児童虐待防止法の通告義務と4類型|通告先と接近禁止命令を整理

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虐待防止法の勉強の仕方

虐待防止法は、1つだけを勉強してもなかなか定着しません。どの虐待防止法が出題されるかはその年によって違いますので、3つを並べて、共通点と相違点を比較しながら覚えてください。

3つの虐待防止法の比較についての記事はこちら
児童虐待防止法・高齢者虐待防止法・障害者虐待防止法の比較|対象・類型・通報先を整理

高齢者虐待防止法についての記事はこちら
高齢者虐待防止法をわかりやすく|通報義務と5類型・養護者支援を整理

障害者虐待防止法についての記事はこちら
障害者虐待防止法をわかりやすく|通報先・障害者の定義・虐待類型

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児童虐待防止法の対象と「保護者」

児童虐待防止法の正式名称は「児童虐待の防止等に関する法律」です。2000年(平成12年)に成立し、同年11月20日から施行されました。

この法律でいう児童は、18歳未満の者です。児童福祉法と同じ年齢で区切られています。

もう一つおさえておきたいのは、虐待を行う側が「保護者」に限られている点です。保護者とは、親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいいます。親権者でなくても、同居している親の交際相手のように、現に児童を監護していれば保護者にあたります。

*保護者以外のものが行う暴行などは、この法律の児童虐待にはあたりません。暴行罪や傷害罪の問題になります。

<戦前の児童虐待防止法>
戦前の1933年(昭和8年)にも「児童虐待防止法」という名前の法律がありました。
当時は不況のなかで、子どもの身売りや、もらい子殺し、欠食児童が問題になっていました。そこで、14歳未満の児童について、曲芸や物乞い、酌婦などの業務に使うことを禁止・制限し、虐待を行った保護者に対して訓戒や条件付きの監護命令を行い、児童を私人や施設に委託することを定めた法律でした。子どもを稼ぎの手段に使わせないことが中心で、今の法律のように家庭内の虐待を発見して保護する仕組みではありませんでした。
この法律は1947年(昭和22年)の児童福祉法の制定に伴って廃止されました。禁止していた行為の一部は、児童福祉法34条の禁止行為として引き継がれています。

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児童虐待の4類型

児童虐待防止法2条は、児童虐待を4つに分けて定めています。

身体的虐待(2条1号)
身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること

性的虐待(2条2号)
わいせつな行為をすること、又はわいせつな行為をさせること

ネグレクト(2条3号)
心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者としての監護を著しく怠ること

心理的虐待2条4号
著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力その他著しい心理的外傷を与える言動を行うこと

・心理的虐待については、子どもの前で配偶者に暴力をふるうこと、いわゆる面前DVは、児童虐待にあたります。ここでいう「配偶者に対する暴力」には、身体に対する暴力に準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動も含まれます。

・いっぽうで、児童に家族の介護を行わせることが、それだけで常に児童虐待になるわけではありません。ヤングケアラーの状態が虐待の定義に含まれるという解釈は誤りです。

高齢者虐待防止法と障害者虐待防止法は5類型で、経済的虐待が入っています。児童虐待防止法には経済的虐待の類型がありません。3つを並べたときの違いはここです。

3つの虐待防止法の違いについての記事はこちら
児童虐待防止法・高齢者虐待防止法・障害者虐待防止法の通報先を確認しましょう

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早期発見の努力義務(第5条)

5条1項は、児童虐待を発見しやすい立場にある者について、早期発見に努めなければならないと定めています。義務ではなく努力義務です。

条文には、学校、児童福祉施設、病院、都道府県警察、女性相談支援センター、教育委員会、配偶者暴力相談支援センターその他児童の福祉に業務上関係のある団体と、学校の教職員、児童福祉施設の職員、医師、歯科医師、保健師、助産師、看護師、弁護士、警察官、女性相談支援員その他児童の福祉に職務上関係のある者が並んでいます。

6条の通告義務は「発見した者」つまり誰にでもかかる義務、5条の早期発見は関係者にかかる努力義務、という組み合わせで整理してください。

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通告義務(第6条)

児童虐待防止法6条1項は、次のように定めています。

第六条 児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。

おさえるところは2つです。

①「受けたと思われる」段階で通告することです。虐待だと確認できてからではありません。確信がなくても通告します。また、通告が努力義務ではなく義務です。

②通告先です。市町村、都道府県の設置する福祉事務所、児童相談所の3つで、児童委員を介して通告することもできます。児童相談所だけではない点に注意してください。

あわせて、6条3項が守秘義務との関係を定めています。刑法の秘密漏示罪の規定その他の守秘義務に関する法律の規定は、通告を妨げるものと解釈してはならないとされています。医師や弁護士が通告しても守秘義務違反にはなりません。保護者の同意も要りません。

児童虐待を発見しやすい立場にある者→早期発見に努めなければならない
児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者→通告しなければならない

立入調査と臨検・捜索

安全確認のための手続は、段階を追って強くなります。

8条の2(調査・質問)

都道府県知事が保護者に対し、児童を同伴して出頭することを求め、必要な調査や質問をさせることを定めています。

9条(立入調査)

都道府県知事の権限で、児童委員又は児童の福祉に関する事務に従事する職員に、児童の住所や居所に立ち入らせ、必要な調査や質問をさせることができます。保護者が拒んだ場合の罰則も置かれています。

市町村には立入調査の権限がありません。市が家庭訪問をして保護者に面会を拒まれた場合、市が強制的に立ち入ることはできず、一時保護などの可能性を考慮して児童相談所長に通知するという流れになります。事例問題でここが問われています。

9条の3(臨検・捜索)裁判官の許可状が必要

都道府県知事が、地方裁判所、家庭裁判所又は簡易裁判所の裁判官があらかじめ発する許可状を得て、児童の住所や居所に臨検させ、児童を捜索させることができます。

面会・通信の制限と接近禁止命令

12条1項(面会や通信の制限)

都道府県知事又は児童相談所長は、施設入所等の措置が採られ、又は一時保護が行われている児童について、児童虐待を行った保護者との面会や通信を制限できます。

12条の4(接近禁止命令)

都道府県知事又は児童相談所長が、6月を超えない期間を定めて、保護者に対し、児童の住所や居所、就学する学校その他の場所で児童の身辺につきまとうこと、それらの付近をはいかいすることを禁止する命令を出すことができます。

*命令に違反した場合の罰則は、1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金です。

裁判所が関わるのは臨検・捜索だけです

ここまで見てきた手続きの決定権者は誰か、比較してみましょう。

・出頭要求と立入調査を行うのは都道府県知事、面会・通信の制限と接近禁止命令を出すのは都道府県知事又は児童相談所長です。いずれも行政機関の判断だけで手続きを進めることができ、裁判所は関与しません。接近禁止命令は保護者との接触を止める強い措置ですが、これも家庭裁判所の承認を得ることなく出せます。

・これに対し、臨検・捜索だけは裁判官の許可状が必要です。地方裁判所、家庭裁判所又は簡易裁判所のいずれかの裁判官が発します。

家庭裁判所が関わる場面についての記事はこちら
家庭裁判所とは|家事事件と少年事件・成年後見における役割

一時保護についての記事はこちら
一時保護とは?要件・期間・2025年施行の保護状司法審査をわかりやすく解説

体罰の禁止

14条1項は、児童のしつけに際して体罰を加えてはならないと定めています。2019年(令和元年)の改正で入り、2020年(令和2年)4月から施行されました。

同じ2019年の改正では、児童相談所において、虐待の介入を担当する職員と保護者の支援を担当する職員を分けることも定められています。児童相談所にて、同じ児童福祉司が虐待の被害を受けている子どもと保護者の支援を担当することができなくなりました。

「刑事司法と福祉」の分野にも同じ考え方があります。被害者の支援を担当する者(被害者担当の保護観察官や保護司)は、その加害者の保護観察を担当しません。立場が対立する二者を同じ人が受け持つと、どちらの側にも立てなくなるからです。児童相談所で介入担当と保護者支援担当を分けたのも、これと同じ理由です。

民法も2022年(令和4年)に改正され、懲戒権の規定が削除されました。

過去問の前に重要なポイントをまとめましょう

① 通告義務は「児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者」に課される義務です。努力義務ではありません。

② 早期発見は努力義務です。学校の教職員、児童福祉施設の職員、医師、保健師、弁護士などが対象です。①と入れ替えた選択肢が繰り返し出ています。

③ 通告先は、市町村、都道府県の設置する福祉事務所、児童相談所です。児童委員を介して通告することもできます。児童相談所だけではありません。

④ 出頭要求と立入調査は都道府県知事、面会・通信の制限と接近禁止命令は都道府県知事又は児童相談所長です。裁判所は関与しません。

⑤ 臨検・捜索だけは、裁判官の許可状が必要です。家庭裁判所に限らず、地方裁判所、簡易裁判所の裁判官も発します。

⑥ 児童虐待の類型は4つです。経済的虐待は入っていません。高齢者虐待防止法と障害者虐待防止法の5類型との違いはここです。

⑦ 面前DVは心理的虐待に含まれます。子ども本人に手を出していなくても児童虐待です。

過去問を確認しましょう

第28回問題138

児童虐待の防止等に関する法律に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 学校の教職員、児童福祉施設の職員、医師、保健師、弁護士その他児童の福祉に職務上関係のある者には、児童虐待の早期発見の努力義務が課せられている。
2 偶然通りかかった見知らぬ男性が、児童に対して暴力を振るってケガをさせる行為は、児童虐待に当たる。
3 児童相談所長は、児童虐待を受けた児童の意に反して、一時保護を行うことはできない。
4 児童虐待を行った保護者が、接近禁止命令に違反しても、罰則を科せられることはない。
5 児童虐待を疑った医師が、児童虐待の通告をする場合には、当該児童の保護者の同意を得るものとされている。

解説

正答は1です。
1→○ 記述のとおりです。5条の早期発見は努力義務です。
2→× 児童虐待は保護者による行為をいいます。
3→× 児童の意に反していても一時保護を行うことができます。
4→× 1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金が定められています。
5→× 保護者の同意は必要ありません。

第35回問題138

「児童虐待防止法」に関する次の記述のうち,最も適切なものを 1 つ選びなさい。
1 児童相談所長等は,児童虐待の防止及び児童虐待を受けた児童の保護のため,施設入所している児童を除き,面会制限を行うことができる。
2 児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は,できる限り通告するよう努めなければならない。
3 児童の福祉に職務上関係のある者は,児童虐待の早期発見を行わなければならない。
4 児童が同居する家庭における配偶者に対する生命又は身体に危害を及ぼす暴力は,児童虐待の定義に含まれる。
5 児童に家族の介護を行わせることは,全て,児童虐待の定義に含まれる。
(注)「児童虐待防止法」とは,「児童虐待の防止等に関する法律」のことである。

解説

正答は4です。
1→× 施設入所等の措置が採られている児童が、面会・通信の制限の対象です。
2→× 努力義務ではなく義務です。
3→× 早期発見は努力義務です。
4→○ 記述のとおりです。2条4号の心理的虐待に含まれます。
5→× 「全て」が誤りです。

第27回問題137

次の各法令などが対象とする「児童」として、正しいものを1つ選びなさい。
1 児童扶養手当法では、「児童」を16歳未満の者と定めている。
2 母子及び寡婦福祉法(現在の母子及び父子並びに寡婦福祉法)では、「児童」を18歳未満の者と定めている。
3 児童手当法では、「児童」を16歳未満の者と定めている。
4 児童の権利に関する条約では、「児童」を16歳未満の者と定めている。
5 児童虐待の防止等に関する法律では、「児童」を18歳未満の者と定めている。

解説

正答は5です。
1→× 児童扶養手当法の児童は、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者、または20歳未満で政令で定める程度の障害がある者です。
2→× 母子及び父子並びに寡婦福祉法の児童は、20歳未満の者です。
3→× 児童手当法の児童は、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者です。
4→× 児童の権利に関する条約の児童は、18歳未満の者です。
5→○ 記述のとおりです。

第30回問題140

事例を読んで、S市子ども家庭課の対応として、最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕S市子ども家庭課は、連絡が取れないまま長期間学校を欠席している児童がいると学校から通告を受けた。S市では虐待の疑いがあると考え、A相談員(社会福祉士)が直ちに家庭訪問を実施した。しかし、保護者と思われる人物から、「子どもに会わせるつもりはない」とインターホン越しに一方的に告げられ、当該児童の状態を把握することはできなかった。
1 家庭訪問の結果を学校に伝え、対応を委ねる。
2 近隣住民に通告のことを伝え、児童を見かけたらS市に情報提供してもらう。
3 一時保護などの可能性を考慮し、児童相談所長に通知する。
4 家屋内への強制的な立入調査を行い、直ちに児童の安全を確認する。
5 親権喪失審判請求の申立てを行う。

解説

正答は3です。
1→× 通告を受けた市が学校に対応を委ねることはできません。
2→× 通告のことを近隣住民に伝えることは適切ではありません。
3→○ 記述のとおりです。市町村は児童相談所長に通知します。
4→× 立入調査は都道府県知事の権限で、市が行うものではありません。
5→× この段階で親権喪失の審判を請求する場面ではありません。

第33回問題137

2019年(令和元年)に改正された児童福祉法及び児童虐待の防止等に関する法律に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 児童相談所における介入担当と保護者支援担当は、同一の児童福祉司が担うこととなった。
2 児童相談所の業務の質について、毎年、評価を実施することが義務づけられた。
3 親権者は、児童のしつけに際して体罰を加えてはならないとされた。
4 特別区(東京23区)に、児童相談所を設置することが義務づけられた。
5 一時保護の解除後の児童の安全の確保が、市町村に義務づけられた。

解説

正答は3です。
1→× 同一の児童福祉司が担うのではなく、分けることとされました。
2→× 毎年の評価が義務づけられたわけではありません。
3→○ 記述のとおりです。児童虐待防止法14条1項です。
4→× 特別区は児童相談所を設置することができるとされたもので、義務ではありません。
5→× 市町村に義務づけられたものではありません。

第37回問題95

こども基本法に関する次の記述のうち,適切なものを 2 つ選びなさい。
1 「こども」について,18 歳に満たない者と定義されている。
2 「こども施策」には,子育てに伴う喜びを実感できる社会の実現に資するため,就労,結婚,妊娠,出産,育児等の各段階に応じて行われる支援が含まれている。
3 基本理念の一つとして,教育基本法の精神にのっとり教育を受ける機会が等しく与えられることとされている。
4 都道府県は,こども大綱を勘案して,都道府県こども計画を定めなければならない。
5 児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者の通告義務が明記されている。

解説

正答は2と3です。
1→× こども基本法の「こども」に年齢の上限はありません。心身の発達の過程にある者と定義されています。
2→○ 記述のとおりです。
3→○ 記述のとおりです。
4→× 都道府県こども計画は、定めるよう努めるものとされています。
5→× 通告義務を定めているのは児童虐待防止法6条です。こども基本法には規定がありません。

こども基本法についての記事はこちら
こども基本法とは|こどもの定義・基本理念・こども大綱とこども計画を整理

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