災害対策基本法以外の災害対策
災害に関する出題は、災害対策基本法だけを覚えていても対応できません。福祉避難所は内閣府のガイドライン、DWATは厚生労働省のガイドライン、災害ボランティアセンターにいたっては設置の法的根拠そのものがありません。ここでは、災害対策基本法以外に根拠がある制度を整理し、令和7年の法改正まで確認します。
福祉避難所
一般の避難所では生活に支障をきたす要配慮者のための避難所です。根拠は内閣府の「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」で、2021年(令和3年)に改定されています。
出題されたポイントは3つあります。
・社会福祉施設に限らず、公民館や小中学校の一室も福祉避難所になること。
・ホテルや旅館を活用することも可能であること。
・そして令和3年の改定により、受入対象者をあらかじめ特定して公示することができるようになったことです。
DWAT(災害派遣福祉チーム)
避難所で高齢者や障害者などへの福祉支援を行うチームです。根拠は厚生労働省の「災害時の福祉支援体制の整備に向けたガイドライン」(2018年)で、法律ではありません。組成するのは都道府県です。
社会福祉士、介護福祉士、介護支援専門員、精神保健福祉士、保育士などで構成されます。派遣先は福祉避難所に限らず、一般避難所や在宅避難者への支援も含みます。
医療のDMATは保健医療の科目で出題されます。DWATのWはWelfare、DMATのMはMedicalです。DMATが命を救うチーム、DWATが生活を支えるチームということですね。
→【社会福祉士】DWAT(災害派遣福祉チーム)とは|DMATとの違い・避難所での活動内容
災害ボランティアセンター
被災地でボランティアの受入れと調整を行う拠点です。ボランティアの受付、被災者ニーズの把握、マッチング、活動先の調整、安全管理を行います。
市町村社会福祉協議会が設置・運営することが一般的ですが、災害救助法にも社会福祉法にも、設置を義務づけた規定はありません。ここが繰り返し出題されているポイントです。
ただし令和2年から、災害ボランティアセンターが行う救助とボランティア活動の調整事務に係る費用の一部が、災害救助法による国庫負担の対象となっています。
BCP(業務継続計画)
災害や感染症が起きても、サービスを止めない、止まっても早く再開するための計画です。職員の参集方法、連絡体制、利用者の安否確認の方法、優先して継続する業務などをあらかじめ定めます。
介護サービス事業者、障害福祉サービス等事業者ともに、令和3年度の報酬改定で策定等が義務化され、経過措置を経て令和6年(2024年)4月から完全義務化されました。
→【社会福祉士】BCP(業務継続計画)とは|防災計画との違い・介護と障害福祉での義務化
被災者生活再建支援制度
被災者生活再建支援法に基づく制度で、住宅が全壊するなどの被害を受けた世帯に支援金を支給します。支援金は、住宅の被害の程度に応じた基礎支援金と、住宅の再建方法に応じた加算支援金に分かれます。
対象になるのは、全壊10世帯以上の被害が発生した市町村、全壊100世帯以上の被害が発生した都道府県などです。
災害時外国人支援情報コーディネーター
災害時に地方公共団体等が設置する災害多言語支援センター等の拠点で、行政からの災害・生活支援情報を整理し、避難所等にいる外国人被災者のニーズとマッチングを行う人材です。平成30年度から総務省が養成研修を実施しています。対象は自治体職員または地域国際化協会職員です。
コーディネーターの育成は、災害対策基本法に基づいて策定される防災基本計画に、総務省の施策として位置づけられています。
第37回では、「外国語を母語とする者を充てる」という要件があるかのように書かれた選択肢が出題されましたが、そのような要件はありません。
令和7年の防災関連の法改正
令和7年(2025年)6月、以下の2点が改正されました。
災害救助法の救助の種類の見直し
救助の種類に「福祉サービスの提供」が加わりました。
災害救助法は1947年(昭和22年)制定で、救助の種類は同法第4条に列挙されています。避難所の設置、応急仮設住宅の供与、食品の給与、被服・寝具の給与、医療・助産、被災者の救出、住宅の応急修理、生業に必要な資金の給与、埋葬などです。ここに新たな種類が加わったのが、令和7年の改正による「福祉サービスの提供」です。制定から約70年、救助のメニューが追加されるのは初めてでした。
→【社会福祉士】災害救助法大改正|地域福祉 防災・災害対策基本法
被災者援護協力団体の登録制度の創設
災害時にボランティア活動を行う団体を、あらかじめ内閣総理大臣が登録する制度ができました。
名簿や登録の仕組みは、防災に限らずいろいろな制度にあります。第37回で出題された多文化共生アドバイザー(総務省)もその一つで、多文化共生の取組で先進的な知見・ノウハウを持つ、地方公共団体の担当部署または職員を登録する制度です。2019年(平成31年)に開始されました。登録されるのは外部の専門家ではなく、実績のある自治体そのもの(部署または職員)で、これから取り組む自治体が名簿を通じて助言を求められます。名簿の作成・公表は総務省が行います。
国試での出題を確認しましょう
第36回 問題36
次のうち,社会福祉法に規定されている地域福祉に関する記述として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 2017年(平成29年)の社会福祉法改正において,「地域福祉の推進」の条文が新設された。
2 市町村社会福祉協議会は,災害ボランティアセンターを整備しなければならない。
3 地域住民等は市町村からの指導により,地域福祉の推進に努めなければならない。
4 重層的支援体制整備事業は,参加支援,地域づくりに向けた支援の二つで構成されている。
5 市町村は,地域生活課題の解決に資する支援が包括的に提供される体制の整備に努めなければならない。
解説
1→× 「地域福祉の推進」の条文は、2000年(平成12年)の社会福祉法への改正時に置かれたものです。
2→× 災害ボランティアセンターの整備を市町村社会福祉協議会に義務づけた規定は、社会福祉法にはありません。
3→× 地域住民等は、市町村からの指導によるのではなく、自ら地域福祉の推進に努めるものとされています。
4→× 重層的支援体制整備事業は、包括的相談支援事業、参加支援事業、地域づくり事業などで構成されており、二つではありません。
5→○ 市町村は、包括的な支援体制の整備に努めなければならないとされています。

第37回 問題50
災害時の支援に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。
1 被災者生活再建支援制度の対象とする自然災害は,市町村において1000世帯以上の住宅全壊被害が発生した場合である。
2 介護保険制度では,全ての介護サービス事業者に対して,業務継続計画(BCP)の策定とその計画に従って必要な措置を講ずることが定められている。
3 災害救助法では,災害ボランティアセンターの設置を市町村社会福祉協議会に義務づけている。
4 厚生労働省の「災害時の福祉支援体制の整備に向けたガイドライン」では,災害派遣福祉チーム(DWAT)の一般避難所への派遣について明記している。
5 内閣府の「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」では,指定福祉避難所は受入対象となる者をあらかじめ特定してはならないと定めている。
(注)1 BCPとは,Business Continuity Planのことである。
2 DWATとは,Disaster Welfare Assistance Teamのことである。
解説
1→× 被災者生活再建支援制度の適用要件は、住宅全壊被害が10世帯以上の市町村、100世帯以上の都道府県などとされており、1000世帯という要件はありません。
2→○ 全ての介護サービス事業者に、業務継続計画(BCP)の策定とそれに従った措置を講ずることが定められています。
3→× 災害救助法に、災害ボランティアセンターの設置を市町村社会福祉協議会に義務づける規定はありません。
4→○ 「災害時の福祉支援体制の整備に向けたガイドライン」において、DWATの一般避難所への派遣が明記されています。
5→× 令和3年5月の改定により、福祉避難所ごとに受入対象者を特定してあらかじめ公示することとされており、記述は逆です。
第38回 問題47
事例を読んで,次の記述のうち,A自治体職員の対応として,適切なものを2つ選びなさい。
〔事 例〕
Aは,住民に対するニーズ調査から災害時の福祉支援の必要性が浮き彫りになったことから,災害時の福祉支援体制を強化するために,従来,バラバラであった周辺の自治体との連携の強化を含め,現在の重層的支援体制整備事業の実施体制を見直すこととした。
1 災害対策会議と重層的支援会議のメンバーが重複するため,時間を切り分けて同日に実施することとした。
2 災害時における避難行動要支援者への福祉支援を強化するため,アウトリーチ等を通じた継続的支援事業を発災時に実施する仕組みに変更した。
3 災害に備えて,福祉支援の必要性が高いケースに関しては,速やかに諮るため,支援会議を随時開催とし,定例開催と同様に本人同意がなくても行うこととした。
4 重層的支援体制整備事業実施計画は,各種福祉計画の上位計画であるため,自治体の地域防災計画の内容を含めて,見直すことにした。
5 災害対策は広域的な対応が重要であるため,重層的支援体制整備事業の実施主体を複数の市町村で構成される広域連合に変更することとした。
解説
1→○ 会議の目的や根拠が異なるため、時間を切り分けたうえで同日に実施することは適切な工夫です。
2→× アウトリーチ等を通じた継続的支援事業は、平時から支援につながりにくい人へ働きかける事業であり、発災時に実施する仕組みに変更するものではありません。
3→○ 支援会議は本人の同意がなくても情報共有ができる会議であり、随時開催とすることも可能です。
4→× 重層的支援体制整備事業実施計画は各種福祉計画の上位計画ではありません。地域福祉計画は各種福祉計画の上位計画と位置付けられています。
5→× 重層的支援体制整備事業の実施主体は市町村であり、広域連合に変更することはできません。
この第38回問題47は、災害の知識だけでは解けない問題です。支援会議の同意要件については、こちらで詳しく整理しています。

災害対策基本法の内容はこちら
要配慮者、避難行動要支援者、避難行動要支援者名簿、個別避難計画といった災害対策基本法の規定については、こちらで整理しています。



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