第三者評価という仕組みができた背景
福祉サービスの第三者評価は、「社会福祉の原理と政策」「児童・家庭福祉」「福祉サービスの組織と経営」この三科目で出題実績があります。事業者でも利用者でもない、公正・中立な立場の第三者機関がサービスの質を評価する仕組みです。ここでは、この仕組みが必要とされた背景と、社会福祉法78条が事業者と国それぞれに何を求めているかを順に確認します。
①措置から契約へ
福祉サービス第三者評価事業は、社会福祉基礎構造改革によって、福祉サービスの利用の仕組みが措置から契約に転換したことを背景に整備されました。措置制度では行政がサービス内容を決定していましたが、契約制度では利用者自身が事業者を選ぶことになります。利用者が適切にサービスを選択するためには、サービスの質に関する客観的な情報が必要になりますが、当時サービス事業者に関する情報の提供が十分でありませんでした。
②事業者は自ら質の評価を行う(社会福祉法78条1項)
社会福祉法第78条第1項は、社会福祉事業の経営者が自らその提供する福祉サービスの質の評価を行うことその他の措置を講ずることにより、常に福祉サービスを受ける者の立場に立って良質かつ適切な福祉サービスを提供するよう努めなければならないと定めています。事業者自身の努力義務です。
③国は質の向上を支援する(社会福祉法78条2項)
第2項は、国が、事業者の質の向上を援助するために、質の公正かつ適切な評価の実施に資する措置を講ずるよう努めなければならないと定めています。福祉サービスの第三者評価事業は、この規定に基づき、国が基盤づくりを進めています。
ポイント:第三者評価は、サービスの質を向上させることと、利用者が事業者を適切に選択できるようにすることの両方を目的として作られた仕組みです。
誰が評価しているのか
福祉サービスの第三者評価は、全国社会福祉協議会が福祉サービス第三者評価事業の全国推進組織として、評価基準ガイドラインの整備など、事業全体の質を高める役割を担っています。
さらに、都道府県ごとに都道府県推進組織が設置され、その推進組織が認証した評価機関が各事業所の評価を行います。認証を行うのは都道府県推進組織であって、国でも市町村でもありません。評価機関にはそれぞれ数名程度の調査員(研修を受講済み)がおかれており、その調査員が定められた項目の調査を行い、その結果をインターネットで公表します。なお、評価機関はNPO法人や株式会社等が担っているケースが多いようです。

受審は義務か
福祉サービス第三者評価を受けるかどうかは、原則として事業者の任意です。社会福祉法第78条に事業者自身による自己評価等の努力義務は規定されていますが、第三者評価を受けることそのものを義務づける条文はありません。
ただし、対象によって扱いが3つに分かれます。
①義務づけられているもの
児童養護施設、乳児院、母子生活支援施設、児童心理治療施設、児童自立支援施設の5つです。これらを社会的養護関係施設といいます。平成24年度から、毎年の自己評価と、3年に1度以上の第三者評価の受審、その結果の公表が義務づけられています。
義務化の理由として、次の3つがあげられています。子どもが施設を選べる仕組みではないこと、施設長による親権代行等の規定があること、被虐待児の増加により施設運営の質の向上が求められることです。
②努力義務とされているもの
保育所は、5年ごとの受審が努力義務とされています。
ファミリーホーム(小規模住居型児童養育事業)と自立援助ホーム(児童自立生活援助事業)も、自ら評価を行うとともに、定期的に外部の者による評価を受け、その結果を公表して改善を図ることが努力義務とされています。
③任意のもの
上記以外の福祉サービスは、事業者が受けるかどうかを判断します。高齢者福祉サービスや障害福祉サービスの事業所は、ここにあたります。
一時保護施設も評価の対象になりました
令和6年改正で一時保護所も第三者評価の義務付け対象へ
一時保護施設については、児童福祉法第12条の4に、設置に関する規定が以前から置かれていました。令和4年の児童福祉法等改正により、国が定める基準に基づき、各都道府県が一時保護施設の設備及び運営について条例で詳細な基準を定めることが新たに義務づけられることになりました。その基準の中で、一時保護施設が業務の質について自己評価と定期的な外部評価を受けることが義務づけられています。
一時保護についてはこちらをご参照ください

指導監査との違い
第三者評価とよく混同されるのが、指導監査です。
指導監査は、法令に定められた最低基準が守られているかどうかを行政が確認するものです。守られていなければ改善を求めます。これに対し第三者評価は、最低基準を満たしているかどうかではなく、その先の質の向上を目的としています。行政が行うものでもありません。目的も主体も違う仕組みです。
過去問で確認しましょう
第34回(問題142)
児童相談所の一時保護に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 一時保護する場合には親権者の同意が必要である。
2 一時保護は児童相談所に設置されている一時保護所に限って行う。
3 親権者の意に反して2か月を超える一時保護を実施するためには、児童福祉審議会の承認を得なければならない。
4 都道府県知事は、一時保護所の福祉サービス第三者評価を行わなければならない。
5 外出、通学、通信、面会に関する制限は、子どもの安全の確保が図られ、かつ一時保護の目的が達成できる範囲で必要最小限とする。
解説
1 →× 一時保護は親権者の同意がなくても、児童相談所長の判断で行うことができる
2 →× 一時保護は一時保護所に限らず、里親や乳児院、児童養護施設等への委託でも行うことができる
3 →× 2か月を超える一時保護の実施には家庭裁判所の承認が必要である
4 →× 評価を行うのは都道府県知事ではなく評価機関である。なお、34回当時は一時保護所は第三者評価の対象ではなかったが、その後の法改正で現在は対象に加えられている。
5 →○
演習問題で確認しましょう
福祉サービス第三者評価に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 乳児院は、福祉サービス第三者評価を定期的に受審すること及び結果の公表が義務づけられている。
2 福祉サービス第三者評価は、市町村が認証した評価機関が実施する。
3 福祉サービス第三者評価は、法令に定められた運営基準が遵守されているかどうかを確認するための仕組みである。
4 福祉サービス第三者評価の評価機関は、非営利組織であることが認証を受けるための要件となっている。
5 福祉サービス第三者評価の結果は、事業者の同意がなければ公表されない。
解説
1 →○ 乳児院は社会的養護関係施設にあたるため、3年に1度以上の受審と結果の公表が義務づけられている
2 →× 認証を行うのは都道府県推進組織であり、市町村ではない
3 →× これは指導監査の説明であり、第三者評価は最低基準以上の質の向上を目的とする仕組みである
4 →× 株式会社などの営利法人も評価機関になることができる
5 →× 評価結果はインターネット上で公表される
3つの区分と、認証を行うのは誰かで整理できます
第三者評価で問われてきたのは、受審が義務か努力義務か任意か、認証を行うのは誰か、そして指導監査と何が違うか、この3点です。受審義務があるのは社会的養護関係施設の5つ、第三者評価の認証は都道府県推進組織、指導監査は最低基準の確認で第三者評価は質の向上。これが頭に入っていれば、これまでの過去問は概ね解けるようになると思います。
家庭養育優先の原則についてはこちら



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