根拠法と目的
介護保険事業計画は、介護保険法に基づいて市町村と都道府県がそれぞれ策定する計画です。
基本指針は厚生労働大臣が定め、市町村や都道府県がサービス量を見込む際に参酌すべき標準を示す役割を持ちます。それに基づき、市町村介護保険事業計画と都道府県介護保険事業支援計画があり、両者は保険給付の円滑な実施を目的としており、どちらも策定が義務付けられています(3年を1期)。
市町村介護保険事業計画で定める事項
市町村介護保険事業計画では、介護サービスの種類ごとの量の見込みを示します。あわせて、市町村が定める日常生活圏域の設定、地域支援事業の見込み、介護予防・重度化防止等の取組内容及び目標等を定めます。これらの内容に基づき、介護保険料が決定されます。
都道府県介護保険事業支援計画で定める事項
都道府県介護保険事業支援計画では、市町村の計画を踏まえたうえで、都道府県が定める区域(老人福祉圏域)ごとの介護サービス量の見込みを示します。あわせて、介護保険施設や地域密着型特定施設入居者生活介護などについて、各年度・各区域の必要利用定員総数を定めます。
市町村老人福祉計画・都道府県老人福祉計画との関係
市町村介護保険事業計画は、老人福祉法に規定する市町村老人福祉計画と一体のものとして作成します。都道府県介護保険事業支援計画についても、都道府県老人福祉計画と一体のものとして作成します。根拠となる法律は異なりますが、実務上は一つの計画としてまとめて策定・公表されています。
一つの計画にまとめる方法(一体のものとして作成する方法)は市町村によって様々ですが、尼崎市を例にあげます。

ホームページより抜粋(原文のまま):本計画は老人福祉法(昭和38年法律第133 号)第20条の8に規定する市町村老人福祉計画と介護保険法(平成9年法律第123号)第117条に規定する市町村介護保険事業計画を一体なものとし、市町村に義務付けられた、高齢者に関する保健福祉事業や介護保険制度の総合的な計画を策定し、高齢者施策の推進を図っています。
被保険者の意見を反映させる措置
市町村介護保険事業計画を作成するにあたっては、現に保健医療サービスまたは福祉サービスを利用している要介護者及びその家族等をはじめ、被保険者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとされています。具体的には、公募等による作成委員会の設置、聞き取り調査の実施、公聴会の開催などの取組が想定されています。
市町村と都道府県、都道府県と国の関係
市町村介護保険事業計画の策定については、市町村だけの判断で、計画の内容を決定できるわけではありません。都道府県介護保険事業支援計画は、市町村の計画を踏まえてサービス量の見込みなどを積み上げながら策定されることになります。都道府県は市町村よりも広い区域を見渡す立場から計画を作成するため、各市町村の計画の内容をあらかじめ把握しておく必要があり、市町村も都道府県の計画との整合を意識しながら作成を進めることになります。
あわせて、市町村地域福祉計画など、他の法律の規定による関連計画との調和が保たれたものでなければならないとされています。都道府県介護保険事業支援計画についても同様に、都道府県が策定する他の関連計画との調和が求められます。都道府県が策定した計画やそれに基づく保険料・サービス見込み量等については、国がとりまとめ、全国的な状況として公表しています。
過去問で確認しましょう
第34回 問題131
1 都道府県は、6年を1期とする介護保険事業計画を策定するに当たって、各年度の地域支援事業の見込量の算出を行う。
→ × 介護保険事業計画は3年を1期として策定します。また、各年度における地域支援事業の量の見込みを定めるのは市町村介護保険事業計画の事項であり、都道府県の役割ではありません。
第35回 問題134
5 市町村老人福祉計画は、社会福祉法に基づく市町村地域福祉計画と一体のものとして作成されなければならないことが規定されている。
→ × 市町村老人福祉計画と一体のものとして作成しなければならないのは市町村介護保険事業計画です。市町村地域福祉計画とは、調和が保たれたものでなければならないとされています。
演習問題
1 市町村は介護保険法において一年を一期とする介護保険事業計画を定めるものとする。
→ × 正しくは三年を一期とする介護保険事業計画です。
2 市町村介護保険事業計画では、介護給付等対象サービスの種類ごとの量の見込みは日常生活圏域ごとの事情を勘案して定めるものとされている。
→ ○ 介護給付等対象サービスの種類ごとの量の見込みは、市町村が定める区域(日常生活圏域)ごとに定めるものとされています。都道府県は「老人福祉圏域」ごとにサービス量を定めるとされています。
3 介護保険法では、市町村介護保険事業計画の策定にあたって、市町村はあらかじめ被保険者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものと定めている。
→ ○ 市町村は、市町村介護保険事業計画を定め、又は変更しようとするときは、あらかじめ、被保険者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとされています。
4 都道府県介護保険事業支援計画は高齢社会対策基本法に基づき、政府が定める大綱に即して作成しなければならない。
→ × 都道府県介護保険事業支援計画は、厚生労働大臣が定める基本指針に即して作成するものとされています。高齢社会対策基本法や政府の大綱に基づくものではありません。
5 都道府県介護保険事業支援計画は医療法に規定される医療計画といったものとして策定されなければならない。
→ × 市町村介護保険事業計画・都道府県介護保険事業支援計画と医療計画は、整合性を確保することが求められます。一体のものとして策定しなければならないのは老人福祉計画との関係であり、医療計画とは整合性を確保する関係にあります。
国家試験を解く上では単なる「整合性」なのか「一体のもの」なのかは結構重要なので、意識しましょう。

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