法律が多すぎて覚えられない|福祉の法律は、どこを優先して読めばいいのか

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私は、社会福祉学科で社会福祉を学び始めたのではなく、法学部の社会保障法ゼミから勉強を始めました。だから、法律の骨子を見るのは決して苦手ではありません。法律のどこに着目すればいいか、ある程度分かることが多いんです。

実際に、国家試験対策の講師を続けているうちに、国家試験のために優先して読むべき条文が、ある程度決まっているのではないかということに気がつきました。

だから全部の条文を一気に読む必要はありません。まずはここの条文を確認することが大切です、というポイントをお伝えできたらと思います。

法律を覚えるのが苦手な方。法律の数がどれだけ多くても、実は見るところは同じです。なぜならどの法律も同じ「構造」だからです。障害者基本法も、知的障害者福祉法も、精神保健福祉法も、障害者雇用促進法も、障害者差別解消法も、確認する場所は変わりません。だからまず「もう、法律嫌だ」から脱却して、見るべきところをサクサク確認して、枠を理解しましょう!

①「目的」と「基本理念」を確認する

法律の第1条には法律の目的が書いてあります。目的を読むと、その法律を作った背景を読み取れることもあります。目的に書いてあることをいくつか抜粋しました。

例1 「生活困窮者に対する自立の支援に関する措置を講ずることにより、生活困窮者の自立の促進を図ることを目的とする」(生活困窮者自立支援法)

例2 「相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため(中略)施策を総合的かつ計画的に推進することを目的とする」(障害者基本法)

そして基本理念には、その目的に合わせて、これからどうしていくのかという方向性が書かれています。基本理念からダイレクトに出題されることも、決して珍しくありません。

例1 「孤独・孤立の状態は人生のあらゆる段階において何人にも生じ得るものであり、社会のあらゆる分野において孤独・孤立対策の推進を図ることが重要である」(孤独・孤立対策推進法)

例2 「生活困窮者に対する自立の支援は、生活困窮者の尊厳の保持を図りつつ、生活困窮者の就労の状況、心身の状況、地域社会からの孤立の状況その他の状況に応じて、包括的かつ早期に行われなければならない」(生活困窮者自立支援法)

目的と比較すると「具体的にどのような方法で」ということが記載されていることが読み取れると思います。

②「定義」を確認する

目的や基本理念を確認した後に見なければならないのが、「対象者」です。対象者は「定義」として法律にしっかりと規定されていることが多いです。私たちが日々勉強している中で「なんとなくわかっている言葉」、でも「意外と正しい定義がわかっていない」言葉はたくさんあります。この対象者をはっきりさせることが大切です。

そして、定義を問う問題は、これまで何度も出題されてきました。例えば第38回の問題49では、1問の中で、ヤングケアラー、困難な問題を抱える女性、住宅確保要配慮者と、複数の法律の定義が並べて問われています。

  • 障害者基本法 …… 障害者の定義
  • 身体障害者福祉法 …… 身体障害者の定義(別表に該当し、手帳の交付を受けた者。「障害があること」だけでは足りません)
  • 生活困窮者自立支援法 …… 生活困窮者の定義
  • 孤独・孤立対策推進法 …… 「孤独・孤立の状態」の定義
  • 住宅セーフティネット法 …… 住宅確保要配慮者の定義
  • 災害対策基本法 …… 要配慮者/避難行動要支援者の定義

まだまだ挙げられますが、まずはこれ。「定義」を必ず押さえる。ここがすべての出発点です。

③「国や地方公共団体の責務」を確認する

次に、国と地方公共団体が、それぞれ何をすることになっているのかを確認します。

国 …… 「〇〇基本計画」もしくは「〇〇基本方針」を策定しなければならない、というのが定番の条文です。

例1 「厚生労働大臣は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する施策の基本となるべき方針(以下「男女雇用機会均等対策基本方針」という。)を定めるものとする」(男女雇用機会均等法)

例2 「主務大臣は、障害福祉サービス及び相談支援並びに市町村及び都道府県の地域生活支援事業の提供体制を整備し、自立支援給付及び地域生活支援事業の円滑な実施を確保するための基本的な指針(以下「基本指針」という。)を定めるものとする」(障害者総合支援法)

次に地方公共団体は、「〇〇計画」について記載されるのが定番の形です。地方公共団体の計画は義務化されているものも多いですが、努力義務になっているものもありますので注意が必要です。

例1 「都道府県は、自殺総合対策大綱及び地域の実情を勘案して、当該都道府県の区域内における自殺対策についての計画(次項及び次条において「都道府県自殺対策計画」という。)を定めるものとする」(自殺対策基本法)

例2 「市町村は、基本指針に即して、五年を一期とする教育・保育等及び地域子ども・子育て支援事業の提供体制の確保その他この法律に基づく業務の円滑な実施に関する計画(以下「市町村子ども・子育て支援事業計画」という。)を定めるものとする」(子ども・子育て支援法)

「しなければならない」「するものとする」は義務、
「努めるものとする」は努力義務、
「〇〇することができる」は任意。

同じことを書いていても、強さが違います。

なお、法律によっては、地方公共団体だけでなく、国民やその他の関係者に関する条文が含まれることもあります。

例1 (国民の努力)「国民は、孤独・孤立の状態にある者に対する関心と理解を深めるとともに、国及び地方公共団体が実施する孤独・孤立対策に関する施策に協力するよう努めるものとする」(孤独・孤立対策推進法)

例2 (国民の努力及び義務)「国民は、自ら要介護状態となることを予防するため、加齢に伴って生ずる心身の変化を自覚して常に健康の保持増進に努めるとともに、要介護状態となった場合においても、進んでリハビリテーションその他の適切な保健医療サービス及び福祉サービスを利用することにより、その有する能力の維持向上に努めるものとする」(介護保険法)

④「機関・会議」を確認する

最後に、法律により様々な機関や会議が設置されています。例外的な規定がないわけではないですが、大きく次の3つに分類されます。

国レベルの「〇〇会議」「〇〇本部」

例1 「内閣府に、特別の機関として、孤独・孤立対策推進本部(以下「本部」という。)を置く」(孤独・孤立対策推進法)

例2 「内閣府に、中央防災会議を置く」(災害対策基本法)

情報共有・支援体制の整備の場である「〇〇協議会」

例1 「都道府県は、発達障害者の支援の体制の整備を図るため、発達障害者及びその家族、学識経験者その他の関係者並びに医療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を行う関係機関及び民間団体並びにこれに従事する者(次項において「関係者等」という。)により構成される発達障害者支援地域協議会を置くことができる」(発達障害者支援法)

例2 「地方公共団体は、単独で又は共同して、要保護児童(中略)の適切な保護又は要支援児童若しくは特定妊婦への適切な支援を図るため、関係機関、関係団体及び児童の福祉に関連する職務に従事する者その他の関係者(以下「関係機関等」という。)により構成される要保護児童対策地域協議会(以下「協議会」という。)を置くように努めなければならない」(児童福祉法)

自治体で個別の事案を検討する「〇〇支援会議」

例1 「都道府県等は、関係機関、(中略)生活困窮者に対する支援に関係する団体、当該支援に関係する職務に従事する者その他の関係者(中略)により構成される会議(以下この条において「支援会議」という。)を組織するように努めるものとする」(生活困窮者自立支援法)

例2 「市町村は、支援関係機関、(中略)地域生活課題を抱える地域住民に対する支援に従事する者その他の関係者(中略)により構成される会議(以下この条において「支援会議」という。)を組織することができる」(社会福祉法)

ここに記載されているものは、国家試験に比較的よく出ている法律の規定を例として挙げましたが、これ以外の法律にも似たような記載はたくさんあります。

各法律で、機関や会議がどうなっているのかを確認することも、私は欠かさずやっています。

⑤「所管する省庁」を確認する

国が出てきたときには、必ず省庁を確認しましょう。ある程度、グループがあります。

  • 内閣府 …… 障害者基本法、孤独・孤立対策推進法、災害対策基本法 など
    (このうち、こども関連は内閣府の外局であるこども家庭庁が扱っています。こども基本法、児童福祉法、子ども・子育て支援法など。2023年に移管されました)
  • 厚生労働省 …… 介護保険法、医療法 など
  • 法務省 …… 更生保護法 など
  • 国土交通省 …… 住宅セーフティネット法 など

ただし、これらの省庁が協働して施策を実施している場合もあります。

例えば医療観察法は、法務省と厚生労働省がともに関与しています。

住宅セーフティネット法も、国土交通省と厚生労働省が共同で管轄しています。

こういうパターンがあることも意識しておくと、理解しやすいかもしれませんね。

まとめ|まずは「幹」から

法律の読み方で迷子になっているとき、どこを見ていいのか分からないときは、

いまのような軸で読んでみてください。

目的と基本理念 → 定義 → 国と地方の責務 → 機関・会議 → 省庁。

細かい数字や固有名詞は、あとから枝葉としてぶら下げていけばいいです。

まずは「幹」からですよ。そして徐々に「枝葉」に広げていくイメージで。

(私が講義中によく使う図です)

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