ハラスメントを規定している法律
近年、ハラスメントという言葉はさまざまな場面で使われていて、パワハラ、セクハラ、マタハラ、パタハラ、ケアハラ、カスハラ、モラハラ、アカハラ、スメハラ等の呼び方があります。このうち法律で規定され、事業主に防止のための措置が義務付けられているものは、次のものです。
パワーハラスメントとカスタマーハラスメントを規定しているのが労働施策総合推進法(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律)で、1966年(昭和41年)に雇用対策法として制定され、2018年(平成30年)の働き方改革関連法によって現在の名称に改められました。セクシュアルハラスメントと妊娠・出産等に関するハラスメントは男女雇用機会均等法、育児休業等に関するハラスメントは育児・介護休業法が規定しています。
行為の内容によっては、パワーハラスメントとして措置義務の対象になったり、民法上の不法行為として損害賠償の対象になったりします。
パワーハラスメントの3つの要素と6つの類型
パワーハラスメントは、次の3つをすべて満たす言動です。
①職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であること、
②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものであること、
③労働者の就業環境が害されるものであること
業務上の必要性があり、その範囲を超えていない指導は、パワーハラスメントにあたりません。
指針は、パワーハラスメントの代表的な言動として6つの類型を示しています。身体的な攻撃、精神的な攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害の6つです。
事業主が講じなければならない措置
ハラスメントの種類ごとに根拠となる法律は分かれていますが、事業主が講じなければならない措置は、いずれもほぼ共通しています。指針が示しているのは次の内容です。
①ハラスメントを行ってはならないという方針と、行為者への対処の内容を就業規則等に定め、労働者に周知し、啓発すること。
②相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知し、相談に適切に対応できる体制を整備すること。
③相談があったときは、事実関係を迅速かつ正確に確認し、被害を受けた労働者への配慮と行為者への措置を適正に行い、再発防止に向けた措置を講ずること。
④相談者や行為者等のプライバシーを保護し、相談したことや事実関係の確認に協力したことを理由として不利益な取扱いをしないことを定め、労働者に周知し、啓発すること。
妊娠・出産等に関するハラスメントと育児休業等に関するハラスメントについては、これらに加えて、業務体制の整備等、ハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置を講ずることとされています。
措置を講じない事業主に対しては、厚生労働大臣が助言、指導、勧告を行い、勧告に従わない場合には企業名を公表することができます(この規定は障害者の雇用率制度に似ていますね)。
2026年10月~施行
2025年(令和7年)6月に労働施策総合推進法等が改正され、2026年(令和8年)10月1日から、カスタマーハラスメントと就職活動等セクシュアルハラスメントについても、事業主に措置が義務付けられます。
カスタマーハラスメントは、顧客等の言動であって、労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されるものをいいます。顧客に限らず、取引先の担当者や施設の利用者等、業務に関連して接する相手方の言動が対象で、電話やインターネット上の言動も含まれます。事業主は、方針の明確化と周知啓発、相談体制の整備、事後の対応に加えて、被害を防ぐための措置を講じます。
就職活動等セクシュアルハラスメントは、求職者に対する性的な言動です。就職活動中の学生に対して、面接や説明会、OB訪問の場で行われるものが問題とされてきましたので、雇用している労働者に限らず、求職者に対する言動も措置の対象とされました。
この措置義務は、労働者を1人でも雇用している事業主に課されます。中小企業の猶予期間は設けられていません。
過去問を解いてみましょう
第33回 問題31(現在の「社会福祉の原理と政策」)
次のうち、働き方改革とも関連する「労働施策総合推進法」の内容の説明として、適切なものを2つ選びなさい。
1 国は、日本人の雇用確保のため不法に就労する外国人への取締りを強化しなければならない。
2 国は、子を養育する者が離職して家庭生活に専念することを支援する施策を充実しなければならない。
3 事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、必要な措置を講じなければならない。
4 国は、労働者が生活に必要な給与を確保できるよう労働時間の延長を容易にする施策を充実しなければならない。
5 事業主は、事業規模の縮小等に伴い離職を余儀なくされる労働者について、求職活動に対する援助その他の再就職の援助を行うよう努めなければならない。
(注)「労働施策総合推進法」とは、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(旧雇用対策法)のことである。
解説
1 × 定められているのは、外国人の雇用管理の改善と再就職の促進に関する事業主の努力義務です。
2 × 定められているのは、職業生活と家庭生活との両立を図るための施策です。
3 ○ パワーハラスメントの措置義務です。
4 × 定められているのは、労働時間の短縮その他の労働条件の改善を図るための施策です。
5 ○ 再就職の援助を行うことが事業主の努力義務とされています。
第34回 問題125(組織と経営)
職場のメンタルヘルスに関する次の記述のうち,正しいものを 1 つ選びなさい。
1 パワーハラスメントの典型的な例には,優越的な関係を背景として行われた,身体的・精神的な攻撃,人間関係からの切り離し,過大・過小な要求などが含まれる。
2 時間外・休日労働について,月 200 時間を超えなければ,事業者には健康障害を予防するための医師による面接指導を行う義務はない。
3 全ての事業場には産業医を置かなければならない。
4 常時 50 人以上の労働者を使用する事業所を複数運営する組織であっても,衛生委員会は本部(本社)に設置すればよい。
5 「ストレスチェック」の結果は,事業者から労働者に対して通知することが義務づけられている。
(注) ここでいう「ストレスチェック」とは,労働安全衛生法で定める「労働者に対して行う心理的な負担の程度を把握するための検査」のことである。
解説
1 ○ パワーハラスメントの6つの類型のうち、身体的な攻撃、精神的な攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求です。
2 × 面接指導の対象は、時間外・休日労働が月80時間を超え、疲労の蓄積が認められる労働者です。
3 × 産業医の選任が義務付けられるのは、常時50人以上の労働者を使用する事業場です。
4 × 衛生委員会は、常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに設置します。
5 × ストレスチェックの結果は、検査を行った医師等から労働者に直接通知します。
第35回 問題31(現在の「社会福祉の原理と政策」)
男女雇用機会均等政策に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 常時雇用する労働者数が101人以上の事業主は、女性の活躍に関する一般事業主行動計画を策定することが望ましいとされている。
2 セクシュアルハラスメントを防止するために、事業主には雇用管理上の措置義務が課されている。
3 総合職の労働者を募集・採用する場合は、理由のいかんを問わず、全国転勤を要件とすることは差し支えないとされている。
4 育児休業を取得できるのは、期間の定めのない労働契約を結んだフルタイム勤務の労働者に限られている。
5 女性労働者が出産した場合、その配偶者である男性労働者は育児休業を取得することが義務づけられている。
解説
1 × 常時雇用する労働者が101人以上の事業主は、一般事業主行動計画の策定が義務付けられています。
2 ○ 男女雇用機会均等法が定める事業主の措置義務です。
3 × 合理的な理由なく全国転勤を要件とすることは、間接差別として禁止されています。
4 × 有期雇用労働者も、要件を満たせば育児休業を取得できます。
5 × 男性労働者の育児休業は、本人が申し出て取得するもので、義務ではありません。
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