事例
地域包括支援センターで働く社会福祉士のAさんは、民生委員から「一人暮らしのBさん(82歳)が、最近買い物に出られなくなっているようだ」と連絡を受けました。Aさんが自宅を訪ねると、Bさんは足腰が弱って家事が難しくなっていましたが、「できるだけこの家で暮らしたい」と話しました。Aさんは、Bさんが自宅での生活を続けられるように、介護保険のサービスや近所の人の見守りを組み合わせて支えることにしました。
この記事では、この事例をもとに、ケアマネジメントの意義と目的、ケアマネジメントの過程、ケアマネジメントのモデルをご紹介します。その後に、ケアマネジメントについて問われた過去問を掲載していますので、実際に解けるかどうかを確かめながら読み進めてください。
ケアマネジメントとは
ケアマネジメントは、生活上の課題を抱える人に対して、必要なサービスや支援を組み合わせて結びつけ、地域での生活を続けられるように支える方法です。ケースマネジメントとも呼ばれます。
事例では、Aさん(社会福祉士)が、Bさん(クライエント)に必要な介護保険のサービスと、近所の人の見守りを組み合わせて、Bさんの生活を支えます。
ケアマネジメントの意義と目的
ケアマネジメントの意義と目的は、次のとおりです。
①住み慣れた地域での生活を、できるだけ長く続けられるようにする
②身体面や精神面だけでなく、住まいや家族関係なども含めて、生活を多面的にとらえる
③複数のサービスや身近な資源を、本人に合わせて組み合わせ、調整する
④本人の意向を中心に計画を立て、実施後も状況を確認し続ける
Bさん(クライエント)の場合、足腰の状態だけでなく、家の中の段差、近くに住む親族の有無、近所付き合いなども確かめます。そのうえで、ホームヘルパーによる家事の手伝い、配食サービス、民生委員や近所の人の見守りを組み合わせます。
国家試験では、ケアマネジメントの意義や目的について次のように出題されました。
○「幅広い生活課題に対応するため、身体面、精神面だけでなく、住環境や家族関係など多面的にアセスメントを行う。」(第34回問題109)
○「住み慣れた地域で長く生活が続けられるようにするため、身近な資源を活用・調整する。」(第34回問題109)
×「複数のサービス事業者が支援を行うため、ケアマネジャーのモニタリング業務が省略できる。」(第34回問題109)
×「家族の望みどおりのケアプランが作成されるため、利用者の満足度が高くなる。」(第34回問題109)
×「標準化されたケアプランを選択すればよいため、利用者の負担軽減になる。」(第34回問題109)
ケアマネジメントの過程
ケアマネジメントは、次の順に進みます。
①ケースの発見・リファーラル
②スクリーニング
③インテーク
④アセスメント
⑤ケアプランの作成
⑥ケアプランの実施
⑦モニタリング
⑧再アセスメント
⑨終結
ケースの発見・リファーラル(紹介)
リファーラルは、支援が必要だと判断された人を、地域の関係機関などが支援する機関に連絡し、紹介することです。事例では、民生委員がBさん(クライエント)のことを地域包括支援センターに連絡しました。これがリファーラルです。
スクリーニング(ふるいわけ・選別)
スクリーニングは、その人がケアマネジメントの対象になるかどうかを確かめることです。複数のサービスを組み合わせる必要があるかどうかを見きわめます。
インテーク(受け入れる・取り入れる)
インテークでは、ケアマネジメントについて説明し、本人が利用するかどうかの意思を、文書などで確認します。
アセスメント
アセスメントは、本人の生活の状況やニーズを、情報を集めて分析することです。身体面、精神面、住まい、家族関係、経済状況など、生活を多面的にとらえます。
ケアプランの作成と実施
ケアプランの作成では、アセスメントの結果をもとに、本人や家族の意向を聴きながら、ニーズを満たす方法を決めます。ケアプランの実施では、計画に沿ってサービスを結びつけます。
モニタリングと再アセスメント
モニタリングは、計画どおりにサービスが提供されているか、本人の状況に変化がないかを確かめることです。再アセスメントは、本人の状況が変わったときに、改めて情報を集め、課題を分析し直すことです。
事例で、Bさん(クライエント)が転んで歩くのがさらに難しくなったとき、Aさん(社会福祉士)は改めて情報を集め、必要なサービスを見直します。これが再アセスメントです。
終結
課題が解決したときや、ほかの支援に移るときには、ケアマネジメントを終えます。それまでの支援の経過と結果を、全体として評価します。
国家試験では、ケアマネジメントの過程について次のように出題されました。
○「リファーラルとは、支援が望まれると判断された人々を、地域の関係機関等が支援提供機関などに連絡し、紹介することである。」(第33回問題111)
○「クライエントの生活状況の変化によるサービス内容の見直しのために,新たに情報収集し,課題の分析を行った。」(第36回問題107、再アセスメント)
×「アセスメントとは、クライエントや家族の意向に沿ってニーズを充足する方法を決定することである。」(第33回問題111)→ケアプランの作成の説明です。
×「ケアプランの作成とは、ケアマネジメントの対象となるかどうかを確認することである。」(第33回問題111)→スクリーニングの説明です。
×「ケアプランの実施とは、ケアマネジメントについて説明をし、利用意思を文書等により確認することである。」(第33回問題111)→インテークの説明です。
×「スクリーニングとは、一定期間の後に支援経過と結果を全体的に評価することである。」(第33回問題111)→終結の段階の説明です。
ソーシャルワークの過程についての記事はこちら
→ソーシャルワークの過程|ケースの発見からアフターケアまでの8段階
ケアマネジメントのモデル
ケアマネジメントには、どこまでの機能を含めるかによって、次のモデルがあります。
①最小限モデル:アウトリーチ、アセスメント、ケアプランの作成、サービス提供者への送致という中核的な機能に絞ったモデル
②コーディネーションモデル:最小限モデルの機能に、クライエントの代弁(アドボカシー)などの機能を加えたモデル
③包括的モデル:さらに、資源開発に向けての弁護機能、サービスの品質の監視、市民教育などを含めたモデル
また、何を目指すかによって、次の2つに分けることもあります。
①利用者指向モデル:本人を尊重し、本人の利益を高めるというソーシャルワークの価値と倫理を基盤にするモデル
②システム指向モデル:効果的で効率的なサービスの調整を目指すモデル
国家試験では、ケアマネジメントのモデルについて次のように出題されました。
○「クライエントのケアプランを作成し、サービス提供者へ送致するまでの中核的な機能に焦点化したものを最小限モデルという。」(第32回問題111)
×「クライエントが利用する資源開発に向けての弁護機能、サービスの品質の監視、市民教育を含めるものをコーディネーションモデルという。」(第32回問題111)
×「クライエント本人を尊重し、利用者の利益を向上させるというソーシャルワークの価値、倫理を基盤にするものをシステム指向モデルという。」(第32回問題111)
×「クライエントに対して、効果的で効率的なサービスの調整を目指すものを利用者指向モデルという。」(第32回問題111)
過去問を解いてみましょう
第38回問題70
事例を読んで,相談支援事業所のB相談支援専門員(社会福祉士)がCさんへの再アセスメントで行うことに関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。
〔事 例〕
Cさん(27歳,男性)は,19歳で統合失調症を発症し2か月入院した。退院後は,デイケアやグループホームを活用して生活訓練を行ってきた。2年前からは,日中は週5日間,就労継続支援A型事業所で,清掃作業とチラシの折り込み作業を行っている。現在は症状も安定し,服薬管理も問題なく,事業所の給料と年金で一人暮らしをしている。Cさんは,引き続き,相談支援計画を作成しているBに「A型事業所の職員を見ていて,正社員の仕事に就きたいと思うようになった」と相談してきた。
1 ピアスタッフとしてA型事業所で働くことの意思の有無を確認する。
2 正社員での就労に向けた課題を確認する。
3 A型事業所で働くメンバーにCさんの転職の可能性を確認する。
4 正社員での就労に向けた具体的な手段と手続きを決めて,Cさんに確認する。
5 就労意欲の高まりと,現実認識の程度を確認する。
解説
1→×Cさんが希望しているのは正社員の仕事です。ピアスタッフとして働くことは、Cさんの希望とは別の話です。
2→○再アセスメントでは、新たな希望に向けて、改めて課題を確かめます。
3→×Cさんの転職について確かめる相手は、Cさん本人です。
4→×具体的な手段と手続きを決めるのは、ケアプラン(計画)を作り直す段階です。再アセスメントでは、まず情報を集めて課題を分析します。
5→○就労への意欲と、それをどこまで現実的に考えているかを確かめるのは、再アセスメントの情報収集です。
第36回問題107
次の記述のうち,ケアマネジメントの一連の過程における再アセスメントに関するものとして,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 サービスを新たに開始するために,クライエントの望む生活に向けた目標を設定し,その実現に向けて支援内容を決定した。
2 クライエントの生活状況の変化によるサービス内容の見直しのために,新たに情報収集し,課題の分析を行った。
3 クライエントの課題が解決したため,ケアマネジメントを終了することを確認した。
4 クライエントになる可能性のある人の自宅やその地域を訪問し,ニーズを把握した。
5 サービスの終結をした者から,新たにサービス利用の申し出があったため,情報の収集を行った。
解説
1→×目標を設定し、支援内容を決めるのは、ケアプランの作成です。
2→○状況が変わったときに、改めて情報を集め、課題を分析し直すのが再アセスメントです。
3→×ケアマネジメントを終えることを確認するのは、終結です。
4→×まだクライエントになっていない人を訪ねてニーズを把握するのは、ケースの発見(アウトリーチ)です。
5→×一度終結した人から新たな申し出があったときは、改めてインテークから始めます。
第34回問題109
ケアマネジメントの意義や目的に関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。
1 複数のサービス事業者が支援を行うため、ケアマネジャーのモニタリング業務が省略できる。
2 幅広い生活課題に対応するため、身体面、精神面だけでなく、住環境や家族関係など多面的にアセスメントを行う。
3 住み慣れた地域で長く生活が続けられるようにするため、身近な資源を活用・調整する。
4 家族の望みどおりのケアプランが作成されるため、利用者の満足度が高くなる。
5 標準化されたケアプランを選択すればよいため、利用者の負担軽減になる。
解説
1→×複数の事業者が関わるからこそ、計画どおりに支援が届いているかを確かめるモニタリングが必要です。
2→○生活を多面的にとらえるのは、ケアマネジメントの意義のひとつです。
3→○住み慣れた地域での生活を続けられるようにするのが、ケアマネジメントの目的です。
4→×計画の中心になるのは本人の意向です。
5→×ケアプランは、一人ひとりの状況に合わせて作ります。
第33回問題111
ケアマネジメントの過程に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 アセスメントとは、クライエントや家族の意向に沿ってニーズを充足する方法を決定することである。
2 ケアプランの作成とは、ケアマネジメントの対象となるかどうかを確認することである。
3 ケアプランの実施とは、ケアマネジメントについて説明をし、利用意思を文書等により確認することである。
4 リファーラルとは、支援が望まれると判断された人々を、地域の関係機関等が支援提供機関などに連絡し、紹介することである。
5 スクリーニングとは、一定期間の後に支援経過と結果を全体的に評価することである。
解説
1→×ニーズを充足する方法を決めるのは、ケアプランの作成です。
2→×対象となるかどうかを確認するのは、スクリーニングです。
3→×ケアマネジメントについて説明し、利用の意思を確認するのは、インテークです。
4→○リファーラルの説明です。
5→×経過と結果を全体的に評価するのは、終結の段階です。
第32回問題111
ケースマネジメントの範囲や目的に関するモデルについての次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 クライエントのケアプランを作成し、サービス提供者へ送致するまでの中核的な機能に焦点化したものを最小限モデルという。
2 クライエントの暮らす地域のケアシステムを変革するために、ネットワーク推進、システム改変、計画化(施策提言)を含めるものを包括的モデルという。
3 クライエントが利用する資源開発に向けての弁護機能、サービスの品質の監視、市民教育を含めるものをコーディネーションモデルという。
4 クライエント本人を尊重し、利用者の利益を向上させるというソーシャルワークの価値、倫理を基盤にするものをシステム指向モデルという。
5 クライエントに対して、効果的で効率的なサービスの調整を目指すものを利用者指向モデルという。
解説
1→○最小限モデルの説明です。
2→×包括的モデルに含まれるのは、資源開発に向けての弁護機能、サービスの品質の監視、市民教育などです。
3→×選択肢3の内容は、包括的モデルの説明です。
4→×ソーシャルワークの価値と倫理を基盤にするのは、利用者指向モデルです。
5→×効果的で効率的なサービスの調整を目指すのは、システム指向モデルです。
その他ソーシャルワークに関連する記事マップはこちら
→ソーシャルワーク 記事マップ|基盤と専門職・理論と方法(共通・専門)旧:相談援助


コメント