社会的企業とは
社会的企業(ソーシャル・エンタープライズ)とは、社会問題の解決を組織の主たる目的とし、その解決手段としてビジネスの手法を用いる企業のことです。
ポイントは2つあります。目的が社会課題の解決であること。そして手段がビジネスであることです。
従来、社会課題の解決は行政やボランティア、非営利組織が担うものと考えられてきました。しかし、行政だけではすべての課題に対応しきれず、財政状況も厳しくなっています。一方、寄付や補助金だけに頼る活動は財源が不安定です。そこで、事業として収益を上げながら社会課題の解決に取り組む形が注目されるようになりました。
営利企業・NPOとの違い
一般の営利企業との違いは、何を最優先するかです。営利企業は株主や出資者の利益を最優先しますが、社会的企業は社会課題の解決を最優先します。利益を上げないわけではなく、上げた利益を社会課題の解決に再投資していく点が特徴です。
NPO等の非営利組織との違いは、財源の考え方です。寄付や補助金に依存するのではなく、事業収益によって継続的に活動を進めていきます。
| 最優先するもの | 主な財源 | |
|---|---|---|
| 営利企業としての活動 | 株主・出資者の利益 | 事業収益 |
| 社会的企業としての活動 | 社会課題の解決 | 事業収益 |
| 非営利組織としての活動 | 社会課題の解決 | 寄付・補助金・事業収益 |
法人格は決まっていません
社会的企業は、日本の法律で定義された法人格ではありません。株式会社、NPO法人、社会福祉法人、労働者協同組合など、さまざまな法人格の組織が社会的企業として活動しています。
関連して、経済産業省は2008年(平成20年)の「ソーシャルビジネス研究会報告書」において、ソーシャルビジネスの要件として社会性・事業性・革新性の3つを挙げています。社会性は解決が求められる社会的課題に取り組むことを事業活動のミッションとすること、事業性はそのミッションをビジネスの形にして継続的に事業活動を進めること、革新性は新しい社会的商品・サービスやその仕組みを開発・活用し、新しい社会的価値を創出することです。
もともとは欧州で広まった考え方です
社会的企業は日本独自の組織ではありません。欧州、とくにEU諸国やイギリスで発展してきた概念で、日本にはその考え方が後から入ってきました。福祉国家の財政が厳しくなり、行政が担ってきたサービスの供給に民間の力を取り入れる動きが広がったことが背景にあります。
また、社会的企業は市場の外側で活動する組織でもありません。ここでいう市場とは、お金をやりとりしてサービスやものを売買する場のことです。この定義に照らすと、無償で行われるボランティア活動は市場の外側の活動になります。一方、非営利組織は営利を目的とはしませんが、サービスを提供して対価を受け取ることがあるため、市場の内側の活動です。社会的企業も収益を上げながら課題の解決に取り組むので、ボランティアとは違い、市場の内側での活動といえます。
なお、介護保険サービスのように、公費で費用が賄われながら事業者どうしが競争する仕組みを準市場といいます。社会的企業はこうした準市場にも参入して事業を行っています。
この流れの出発点として、1978年(昭和53年)のイギリスのウルフェンデン報告があります。オイルショック後の財政難のなかで、公的部門だけが福祉を担うのではなく、ボランタリー組織など複数の主体が福祉を担うという福祉多元主義(ウェルフェア・プルーラリズム)の考え方が示されました。この考え方の延長線上に、社会的企業も位置づけられます。
→シーボーム報告・ウルフェンデン報告・グリフィス報告の違い|エイブス・バークレイもすっきり解説
労働者協同組合との関係
社会的企業の担い手のひとつとして、労働者協同組合があります。労働者協同組合法(令和2年法律第78号)に基づく法人で、令和4年(2022年)10月1日に施行されました。
基本原理は3つです。組合員が出資すること、組合員の意見が事業の運営に反映されること、組合員自らが事業に従事することです。出資・経営・労働の3つを組合員が担う点が、一般の企業との違いになります。
→労働者協同組合とは|出資・経営・労働の三位一体をわかりやすく解説
国試での出題を確認しましょう
地域福祉の科目で繰り返し出題されています。
第30回 問題25
社会的企業に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 収益事業を行わない組織である。
2 日本に独特の組織である。
3 市場や準市場の外側で事業に取り組む組織である。
4 社会福祉に関する法制度に基づき創設される特別な組織である。
5 社会的な困難や課題に取り組む組織である。
解説
1→× 社会的企業は事業収益によって活動を継続する組織であり、収益事業を行わないわけではありません。
2→× 欧州を中心に発展してきた考え方であり、日本独自の組織ではありません。
3→× ビジネスの手法を用いる以上、市場や準市場のなかで事業を行います。
4→× 法律で定められた特別な法人格ではなく、株式会社やNPO法人など多様な法人格の組織が該当します。
5→○ 社会的な困難や課題の解決に取り組むことが、社会的企業の主たる目的です。
第35回 問題32
地域福祉の基礎的な理念や概念に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 コミュニティケアとは,地域の特性や地域における課題やニーズを把握し,地域の状況を診断することをいう。
2 セルフアドボカシーとは,行政が,障害者や高齢者等の権利を擁護するよう主張することをいう。
3 福祉の多元化とは,全ての人々を排除せず,健康で文化的な生活が実現できるよう,社会の構成員として包み支え合う社会を目指すことをいう。
4 社会的企業とは,社会問題の解決を組織の主たる目的としており,その解決手段としてビジネスの手法を用いている企業のことである。
5 住民主体の原則とは,サービス利用者である地域住民が,主体的にサービスを選択することを重視する考え方である。
解説
1→× 記述は地域アセスメント(地域診断)の説明です。コミュニティケアは、施設ではなく地域社会のなかで生活を支える考え方をいいます。
2→× セルフアドボカシーは、当事者自身が自らの権利を主張することをいいます。行政が主張するものではありません。
3→× 記述はソーシャルインクルージョン(社会的包摂)の説明です。福祉の多元化は、福祉サービスの供給主体が行政以外にも広がることをいいます。
4→○ 社会問題の解決を主たる目的とし、ビジネスの手法を手段として用いるという説明は、社会的企業の考え方として適切です。
5→× 住民主体の原則は、地域住民が地域の課題解決の担い手として主体的に参加することを重視する考え方であり、サービスを選択することではありません。
第37回 問題43
市民による福祉の担い手に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 認知症サポーターは,専門職のサポートを行うため,地域包括支援センターに配属される。
2 主任児童委員は,子どもや子育て家庭に関する相談に応じるため,児童家庭支援センターに配属される。
3 労働者協同組合は,地域における多様な需要に応じた仕事を創出するために,組合員自らが出資し事業に従事する。
4 民生委員は,市町村長の推薦によって,都道府県知事から委嘱される。
5 社会的企業は,株主の利益を最優先しながら,ビジネスの手法によって社会課題を解決する。
解説
1→× 認知症サポーターは研修を受けた住民であり、地域包括支援センターに配属される仕組みではありません。
2→× 主任児童委員は民生委員・児童委員のなかから指名される者であり、児童家庭支援センターに配属されるものではありません。
3→○ 労働者協同組合は、組合員が出資し、意見を反映して事業を運営し、組合員自らが事業に従事することを基本原理とする法人です。
4→× 民生委員は、市町村に置かれる民生委員推薦会の推薦を経て都道府県知事が推薦し、厚生労働大臣が委嘱します。
5→× 株主の利益を最優先するのは株式会社です。社会的企業が最優先するのは社会課題の解決です。
すっきり整理
この論点で押さえておきたい内容をまとめます。
| 目的 | 社会問題の解決 |
|---|---|
| 手段 | ビジネスの手法 |
| 優先するもの | 株主の利益ではなく社会課題の解決 |
| 法人格 | 定まっていない(株式会社・NPO法人・労働者協同組合等) |
| 発祥 | 欧州(日本独自の組織ではない) |
| 活動の場 | 市場・準市場のなか |
| ソーシャルビジネスの3要件 | 社会性・事業性・革新性(経済産業省、2008年) |


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