近年、防災対策の出題が定番化しています。第35回から第38回まで、4回連続の出題です。第36回は相談援助の理論と方法からの出題でした。どの科目で出題されるかが固定されておらず、どこで出てもおかしくない定番の知識になりつつあるということですね。
内容そのものは、避難行動要支援者、個別避難計画、指定福祉避難所、DWAT、BCP、災害ボランティアセンターなど、聞き慣れない言葉は並びますが、一つひとつ見ていけば、そんなに複雑な話ではないのです。
この分野の難しさは、別のところにあります。
どこまで勉強すればいいのか、範囲が見えないことです。
たとえば、災害派遣福祉チーム(DWAT)。これ、法律には出てきません。厚生労働省のガイドラインです。福祉避難所の受入対象者をあらかじめ決めておくかどうかも、内閣府のガイドラインに書いてあります。災害ボランティアセンターにいたっては、災害救助法にも社会福祉法にも、設置の規定がありません。
つまり、条文を探しても、過去問を解いても出てこない単語が、当日「初めて見る単語」として出てくる。これが、この分野を難しいと感じる要因です。「勉強しても、まだ何かあるんじゃないか」と不安になってしまうのですよね。
なので今日は、法律に書いてあることと、法律には書いていないけれど出題されたことを分けて紹介します。
そして最後に、令和7年の最新の法改正にも触れます。
災害対策基本法
一番の土台となる法律が、1961年(昭和36年)に伊勢湾台風をきっかけに制定された災害対策基本法です。それまでも災害救助法などの個別の法律はありましたが、国や自治体の役割をまとめて定めた法律がありませんでした。
主に誰が責任を持つのかと、何を準備しておくのかを規定しています。
誰が責任を持つのか
国は防災に関する総合的な施策をつくり、実施します(第3条)。
地方公共団体は、地域の実情に応じた防災施策を実施します(第5条)。
市町村は、市町村地域防災計画を策定します(第42条)。
住民にも責務があります。自ら災害に備え、自発的な防災活動に参加するよう努める(第7条第3項)。
ボランティアは、指示に従う存在ではありません
第5条の3では、国及び地方公共団体は、ボランティアによる防災活動が災害時において果たす役割の重要性に鑑み、その自主性を尊重しつつ、ボランティアとの連携に努めなければならないと規定しています。あくまでも自主性を尊重しつつ連携する相手方としてボランティアがあるのであり、指揮命令監督の関係ではありません。
ボランティアが注目されたのは、1995年(平成7年)の阪神・淡路大震災で、「ボランティア元年」と呼ばれます。ただ、活動を担う団体には法律上の位置づけがありませんでした。そこで1998年(平成10年)に制定されたのが、特定非営利活動促進法(NPO法)です。
伊勢湾台風があって災害対策基本法ができ、阪神・淡路大震災があってNPO法ができました。
法律の制定背景が似ていますね。
要配慮者と避難行動要支援者
速やかな避難を目指して、この法律では要配慮者及び避難行動要支援者について規定しています。
要配慮者は、高齢者、障害者、乳幼児その他の特に配慮を要する者をいいます(第8条第2項第15号)。
避難行動要支援者は、要配慮者のうち、災害が発生し、又は災害が発生するおそれがある場合に自ら避難することが困難な者であって、その円滑かつ迅速な避難の確保を図るため特に支援を要するものをいいます(第49条の10第1項)。
制度の勉強をするときは、言葉の定義が大切です

要配慮者という大きな枠があり、そのなかで自力での避難が難しい人が避難行動要支援者です。高齢者だから全員が避難行動要支援者になるわけではありません。
要配慮者 > 避難行動要支援者
避難行動要支援者名簿
上記避難行動要支援者について、市町村長は、避難行動要支援者名簿を作成しなければなりません(義務)(第49条の10第1項)。名簿に載せるのは、氏名、生年月日、性別、住所又は居所、電話番号その他の連絡先、避難支援等を必要とする理由などです(同条第2項)。
また、名簿は、つくって役所にしまっておくためのものではありません。実際に避難を助ける人の手元になければ意味がないからです。平常時は、本人の同意を得たうえで、消防機関、都道府県警察、民生委員、市町村社会福祉協議会、自主防災組織などの避難支援等関係者に提供します(第49条の11第2項)。
一方、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、避難行動要支援者の生命又は身体を災害から保護するために特に必要があるときは、本人の同意がなくても提供できます(同条第3項)。
個別避難計画
名簿は、「誰が支援を必要としているか」の一覧です。名簿があると、それが何人いるかどこに住んでいるかまでは確認できるかもしれませんが、実際の避難では、その人を誰が、どの経路で、どこへ連れて行くのかが決まっていなければ動けません。
そこで市町村長は、避難行動要支援者ごとに、個別避難計画を作成するよう努めなければなりません(第49条の14第1項)。令和3年(2021年)の改正で加わった規定です。
計画に記載するのは、避難支援等実施者の氏名や住所、避難施設その他の避難場所、避難路その他の避難経路などです(同条第3項)。
| 避難行動要支援者名簿 | 個別避難計画 | |
|---|---|---|
| 作成者 | 市町村長 | 市町村長 |
| 作成 | 義務(第49条の10) | 努めなければならない(第49条の14) |
| 内容 | 誰が支援を必要としているか | 誰が、どの経路で、どこへ避難させるか |
| 平常時の情報提供 | 本人の同意が必要 | 本人及び避難支援等実施者の同意が必要 |
| 災害時の情報提供 | 同意がなくても提供できる | 同意がなくても提供できる |
| 根拠 | 第49条の10、第49条の11 | 第49条の14、第49条の15 |
災害対策基本法以外の「災害対策」
ここからは災害対策基本法以外に何かしらの根拠がある防災関連のものを集めました。防災に関する規定は、災害対策基本法だけにあるわけではありません。ほかの法律にも、政令にも、ガイドラインにもあり、それも意外とよく出題されているので要注意です。
福祉避難所
一般の避難所では生活に支障をきたす要配慮者のための避難所です。
出題されたポイント
①社会福祉施設に限らず、公民館や小中学校の一室も福祉避難所になる
②ホテルや旅館を活用することも可能
③受入対象者をあらかじめ決めて公示することもできる
DWAT(災害派遣福祉チーム)
避難所での生活は想像以上に過酷です。
そこで登場するのが、避難所で高齢者や障害者などの福祉支援を行うDWATです。社会福祉士、介護福祉士、介護支援専門員、看護師、保育士などで構成され、都道府県が組成します。派遣先は福祉避難所に限らず、一般避難所や在宅避難者への支援も含みます。
*医療のDMATは保健医療の科目で出題されます。DWATのWはWelfareです。DMATのMはMedicalです。DMATが命を救うチーム、DWATが生活を支えるチームということですね。
災害ボランティアセンター
被災地でボランティアの受入れと調整を行う拠点です。ボランティアの受付、被災者ニーズの把握、マッチング、活動先の調整、安全管理を行います。市町村社会福祉協議会が設置・運営することが一般的ですが、災害救助法にも社会福祉法にも、設置を義務づけた規定はありません。
ただし令和2年から、災害ボランティアセンターが行う救助とボランティア活動の調整事務に係る費用の一部が、災害救助法による国庫負担の対象となっています。
BCP(業務継続計画)
災害や感染症が起きても、サービスを止めない、止まっても早く再開するための計画です。職員の参集方法、連絡体制、利用者の安否確認の方法、優先して継続する業務などをあらかじめ定めます。
介護サービス事業者には、令和6年(2024年)4月から策定が義務づけられています。
被災者生活再建支援制度
被災者生活再建支援法に基づく制度で、住宅が全壊するなどの被害を受けた世帯に支援金を支給します。支援金は、住宅の被害の程度に応じた基礎支援金と、住宅の再建方法に応じた加算支援金に分かれます。
対象になるのは、全壊10世帯以上の被害が発生した市町村、全壊100世帯以上の被害が発生した都道府県などです。
災害時外国人支援情報コーディネーター(総務省)
災害時に地方公共団体等が設置する災害多言語支援センター等の拠点で、行政からの災害・生活支援情報を整理し、避難所等にいる外国人被災者のニーズとマッチングを行う人材です。平成30年度から総務省が養成研修を実施。対象は自治体職員または地域国際化協会職員です。コーディネーターの育成は防災基本計画(災害対策基本法に基づいて策定される基本計画)に総務省の施策として位置づけられています。
第37回では、「外国語を母語とする者を充てる」という要件があるかのように書かれた選択肢が出題されましたが、そのような要件はありません。
令和7年の改正
令和7年(2025年)6月、以下の2点が改正されました。
①災害救助法の救助の種類の見直し
救助の種類に「福祉サービスの提供」が加わりました。
災害救助法は1947年(昭和22年)制定で、救助の種類は同法第4条に列挙されています。避難所の設置、応急仮設住宅の供与、食品の給与、被服・寝具の給与、医療・助産、被災者の救出、住宅の応急修理、生業に必要な資金の給与、埋葬などです。ここに新たな種類が加わったのが、令和7年(2025年)の改正による「福祉サービスの提供」です。制定から約70年、救助のメニューが追加されるのは初めてでした。それだけ大きな法改正だということです!
②被災者援護協力団体の登録制度の創設
災害時にボランティア活動を行う団体を、あらかじめ内閣総理大臣が登録する制度ができました。
<名簿・登録の仕組みは、いろいろな制度にあります>
避難行動要支援者名簿。被災者援護協力団体の登録。ここまで見てきただけでも、名簿を作る規定が2つ出てきました。名簿や登録の仕組みは、防災に限らずいろいろな制度にあります。防災以外の例も挙げておきます。
第37回 問題23
多文化共生アドバイザー(総務省)多文化共生の取組で先進的な知見・ノウハウを持つ、地方公共団体の担当部署または職員を登録する制度です。2019年(平成31年)4月開始。登録されるのは外部の専門家ではなく、実績のある自治体そのもの(部署または職員)で、これから取り組む自治体が名簿を通じて助言を求められます。名簿の作成・公表は総務省が行います。
国家試験一問一答
問1 災害対策基本法は、市町村長が避難行動要支援者ごとに、避難支援等を実施するための個別避難計画を作成するよう努めなければならないと規定している。
→○ 個別避難計画の作成は、努めなければならないとされています。
問2 災害対策基本法は、本人が同意している場合でも、市町村長が作成した避難行動要支援者の名簿情報を避難支援等関係者に提供してはならないと規定している。
→× 平常時は、本人の同意があれば提供できます。
問3 「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」(2021年(令和3年)改定(内閣府))は、福祉避難所は社会福祉施設でなければならないとしている。
→× 公民館や小中学校の一室も福祉避難所になります。
問4 「災害時の福祉支援体制の整備に向けたガイドライン」(厚生労働省)は、国が主に福祉避難所において、災害時要配慮者の福祉支援を行う災害派遣福祉チームを組成するとしている。
→× 組成するのは都道府県です。
問5 避難行動要支援者には、個別に訪問して避難方法を具体的に指導する。
→× 本人への指導ではなく、誰がどの経路でどこへ避難させるかを決めておくことが必要です。それが個別避難計画です。
令和7年の法改正に関する演習問題
問1 災害救助法の救助の種類に、福祉サービスの提供が加えられた。
→○ 約70年ぶりの大改正でしたね
問2 被災者援護協力団体の登録制度が創設された。
→○ 登録するのは「内閣総理大臣」です
最後に・・・
災害関連の問題は、科目に関わらず頻出のテーマとなっています。
そして令和7年に改正があったという点も、気になります。
最近は改正されてすぐに出題される傾向が高いので、覚えておいてください。
また、防災と支援会議をミックスした問題も出題されています。防災のことだけ覚えていても解けません。支援会議についてはこちらに詳しい記事がありますので、ご参照ください。



コメント