今回は「BCP(業務継続計画)」です。介護・障害福祉分野で策定が義務化されており、災害に関する問題の選択肢としても登場します。
BCPとは
BCPは、Business Continuity Planの略で、「業務継続計画」または「事業継続計画」と訳されます。内閣府の「事業継続ガイドライン」では、大地震等の自然災害、感染症のまん延、テロ等の事件、大事故、サプライチェーンの途絶、突発的な経営環境の変化など不測の事態が発生しても、重要な事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い期間で復旧させるための方針、体制、手順等を示した計画とされています。
福祉分野でBCPが重視されるのは、サービスの中断が利用者の生活・健康・生命に直結するためです。介護や障害福祉のサービスを利用する人の多くは、日常生活や健康管理、さらには生命維持の大部分を事業所が提供するサービスに依存しています。入所施設であれば、被災したからといってサービス提供を直ちに中断するわけにはいきません。
防災計画との違い
混同しやすいのが、従来からある防災計画(非常災害対策計画)との違いです。
防災計画の主な目的は、身の安全を確保することと、物的な被害を抑えることにあります。これに対してBCPは、被害を受けたあとも業務を継続すること、中断しても早期に復旧させることを目的としています。防災計画をベースにしながら、そこから一歩踏み込んだ内容になっているという関係です。
また、BCPは平時のうちに策定しておくものである点も重要です。災害が起きてから作るものではありません。
介護・障害福祉分野での義務化
介護分野では、令和3年度(2021年度)の介護報酬改定において、全ての介護サービス事業者を対象にBCPの策定等が義務付けられました。ただし令和6年3月31日までの経過措置期間が設けられていたため、実質的に完全義務化されたのは令和6年4月(2024年4月)からです。
障害福祉分野も同じ流れです。令和3年度の障害福祉サービス等報酬改定において、全ての障害福祉サービス等事業者にBCPの策定等が義務付けられ、こちらも令和6年3月31日までの経過措置を経て、令和6年4月から完全義務化されました。
さらに令和6年度の介護報酬改定では、BCPを策定していない事業所に対する「業務継続計画未策定減算」が新設されています。策定しなければ報酬が減額されるという、実効性を担保する仕組みです。
義務の中身は4つ
「BCPの策定等が義務化された」というときの「等」の部分が問われることがあります。義務付けられているのは策定だけではありません。
| ①策定 | 感染症と自然災害それぞれについて業務継続計画を策定する |
|---|---|
| ②周知 | 策定した計画の内容を従業者に周知する |
| ③研修 | 従業者に対して必要な研修を定期的に実施する |
| ④訓練 | 必要な訓練(シミュレーション)を定期的に実施する |
感染症と自然災害の両方についてBCPが必要である点も押さえておきたいところです。未策定減算は、どちらか一方だけを策定していない場合にも適用されます。
国試での出題を確認しましょう
第37回 問題50
災害時の支援に関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。
1 被災者生活再建支援制度の対象とする自然災害は、市町村において1000世帯以上の住宅全壊被害が発生した場合である。
2 介護保険制度では、全ての介護サービス事業者に対して、業務継続計画(BCP)の策定とその計画に従って必要な措置を講ずることが定められている。
3 災害救助法では、災害ボランティアセンターの設置を市町村社会福祉協議会に義務づけている。
4 厚生労働省の「災害時の福祉支援体制の整備に向けたガイドライン」では、災害派遣福祉チーム(DWAT)の一般避難所への派遣について明記している。
5 内閣府の「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」では、指定福祉避難所は受入対象となる者をあらかじめ特定してはならないと定めている。
(注)1 BCPとは、Business Continuity Planのことである。
2 DWATとは、Disaster Welfare Assistance Teamのことである。
解説
1→× 被災者生活再建支援制度の適用要件は、住宅全壊被害が10世帯以上の市町村、100世帯以上の都道府県などとされており、1000世帯という要件はありません。
2→○ 全ての介護サービス事業者に、業務継続計画(BCP)の策定とそれに従った措置を講ずることが定められています。
3→× 災害救助法に、災害ボランティアセンターの設置を市町村社会福祉協議会に義務づける規定はありません。
4→○ 「災害時の福祉支援体制の整備に向けたガイドライン」において、DWATの一般避難所への派遣が明記されています。
5→× 令和3年5月の改定により、福祉避難所ごとに受入対象者を特定してあらかじめ公示することとされており、記述は逆です。
災害時に避難所へ派遣される福祉専門職のチームについては、こちらで整理しています。
→【社会福祉士】DWAT(災害派遣福祉チーム)とは|DMATとの違い・避難所での活動内容
災害時の制度面(要配慮者・避難行動要支援者・個別避難計画)については、こちらで整理しています。
→【社会福祉士】災害対策基本法|要配慮者・避難行動要支援者・個別避難計画
第38回 問題121
事例を読んで、次の記述のうち、DWAT(災害派遣福祉チーム)の社会福祉士が主となって行うこの段階での活動として、適切なものを2つ選びなさい。
〔事 例〕
A県B市では大型台風の影響によって河川の氾濫や土砂災害が発生し、多くの家屋が被害を受け、複数の避難所が設置された。災害発生の翌日、B市からA県に対してDWAT(災害派遣福祉チーム)の派遣要請が入り、その7日後にチームがB市の避難所に入った。
1 避難所等を巡回し衛生管理を行う。
2 生活不活発病対策のためのプログラムを実施する。
3 避難所等において、被災した住民の生活課題のスクリーニングを行う。
4 社会福祉協議会と協力し、「BCP」の再検討を行う。
5 被災地において報告される情報や在宅等の巡回を通じて要配慮者の把握を行う。
(注) 「BCP」とは、事業継続計画のことである。
解説
1→× 衛生管理は保健師等が担う保健衛生分野の活動であり、DWATの社会福祉士が主となって行う活動ではありません。
2→× 生活不活発病対策のプログラム実施は、リハビリ専門職等が中心となる活動です。
3→○ 避難所で被災住民の生活課題をスクリーニングすることは、DWATの相談支援として適切です。
4→× BCPは平時のうちに策定・見直しをしておくものであり、避難所に入って支援を行っている段階での活動ではありません。
5→○ 情報収集や在宅等の巡回を通じて要配慮者を把握することは、DWATの活動として適切です。
すっきり整理
| 正式名称 | 業務継続計画(Business Continuity Plan) |
|---|---|
| 目的 | 不測の事態が発生しても重要な業務を中断させない、中断しても早期に復旧させる |
| 防災計画との違い | 防災計画は安全確保・被害の抑制、BCPは業務の継続・早期復旧 |
| 義務の内容 | 策定・周知・研修・訓練の4つ |
| 対象 | 全ての介護サービス事業者、全ての障害福祉サービス等事業者 |
| 時期 | 令和3年度改定で義務化、経過措置を経て令和6年4月から完全義務化 |
| 作るタイミング | 平時(災害発生後に作るものではない) |


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