支援区分に改められました。③で見た自立支援法の課題を引き継ぎ、見直した法律です。
障害者総合支援法の改正の経緯についての記事はこちら
→障害者総合支援法の改正経緯年表で整理|応能負担へ・発達障害者を対象者へ明記
支援費制度から自立支援法までの流れは③で扱っています。
→障害者福祉の歴史③支援費制度から障害者自立支援法へ
国内法整備③ 障害者差別解消法(2013年)
2013年(平成25年)、障害者差別解消法が成立しました(2016年施行)。不当な差別的取扱いの禁止と、合理的配慮の提供を定めた法律です。②で見たとおり、障害者基本法にはすでに2004年から差別禁止の理念がありました。その理念を具体化する法律として位置づけられています。
障害者差別解消法についての記事はこちら
→障害者差別解消法の不当な差別的取扱いと合理的配慮|障害者の定義・環境の整備・対応指針
国家試験では、次のように出題されました。
○「「障害者差別解消法」(2013年(平成25年))では、「障害者」について、障害者基本法と同様の定義がなされた。」(第27回問題56)→障害者差別解消法の障害者の定義は、障害者基本法と同じです。
差別解消法には、障害者差別解消支援地域協議会の規定があります。協議会は国家試験で問われています。協議会についての記事はこちら
→福祉の「協議会」を整理する
国内法整備④ 障害者雇用促進法改正(2013年)
同じ2013年(平成25年)には、障害者雇用促進法も改正されました。雇用の分野における障害者差別の禁止と、事業主に対する合理的配慮の提供義務が定められました(この部分は2016年施行)。日常生活や社会生活の一般的な場面をカバーするのが差別解消法、雇用と労働の場面をカバーするのが雇用促進法です。
さらに、精神障害者が法定雇用率の算定基礎に加えられました(2018年4月施行)。それまで算定基礎は身体障害者と知的障害者で、精神障害者は雇用すれば実雇用率に算入できるものの、算定基礎には入っていませんでした。この改正により、三障害すべてが法定雇用率の算定基礎に入りました。
障害者雇用促進法の改正の経緯についての記事はこちら
→障害者雇用促進法の改正の経緯|身体障害者から知的障害者・精神障害者へ広がった雇用義務
障害者優先調達推進法についての記事はこちら
→障害者優先調達推進法とは?優先調達の対象と国等の義務
国家試験では、次のように出題されました。
○「国は、障害者就労施設、在宅就業障害者及び在宅就業支援団体から優先的に物品等を調達するよう努めなければならない。」(第34回問題62)→障害者優先調達推進法の内容です。
×「国や地方公共団体は、法定雇用率を上回るよう障害者の雇用を義務づける障害者雇用率制度の対象外である。」(第34回問題62)→国や地方公共団体も障害者雇用率制度の対象です。
×「事業主は、身体障害者及び知的障害者を雇用する法的義務を負うが、精神障害者については雇用するよう努めればよい。」(第34回問題62)→2018年4月から、精神障害者も雇用義務の対象です。
批准(2014年)
こうした国内法の整備を終えて、2014年(平成26年)1月、日本は障害者権利条約を批准しました。世界で141番目の締約国です。
すっきり整理 批准までの流れ
シリーズはここまでです
障害者福祉の歴史シリーズは、戦後から条約の批准までの4回です。①から順に読むと、縦割りで始まった制度が一つにまとまり、権利の考え方に変わっていった流れを確認できます。
→①戦後から福祉六法体制へ
障害者福祉の歴史の一問一答についての記事はこちら
→障害者福祉の歴史の一問一答(30問)|戦後・1990年代・2010年代以降
ほかの分野の歴史の記事はこちら
→歴史の記事マップ
過去問を解いてみましょう
第34回 障害者に対する支援と障害者自立支援制度 問題62
「障害者雇用促進法」及び「障害者優先調達推進法」に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 国は、障害者就労施設、在宅就業障害者及び在宅就業支援団体から優先的に物品等を調達するよう努めなければならない。
2 国や地方公共団体は、法定雇用率を上回るよう障害者の雇用を義務づける障害者雇用率制度の対象外である。
3 事業主は、障害者就労施設から物品を調達することで障害者雇用義務を履行したとみなすことができる。
4 事業主は、在宅就業支援団体を通じて在宅就業障害者に仕事を発注することで障害者雇用義務を履行したとみなすことができる。
5 事業主は、身体障害者及び知的障害者を雇用する法的義務を負うが、精神障害者については雇用するよう努めればよい。
(注)1 「障害者雇用促進法」とは、「障害者の雇用の促進等に関する法律」のことである。
2 「障害者優先調達推進法」とは、「国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律」のことである。
解説
1→○ 障害者優先調達推進法の内容です。国等は優先的に物品等を調達するよう努めなければなりません。
2→× 国や地方公共団体も障害者雇用率制度の対象です。
3→× 物品を調達することで雇用義務を履行したとみなす仕組みはありません。
4→× 在宅就業障害者への発注は、障害者雇用納付金の調整の対象になりますが、雇用義務を履行したとみなすものではありません。
5→× 2018年4月から、精神障害者も雇用義務の対象です。
第27回 障害者に対する支援と障害者自立支援制度 問題56
障害児者福祉制度の歴史的展開に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 精神薄弱者福祉法(1960年(昭和35年))において、ノーマライゼーションの促進が目的規定に明記された。
2 重度精神薄弱児扶養手当法(1964年(昭和39年))の制定当初から、重度身体障害児も支給対象とされていた。
3 国際障害者年(1981年(昭和56年))を契機として、重症心身障害児施設が制度化された。
4 障害者自立支援法(2005年(平成17年))により、身体障害者福祉法は廃止された。
5 「障害者差別解消法」(2013年(平成25年))では、「障害者」について、障害者基本法と同様の定義がなされた。
解説
1→× 精神薄弱者福祉法の目的にノーマライゼーションの促進は書かれていません。この法律が進めたのは入所施設の整備です。
2→× 制定当初の対象は重度の知的障害児です。重度身体障害児が加わったのは1966年の改正で、法律名も特別児童扶養手当法に改められました。
3→× 重症心身障害児施設が児童福祉法に位置づけられたのは1967年(昭和42年)です。国際障害者年より前です。
4→× 身体障害者福祉法は廃止されていません。現在も続いています。
5→○ 障害者差別解消法の障害者の定義は、障害者基本法と同じです。


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