背景と責任者
災害対策基本法は、1961年(昭和36年)に伊勢湾台風をきっかけとして制定された法律です。それまでも災害救助法などの個別の法律はありましたが、国や自治体の役割をまとめて定めた法律がありませんでした。この法律では、主に誰が責任を持つのかと、何を準備しておくのかを規定しています。
国は、防災に関する総合的な施策をつくり、実施します(第3条)。
地方公共団体は、地域の実情に応じた防災施策を実施します(第5条)。
市町村は、市町村地域防災計画を策定します(第42条)。
住民は、自ら災害に備え、自発的な防災活動に参加するよう努めるものとされています(第7条第3項)。
ボランティアは、指示に従う存在ではありません
第5条の3では、国及び地方公共団体は、ボランティアによる防災活動が災害時において果たす役割の重要性に鑑み、その自主性を尊重しつつ、ボランティアとの連携に努めなければならないと規定しています。あくまでも自主性を尊重しつつ連携する相手方としてボランティアがあるのであり、指揮命令監督の関係ではありません。
ボランティアが注目されたのは、1995年(平成7年)の阪神・淡路大震災で、「ボランティア元年」と呼ばれます。ただ、活動を担う団体には法律上の位置づけがありませんでした。そこで1998年(平成10年)に制定されたのが、特定非営利活動促進法(NPO法)です。
伊勢湾台風があって災害対策基本法ができ、阪神・淡路大震災があってNPO法ができたということです。
要配慮者と避難行動要支援者
速やかな避難を目指して、この法律では要配慮者及び避難行動要支援者について規定しています。要配慮者は、高齢者、障害者、乳幼児その他の特に配慮を要する者をいいます(第8条第2項第15号)。
避難行動要支援者は、要配慮者のうち、災害が発生し、又は災害が発生するおそれがある場合に自ら避難することが困難な者であって、その円滑かつ迅速な避難の確保を図るため特に支援を要するものをいいます(第49条の10第1項)。
要配慮者という大きな枠があり、そのなかで自力での避難が難しい人が避難行動要支援者です。高齢者だから全員が避難行動要支援者になるわけではありません。
*国家試験は「言葉の定義」が大切です。「〇〇者とは」という定義などは特に注意しましょう。「ヤングケアラーとは」「ひきこもりとは」等も同様です。
要配慮者 > 避難行動要支援者
避難行動要支援者名簿
避難行動要支援者について、市町村長は、避難行動要支援者名簿を作成しなければなりません(第49条の10第1項)。名簿に載せるのは、氏名、生年月日、性別、住所又は居所、電話番号その他の連絡先、避難支援等を必要とする理由などです(同条第2項)。
名簿は、実際に避難を助ける人の手元になければ意味がないので必要に応じて関係者に提供されます。
平常時は、本人の同意を得たうえで、消防機関、都道府県警察、民生委員、市町村社会福祉協議会、自主防災組織などの避難支援等関係者に提供します(第49条の11第2項)。
一方、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、避難行動要支援者の生命又は身体を災害から保護するために特に必要があるときは、本人の同意がなくても提供できます(同条第3項)。
個別避難計画
名簿は、「誰が支援を必要としているか」の一覧です。名簿があると、それが何人いるかどこに住んでいるかまでは確認できるかもしれませんが、実際の避難では、その人を誰が、どの経路で、どこへ連れて行くのかが決まっていなければ動けません。
そこで市町村長は、避難行動要支援者ごとに、個別避難計画を作成するよう努めなければなりません(第49条の14第1項)。令和3年(2021年)の改正で加わった規定です。
計画に記載するのは、避難支援等実施者の氏名や住所、避難施設その他の避難場所、避難路その他の避難経路などです(同条第3項)。
| 避難行動要支援者名簿 | 個別避難計画 | |
|---|---|---|
| 作成者 | 市町村長 | 市町村長 |
| 作成 | 義務(第49条の10) | 努めなければならない(第49条の14) |
| 内容 | 誰が支援を必要としているか | 誰が、どの経路で、どこへ避難させるか |
| 平常時の情報提供 | 本人の同意が必要 | 本人及び避難支援等実施者の同意が必要 |
| 災害時の情報提供 | 同意がなくても提供できる | 同意がなくても提供できる |
| 根拠 | 第49条の10、第49条の11 | 第49条の14、第49条の15 |
国試での出題を確認しましょう
第35回 問題39(1・2・3がこの記事に関する問題です)
災害時における支援体制に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 災害対策基本法は,国及び地方公共団体が,ボランティアによる防災活動を監督し,その指揮命令下で活動するよう指導しなければならないと規定している。
2 災害対策基本法は,市町村長が避難行動要支援者ごとに,避難支援等を実施するための個別避難計画を作成するよう努めなければならないと規定している。
3 災害対策基本法は,本人が同意している場合でも,市町村長が作成した避難行動要支援者の名簿情報を避難支援等関係者に提供してはならないと規定している。
4 「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」(2021年(令和3年)改定(内閣府))は,福祉避難所は社会福祉施設でなければならないとしている。
5 「災害時の福祉支援体制の整備に向けたガイドライン」(厚生労働省)は,国が主に福祉避難所において,災害時要配慮者の福祉支援を行う災害派遣福祉チームを組成するとしている。
解説
1→× 第5条の3では、ボランティアの自主性を尊重しつつ連携に努めるとされており、監督や指揮命令の関係ではありません。
2→○ 個別避難計画の作成は、市町村長の努力義務として規定されています。
3→× 平常時は、本人の同意を得たうえで避難支援等関係者に提供できます。
4→× 社会福祉施設に限らず、公民館や小中学校の一室も福祉避難所になります。
5→× 災害派遣福祉チームを組成するのは国ではなく都道府県です。

第38回 問題49
地域福祉における支援・配慮を要する者に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 子ども・若者育成支援推進法に基づくヤングケアラーとは,家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる18歳未満の者をいう。
2 「困難女性支援法」における困難な問題を抱える女性とは,犯罪等により害を被った女性及びその家族又は遺族をいう。
3 「住宅セーフティネット法」における住宅確保要配慮者とは,生活困窮者自立支援制度による住居確保給付金の支給対象にならない者をいう。
4 災害対策基本法における避難行動要支援者とは,都道府県が作成する避難行動要支援者名簿への登載を希望する者をいう。
5 「ひきこもり支援ハンドブック」におけるひきこもり支援対象者とは,社会的に孤立し,孤独を感じている状態にある人や,様々な生きづらさを抱えている状態の人をいう。
(注)1 「困難女性支援法」とは,「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」のことである。
2 「住宅セーフティネット法」とは,「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」のことである。
3 「ひきこもり支援ハンドブック」とは,厚生労働省社会福祉推進事業「ひきこもり支援にかかる支援マニュアルの策定に向けた調査研究事業」の成果物であり,2025年(令和7年)に発出された「ひきこもり支援ハンドブック〜寄り添うための羅針盤〜」のことである。
解説
1→× 子ども・若者育成支援推進法におけるヤングケアラーの定義に、18歳未満という年齢の限定はありません。
2→× 困難女性支援法における困難な問題を抱える女性は、性的な被害、家庭の状況、地域社会との関係性その他の様々な事情により日常生活又は社会生活を営むうえで困難な問題を抱える女性をいい、犯罪被害者に限定されていません。
3→× 住宅確保要配慮者は、低額所得者、被災者、高齢者、障害者、子育て世帯など住宅の確保に特に配慮を要する者をいい、住居確保給付金の支給対象にならない者という定義ではありません。
4→× 避難行動要支援者名簿を作成するのは市町村長であり、都道府県ではありません。また、登載を希望する者という定義でもありません。
5→○ ひきこもり支援ハンドブックにおける支援対象者は、社会的に孤立し孤独を感じている状態にある人や、様々な生きづらさを抱えている状態の人とされています。


コメント