DV防止法とは
DV防止法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律)は、平成13年(2001年)に成立し、平成14年(2002年)4月に全面施行されました。
その後たびたび改正されており、直近の令和5年改正(2023年)と令和6年4月1日施行(2024年)では、保護命令の対象や期間が広がり、罰則が引き上げられました。
この法律でいう配偶者には、法律婚の相手方だけでなく、事実婚の相手方と、生活の本拠を共にする交際相手が含まれます。離婚や関係の解消をした後も、引き続き暴力を受けるおそれがある場合は対象です。被害者の性別は問いません。
配偶者暴力相談支援センター
DV防止法において、被害者支援の支援の中核的役割を果たしているのが、配偶者暴力相談支援センターです。この支援センターの設置について、以下のように定めています。
・都道府県は、当該都道府県が設置する女性相談支援センターその他の適切な施設において、当該各施設が配偶者暴力相談支援センターとしての機能を果たすようにするものとする。
・市町村は、当該市町村が設置する適切な施設において、当該各施設が配偶者暴力相談支援センターとしての機能を果たすようにするよう努めるものとする。
この条文は、配偶者暴力相談支援センターという名称の独立した建物や機関を必ず用意しなさいという意味ではありません。都道府県が設置する女性相談支援センターその他の適切な施設が、何らかの形で、配偶者暴力相談支援センターとしての機能を果たしなさい(努めなさい)ということを示す条文です。
同じ3条の中で、配偶者暴力相談支援センターが行う業務も定められています。
①被害者に関する各般の問題について、相談に応ずること又は女性相談支援員若しくは相談を行う機関を紹介すること。
②被害者の心身の健康を回復させるため、医学的又は心理学的な指導その他の必要な指導を行うこと。
③被害者及びその同伴する家族の緊急時における安全の確保及び一時保護を行うこと。
④被害者が自立して生活することを促進するため、就業の促進、住宅の確保、援護等に関する制度の利用等について、情報の提供、助言、関係機関との連絡調整その他の援助を行うこと。
⑤保護命令の制度の利用について、情報の提供、助言、関係機関への連絡その他の援助を行うこと。
⑥被害者を居住させ保護する施設の利用について、情報の提供、助言、関係機関との連絡調整その他の援助を行うこと。
③の一時保護は、女性相談支援センターが自ら行うほか、厚生労働大臣が定める基準を満たす者に委託して行うこともできます。委託を受けた者には守秘義務が課されています。
女性相談支援センターについての記事はこちら
→ 女性支援新法とは|困難女性支援法の定義と女性相談支援センター・女性自立支援施設
保護命令
保護命令は、被害者の申立てにより、裁判所が配偶者に対して一定の行為を禁止する命令です。申立先は地方裁判所です(夫婦間の問題なので家庭裁判所に見えがちですが、地方裁判所ですので、注意してください)。保護命令に違反した場合は、2年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金です。
接近禁止命令・退去命令
接近禁止命令は、被害者の身辺につきまとうことや住居・勤務先付近をうろつくことを禁止するもので、期間は1年です。退去等命令は、被害者と共に住む住居からの退去を命じるもので、期間は原則2か月です。
その他の命令
このほか、被害者への電話等禁止命令、被害者の子への接近禁止命令と電話等禁止命令、被害者の親族等への接近禁止命令があります。いずれも被害者への接近禁止命令が出ていることが前提で、単独では出せません。
通報
DV防止法は、暴力を受けている人を発見したときの通報について、発見した人と医療関係者を分けて定めています。
・配偶者からの暴力(配偶者又は配偶者であった者からの身体に対する暴力に限る。)を受けている者を発見した者は、その旨を配偶者暴力相談支援センター又は警察官に通報するよう努めなければならない。
・医師その他の医療関係者は、その業務を行うに当たり、配偶者からの暴力によって負傷し又は疾病にかかったと認められる者を発見したときは、その旨を配偶者暴力相談支援センター又は警察官に通報することができる。この場合において、その者の意思を尊重するよう努めるものとする。
発見した人については通報するよう努める(努力義務)、医療関係者については通報することができる(任意規定)という違いがあります。医療関係者の通報には、本人の意思を尊重するよう努めることもあわせて定められています。
なお、刑法の秘密漏示罪をはじめとする守秘義務の規定は、これらの通報を妨げるものと解釈してはならないとされています。また医療関係者には、発見した者に対して配偶者暴力相談支援センター等の利用について情報を提供するよう努める義務も定められています。
協議会
協議会は、関係機関や関係団体が集まり、被害者に関する情報の交換と支援内容の協議を行う場です。令和5年改正で法律に位置づけられました。都道府県は組織するよう努めなければならず、市町村は組織することができると規定されています(5条の2)。
各福祉関連法の協議会についてまとめた記事はこちら
→ 福祉の「協議会」まとめ
令和5年改正のポイント
・接近禁止命令の期間が6か月から1年になり、電話等禁止命令の対象に、SNS等の送信とGPSによる位置情報の取得が加わりました。
・保護命令の申立てができる対象が広がりました。従来は身体に対する暴力と、生命・身体に害を加える旨の脅迫を受けた者に限られていましたが、自由・名誉・財産に対する脅迫を受けた者も加わりました。
・保護命令違反の罰則が、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金から、2年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金に引き上げられました。
・協議会が法定化されました。
過去問を解いてみましょう
第35回 問題82
家庭裁判所に関する次の記述のうち,正しいものを 1 つ選びなさい。
1 家庭裁判所は,近隣トラブルに関する訴訟を取り扱う。
2 家庭裁判所は,「DV防止法」に基づく保護命令事件を取り扱う。
3 家庭裁判所は,嫡出でない子の認知請求訴訟を取り扱う。
4 家庭裁判所は,労働審判を取り扱う。
5 家庭裁判所は,債務整理事件を取り扱う。
解説
1 →× 近隣トラブルは家庭に関する事件ではありません。
2 →× 保護命令を出すのは地方裁判所です。
3 →○ 認知請求訴訟は人事訴訟として、家庭裁判所が扱います。
4 →× 労働審判は地方裁判所が扱います。
5 →× 債務整理は地方裁判所が扱います。
家庭裁判所についての記事はこちら
→ 家庭裁判所とは|家事事件と少年事件・成年後見における役割
第33回 問題138
事例を読んで,Z配偶者暴力相談支援センターのH相談員(社会福祉士)によるこの時点での対応として,適切なものを 2 つ選びなさい。
〔事 例〕
Jさん(35歳)は夫(45歳)と娘(7歳)の3人暮らしである。日々の生活の中で、「誰のおかげで飯を食わせてもらっているのか。母親失格、人間としても駄目だ」等と毎日のように娘の前で罵倒され、娘もおびえており、Z配偶者暴力相談支援センターに相談に来た。H相談員に、夫の言葉の暴力に苦しんでいることを相談し、「もう限界です」と話した。Jさんは娘の成長にとってもよくないと思っている。
1 家庭裁判所に保護命令を申し立てるようJさんに勧める。
2 Jさんの希望があれば、Jさんと娘の一時保護を検討できるとJさんに伝える。
3 「身体的暴力はないのだから」と、もう少し様子を見るようJさんに伝える。
4 警察に通報する。
5 父親の行為は児童虐待の疑いがあるので、児童相談所に通告する。
解説
1 →× 保護命令の申立先は地方裁判所です。なお保護命令は、身体に対する暴力か、生命・身体・自由・名誉・財産に害を加える旨の脅迫を受けた場合に申し立てるもので、この事例の罵倒はいずれにも当たりません。
2 →○
3 →× 身体的暴力がなくても支援の対象です。様子を見るよう伝えるのは不適切です。
4 →× 警察が対応できるのは犯罪に当たる行為があった場合で、この事例のように身体的暴力が確認されていない段階では介入が難しくなります。Jさんはすでに配偶者暴力相談支援センターに相談しており、この時点ではセンターが相談と一時保護の検討を担う場面です。
5 →○ 子どもの目の前で配偶者に暴力を振るうことは、児童虐待防止法の心理的虐待にあたります。
第37回 問題93
事例を読んで,Aさんの状況を踏まえ,B市子育て支援課がAさん親子の支援のために,この時点で危機介入として速やかに連携すべき機関・施設として,適切なものを 2 つ選びなさい。
〔事 例〕
Aさん(32 歳)から,これまでも「夫(35 歳)から繰り返し暴言を浴びせられ,時に暴力を振るわれている。どうしたらよいか悩んでいる。夫から逃れたい」という相談を受けてきた。ある日「もう限界です」という訴えがあった。Aさんは, 4 歳の子を帯同しており,子には母親をかばう様子もみられる。Aさんの家庭は夫の収入によって生計を立てているが,その収入はほとんど夫が管理しており,Aさんは手元に所持金が全くない状況である。Aさんは,子とともに生活したいと望んでいる。B市子育て支援課は緊急受理会議を行った。
1 児童養護施設
2 母子生活支援施設
3 B市の女性相談支援員
4 女性自立支援施設
5 女性相談支援センター
解説
1 →× 児童養護施設は子どもだけが入所する施設です。子とともに生活したいというAさんの意向に沿いません。
2 →× 母子生活支援施設は母子で入所できる施設ですが、一時保護を経て生活を立て直していく段階で利用を検討する施設です。夫のもとから逃れることが必要な今の時点で、速やかに連携する先ではありません。
3 →○
4 →× 女性自立支援施設は困難な問題を抱える女性を入所させて保護する施設で、母子が一緒に生活する場ではありません。子とともに生活したいというAさんの意向に沿いません。
5 →○
危機介入として速やかに連携するのは、相談を受け止める市の女性相談支援員と、一時保護の機能をもつ女性相談支援センターです。ほかの3つは入所による支援を行う施設で、この時点で連携する先ではありません。

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