ソーシャルワークの倫理|レヴィ・ドルゴフの倫理原則・倫理的ジレンマ

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ソーシャルワーク
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ソーシャルワークの倫理で出題された論点

ソーシャルワークの基盤と専門職では、第31回から第38回までに、ソーシャルワークの倫理が次の三つの形で出題されています。
①倫理とは何か→レヴィの説明(第36回問題95)
②判断に迷ったときの優先順位→ドルゴフらの倫理原則(第37回問題69)
③事例の中の倫理的ジレンマ→同時には果たせない二つの責任(第32回問題96、第36回問題96)

倫理綱領の前文や倫理基準の並びは、テキストで確認してください。この記事では、試験で実際に問われた文言を紹介します。

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レヴィ:倫理は、価値を人との関わりに当てはめたもの

レヴィは、価値と倫理を分けて説明しました。価値は、何を大切にするかという信念です。倫理は、その価値を、人間関係とその交互作用に当てはめたものです。

たとえば、「本人が自分のことを自分で決める」ことを大切にするのは、価値です。その価値を実際の面接に当てはめると、本人が迷っていてもソーシャルワーカーが先回りして決めず、本人が決められるように情報を伝えて待つ、という行動になります。この行動の決まりが、倫理です。

国家試験では、レヴィについて次のように出題されました。
○「レヴィ(Levy, C.)は,倫理とは,人間関係とその交互作用に対して価値が適用されたものであるとした。」(第36回問題95)

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ドルゴフらの倫理原則

ドルゴフ、ローウェンバーグ、ハリントンは、ソーシャルワーカーが倫理的な判断に迷ったときに使う七つの倫理原則を、優先順位をつけて示しました。上にある原則ほど優先します。

順位 倫理原則 内容 1 生命の保護 人の生命を守る 2 平等と不平等 同じ状況にある人を同じように扱う 3 自律と自由 本人の自律と自由を尊重する 4 最小限の害 害が避けられないときは最も小さい害を選ぶ 5 生活の質 人々の生活の質を高める方法を選ぶ 6 プライバシーと守秘義務 プライバシーと秘密を守る 7 誠実と情報の開示 関連する情報をすべて伝える ドルゴフらの倫理原則をもとに著者が作成した図です。無断転載・複製はご遠慮ください。

たとえば、本人から「誰にも言わないで」と頼まれた話の中に、命に関わる内容が含まれていたとします。6番目のプライバシーと守秘義務よりも、1番目の生命の保護が優先します。ソーシャルワーカーは、本人の命を守るために、必要な相手に情報を伝えることを考えます。

国家試験では、ドルゴフらの倫理原則について次のように出題されました。
○「平等と不平等に関する倫理原則では,同じ環境に置かれている人には誰に対しても同じように対応しなければならない。」(第37回問題69)
×「プライバシーと守秘義務に関する倫理原則では,全ての人が自らのプライバシーと守秘義務を強化しなければならない。」(第37回問題69)→「自らのプライバシーを強化する」ではなく、「全ての人のプライバシーと守秘義務を強める選択肢を選ぶ」のが、プライバシーと守秘義務の原則です。
×「自律と自由に関する倫理原則では,全ての人々の生活の質を高めるような選択肢を選ばなければならない。」(第37回問題69)→これは自律と自由の原則ではなく、5番目の生活の質の原則のことです。
×「最小限の害に関する倫理原則では,あらゆる人の生活や生命を守らなければならない。」(第37回問題69)→これは最小限の害の原則ではなく、1番目の生命の保護の原則のことです。
×「誠実と情報の開示に関する倫理原則では,クライエントへの関連の有無に関係なく,全ての情報を伝えなければならない。」(第37回問題69)→「関連の有無に関係なく全ての情報」ではなく、「関連する情報」をすべて伝えるのが、誠実と情報の開示の原則です。

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倫理的ジレンマ

倫理的ジレンマは、ソーシャルワーカーが負っている二つ以上の責任を、同時には果たせない状態です。どちらの責任も正しいので、一方を選ぶと、もう一方を果たせなくなります。

社会福祉士の倫理綱領は、倫理基準として、次の四つの責任を挙げています。
①クライエントに対する倫理責任
②組織・職場に対する倫理責任
③社会に対する倫理責任
④専門職としての倫理責任

試験の事例では、この責任どうしがぶつかる場面が出題されています。

第32回問題96では、急性期病院のD社会福祉士が、Eさん(クライエント、85歳)を担当しています。Eさんは一人暮らしが不安になり、入院を続けたいと希望しています。一方で、病院はDに、Eさんの速やかな退院支援を依頼しています。Eさんの希望に沿うことはクライエントに対する責任、病院の依頼に沿うことは所属機関に対する責任です。この二つを同時には果たせないことが、倫理的ジレンマとして出題されました。

第36回問題96では、Bさん(クライエント、小学5年生)が、A(スクールソーシャルワーカー)に、いじめを受けていることを打ち明けます。Bさんは「他の人には言わないで欲しい」と頼みました。Bさんの意思を尊重すれば、誰にも伝えないことになります。一方で、Aには、いじめからBさんを守る責任(クライエントの保護に関する責任)と、配置されている学校に報告する責任があります。Bさんの意思の尊重と、この二つの責任がぶつかることが、倫理的ジレンマとして出題されました。

国家試験では、倫理的ジレンマについて次のように出題されました。
○入院の継続を希望するEさんの退院支援を依頼されたD社会福祉士の倫理的ジレンマとして「クライエントに対する責任と、所属機関に対する責任」(第32回問題96)
○いじめを「他の人には言わないで欲しい」と話すBさんの意思を尊重することに対する倫理的ジレンマとして「クライエントの保護に関する責任」「学校に報告する責任」(第36回問題96)
×同じ問題の選択肢「別の小学校に配置されているスクールソーシャルワーカーに報告する責任」(第36回問題96)→Aが報告する相手は、配置されているX小学校です。

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過去問を解いてみましょう

第36回問題95

この問題は、ソーシャルワークを発展させた人物を問う問題です。倫理に関係するのは選択肢1のレヴィで、この記事ではレヴィを取り上げています。選択肢2〜5の人物は、倫理とは別の分野なので、この記事では取り上げていません。解説に正しい組み合わせを書いていますので、正誤を確認してください。

ソーシャルワークを発展させた人物に関する次の記述のうち,最も適切なものを 1 つ選びなさい。

1 レヴィ(Levy, C.)は,倫理とは,人間関係とその交互作用に対して価値が適用されたものであるとした。
2 トール(Towle, C.)は,ジェネラリストの観点からソーシャルワークの統合化を図り,ジェネラリスト・ソーシャルワークを提唱した。
3 アプテカー(Aptekar, H.)は,相互連結理論アプローチを提唱し,それぞれの理論は相互に影響を及ぼし合い,結びついていると論じた。
4 ジョンソン(Johnson, L.)は,社会的目標を達成するために不可欠な要素として,4 つの基本的ニーズを提示した。
5 ターナー(Turner, F.)は,機能主義の立場に立ちつつ,診断主義の理論を積極的に取り入れ,ケースワークとカウンセリングを区別した。

解説

1→○レヴィの説明です。価値を人との関わりに当てはめたものが倫理です。
2→×ジェネラリスト・ソーシャルワークを提唱したのは、ジョンソンらです。トールは『コモン・ヒューマン・ニーズ』を著しました。
3→×相互連結理論アプローチを提唱したのは、ターナーです。
4→×人間に共通する基本的ニーズを示したのは、トールです。
5→×機能主義の立場で診断主義の理論を取り入れ、ケースワークとカウンセリングを区別したのは、アプテカーです。

第37回問題69

ドルゴフ(Dolgoff, R.)らによって提示された倫理原則に関する次の記述のうち,正しいものを 1 つ選びなさい。

1 平等と不平等に関する倫理原則では,同じ環境に置かれている人には誰に対しても同じように対応しなければならない。
2 プライバシーと守秘義務に関する倫理原則では,全ての人が自らのプライバシーと守秘義務を強化しなければならない。
3 自律と自由に関する倫理原則では,全ての人々の生活の質を高めるような選択肢を選ばなければならない。
4 最小限の害に関する倫理原則では,あらゆる人の生活や生命を守らなければならない。
5 誠実と情報の開示に関する倫理原則では,クライエントへの関連の有無に関係なく,全ての情報を伝えなければならない。
(注)「ドルゴフ(Dolgoff, R.)ら」とは,2009 年に Ethical Decisions for Social Work Practice(8th ed.)を著したドルゴフ,ローウェンバーグ(Loewenberg, F.M.)とハリントン(Harrington, D.)のことである。

解説

1→○平等と不平等の原則です。同じ状況にある人は、同じように扱います。
2→×「自らのプライバシーを強化する」ではなく、「全ての人のプライバシーと守秘義務を強める選択肢を選ぶ」のが、プライバシーと守秘義務の原則です。
3→×これは自律と自由の原則ではなく、5番目の生活の質の原則のことです。自律と自由の原則は、本人の自律と自由を尊重する選択肢を選ぶ、というものです。
4→×これは最小限の害の原則ではなく、1番目の生命の保護の原則のことです。最小限の害の原則は、害が避けられないときは、最も小さい害になる選択肢を選ぶ、というものです。
5→×「関連の有無に関係なく全ての情報」ではなく、「関連する情報」をすべて伝えるのが、誠実と情報の開示の原則です。

第32回問題96

事例を読んで、D社会福祉士が抱える倫理的ジレンマとして、最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕
V病院はこの地域の急性期医療の拠点であり、複数の社会福祉士が働いており、円滑な退院支援を心掛けている。D社会福祉士が担当したEさんは一人暮らしの85歳の男性で、猛暑による脱水症状のため緊急搬送された。入院して10日目で全身状態は落ち着き、D社会福祉士にEさんの速やかな退院支援を行うよう依頼があった。Eさんは今回の入院で一人暮らしが不安になり、当面V病院での入院継続を希望している。困惑したD社会福祉士は、同僚のF社会福祉士にも相談することにした。

1 クライエントの利益に対する責任と、記録の開示
2 クライエントに対する責任と、所属機関に対する責任
3 同僚に対する責任と、専門性への責任
4 クライエントとの信頼関係と、信用失墜行為の禁止
5 守秘義務と、制度や法令遵守に対する責任

解説

1→×この事例で問題になっているのは、退院の時期です。記録の開示を求める場面は、事例に書かれていません。
2→○入院を続けたいEさん(クライエント)と、速やかな退院支援を求める病院(所属機関)の間で、Dは板挟みになっています。
3→×Dが同僚のFに相談するのは、ジレンマを解くための行動です。同僚に対する責任と専門性への責任がぶつかる場面は、事例に書かれていません。
4→×Dが信用失墜行為をしそうな場面は、事例に書かれていません。
5→×秘密を漏らす場面や、法令に反する場面は、事例に書かれていません。

第36回問題96

事例を読んで,X小学校に配置されているAスクールソーシャルワーカー(社会福祉士)が,Bさんの意思を尊重することに対する倫理的ジレンマとして,適切なものを 2 つ選びなさい。

〔事 例〕
Aは, 2 学期に入ったある日,暗い顔をしているBさん(小学 5 年生)に声をかけた。Bさんは,初めは何も語らなかったが,一部の同級生からいじめを受けていることを少しずつ話し出した。そして,「今話していることが知られたら,ますますいじめられるようになり,学校にいづらくなる。いじめられていることは,自分が我慢すればよいので,他の人には言わないで欲しい」と思いつめたような表情で話した。

1 クライエントの保護に関する責任
2 別の小学校に配置されているスクールソーシャルワーカーに報告する責任
3 学校に報告する責任
4 保護者会に報告する責任
5 いじめている子の保護者に対する責任

解説

1→○いじめからBさんを守る責任です。「言わないで」というBさんの意思を尊重すると、この責任を果たしにくくなります。
2→×Aが配置されているのはX小学校です。報告する相手は、配置されているX小学校です。
3→○Aは、配置されているX小学校に報告する責任を負っています。「言わないで」というBさんの意思とぶつかります。
4→×保護者会は、学校の保護者全体の集まりです。保護者会に報告すると、Bさんのプライバシーを守れなくなります。
5→×Aが責任を負う相手は、クライエントのBさんと、配置されているX小学校です。いじめている子の保護者に対する責任は、この事例のジレンマとして挙げられるものではありません。

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