第38回の「組織と経営」で出題された「SDCAサイクル」について解説します。30回で出題された「暗黙知の形式知化」「ナレッジマネジメント」との関係性も整理しておきましょう。
SDCAとは
SDCAは、Standardize(標準化)・Do(実行)・Check(評価)・Act(改善)の頭文字を取ったサイクルです。業務の手順を標準化し、その通りに実行し、逸脱がないか確認し、ズレがあれば是正するという流れを繰り返すことで、業務の質を安定させることを目的としています。
よく似た言葉にPDCAがありますが、PDCAは新しい改善を生み出すためのサイクルであるのに対し、SDCAはすでに確立されたやり方を標準化し、安定・維持することに主眼が置かれています。組織では、SDCAで業務を安定させ、そこからPDCAでさらに改善し、改善できた内容を再びSDCAで標準化するという形で、両者を交互に回していく運用が一般的です。
暗黙知の形式知化とは
暗黙知とは、経験豊富な職員が持つ勘やコツ、言葉にしにくいノウハウのことです。これに対して形式知は、マニュアルや手順書のように、誰が見ても同じように理解・実行できる形で言語化された知識を指します。
SDCAで業務を標準化しようとすると、ベテラン職員の頭の中にあった暗黙知を、手順書という形式知に落とし込む作業が必要になります。つまり暗黙知の形式知化は、SDCAを進める中で自然に起きることであり、SDCA自体の目的というより、標準化のために必要な作業の一つです。
ナレッジマネジメントとは
ナレッジマネジメントは、形式知化された知識やノウハウを、組織全体で共有し、活用できる仕組みとして整えることを指します。個人の中に留まっていた知識を組織の資産として蓄積し、誰もが使える状態にすることを目指す考え方です。
暗黙知が形式知化されただけでは、その知識は一部の書類やデータの中に眠ったままになってしまいます。それを組織全体で共有し、日々の業務に活かせるようにする仕組みづくりまで含めたものが、ナレッジマネジメントです。
3つのキーワードのつながり
これら3つの関係を整理すると、次のようになります。
SDCAは業務を標準化し、安定させるための手法です。その標準化を進める過程で、暗黙知の形式知化という作業が必要になります。そして、形式知化された知識を組織全体で共有・活用する仕組みが、ナレッジマネジメントです。
つまり、SDCAを回す中で暗黙知が形式知に変わり、その形式知を組織的に管理・活用する枠組みがナレッジマネジメントである、という一連の流れとして理解しておくと、試験でどの角度から問われても対応しやすくなります。
過去問にチャレンジ
38回問題128(太文字が今回出題されている分野です)
福祉サービスの経営に関する理論とその説明の組み合わせとして、次のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ブルー・オーシャン戦略 一般的な支援を総合的に提供するのではなく、従来存在しなかった全く新しい領域の事業を開始する。
2 ポジショニング理論 特定のターゲットを明確にして事業を考えるのではなく、地域の他の事業所も行っている一般的な支援を総合的に提供する。
3 コア・コンピテンス理論 法人設立当初からの事業で培った専門分野を生かすのではなく、新しい分野のサービスを開発・実施する。
4 リソース・ベースド・ビュー(資源ベース理論) 事業所内部の職員や設備の特徴・専門性を生かすのではなく、補助金や報酬制度の変化に応じて事業計画を立案する。
5 SDCAサイクル 支援方法は現場職員の判断を重視して組織的課題にはせず、支援の改善内容の継続はそれぞれの職員の判断で行う。
1 →○ ブルー・オーシャン戦略とは、既存の競争が激しい市場(レッド・オーシャン)ではなく、競合のいない未開拓の市場を新たに切り開く戦略のことです。「従来存在しなかった全く新しい領域の事業を開始する」という説明は正しく、これが本問の正答です。
2 →× ポジショニング理論とは、自社の立ち位置(ポジション)を明確にし、ターゲットや強みを絞り込んで差別化を図る理論です。選択肢の説明は「ターゲットを絞らず一般的な支援を総合的に提供する」となっており、理論の内容と逆になっています。
3 →× コア・コンピテンス理論とは、自社が長年培ってきた中核的な強み(コア・コンピテンス)を活かして競争優位を築く考え方です。選択肢は「培った専門分野を生かすのではなく新しい分野を開発する」となっており、理論の趣旨と逆です。
4 →× リソース・ベースド・ビュー(資源ベース理論)とは、組織内部の人材や設備といった経営資源(リソース)を強みの源泉とする考え方です。選択肢は「内部の資源を生かすのではなく、補助金や報酬制度の変化に応じる」となっており、理論の内容と逆になっています。
5 →× SDCAサイクルは、Standardize(標準化)・Do・Check・Actの頭文字で、支援方法や業務手順を標準化し、組織全体で安定した質を維持することを目的とする考え方です。選択肢の「現場職員の判断を重視し、改善の継続は職員個人の判断で行う」という説明は、標準化という本来の目的と逆の内容になっています。
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