ナラティヴアプローチ(ホワイト・エプストン)|ポストモダン・社会構成主義とドミナント・ストーリー

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ソーシャルワーク
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ナラティヴアプローチとは

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たくさんあるので、読む順番もご紹介しています。

ナラティヴアプローチは、ホワイトとエプストンが示した実践モデルです。

テーマは、クライエントの主体性と語り(物語)を尊重することです。専門家が客観的に分析して「あなたの問題はこれだ」と決めつけるのではなく、本人が出来事をどう捉え、どう語っているかを大切にします。

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背景にある2つの考え方

ナラティヴアプローチの土台には、従来の「科学的・客観的な正解」を疑う2つの思想があります。

社会構成主義は、「問題」が最初から客観的に存在するものではなく、人々の関わりや社会的な意味づけによって作られるという立場です。たとえば「不登校」という言葉や枠組み自体が、社会によって定義されたものだと考えます。

ポストモダンは、「専門家が客観的に測れば唯一の正しい答えがわかる」という近代的な考え方を疑う立場です。その正しさは誰基準なのか、を問い直します。

つまり、専門家が正解を押し付けるのではなく、本人の語りの中にこそ真実がある、という立場に立つのがナラティヴアプローチです。

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2つの「ストーリー」

ナラティヴアプローチを理解する上で外せないのが、次の2つの用語です。

ドミナント・ストーリー(支配的な物語)は、「自分はダメな人間だ」「どうせ失敗する」など、クライエント自身を苦しめ、支配してしまっている物語です。

オルタナティヴ・ストーリー(もうひとつの物語)は、対話を通して見出す、これまでの物語に隠れていた「うまくいった経験」や新たな解釈に基づいた物語です。

支援のゴールは、クライエント自身を苦しめているドミナント・ストーリーを変容させ、対話の中でオルタナティヴ・ストーリーを構築することです。過去の出来事に新たな意味を見出し、人生の物語を書き直す、その手伝いをするのが支援者の役割になります。

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支援者の基本姿勢

支援者の関わり方は、次の四つの考え方で整理できます。

①本人の言葉で語ってもらう→出来事をどう受け止めているかを、本人に語ってもらう
②解釈を押し付けない→支援者の側で、出来事の意味を決めない
③語りを止めない→否定したり、なだめたりして、話を終わらせない
④書き換えは本人が行う→支援者が助言で答えを示すのではなく、本人が物語を語り直すのに伴走する

語るのはあくまで本人です。支援者は本人が安心して語れる場をつくり、自ら物語を書き換えていくプロセスに伴走します。

国家試験では、ナラティヴアプローチについて次のように出題されました。
○「ナラティヴアプローチでは、クライエントのドミナントストーリーを変容させることを目指し、オルタナティヴストーリーを作り上げ、人生を再構築するよう促す。」(第35回問題99)
○「ナラティブ・アプローチでは,クライエントがこれまでに気づいていなかった真実や過去の出来事に対する新たな解釈を見い出し,人生を「書き直す」ための助けをする。」(第38回問題122)
○ポストモダンの影響を受けたソーシャルワークとして「クライエントの主体性や語りを重視する。」(第31回問題93)
×「社会構成主義への批判から発展している。」(第31回問題93)→社会構成主義への批判から発展したのではなく、社会構成主義の影響を受けて発展しました。
×「課題中心アプローチは、クライエントが自らの人生のストーリーを理解し、新たなストーリーに書き換えていくことを目指す。」(第31回問題103)→これは課題中心アプローチではなく、ナラティヴアプローチのことです。
×「サリービー(Saleebey, D.)のストレングスアプローチは、クライエントの否定的な問題が浸み込んでいるドミナントストーリーに焦点を当て家族療法を行う。」(第34回問題100)→これはストレングスアプローチではなく、ナラティヴアプローチのことです。
×「ホワイト(White, M.)とエプストン(Epston, D.)のナラティヴアプローチは、クライエントの生活史や語り、経験の解釈などに関心を寄せ、希望や意欲など、肯定的側面に着目する。」(第34回問題100)→希望や意欲などの肯定的側面に着目するのは、ナラティヴアプローチではなく、ストレングスアプローチです。

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過去問を解いてみましょう

第31回問題93

ポストモダンの影響を受けたソーシャルワークに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 クライエントの主体性や語りを重視する。
2 クライエントの欠点を直す援助を指向する。
3 社会構成主義への批判から発展している。
4 客観主義、実証主義を追求する。
5 サービス提供の効率性を求める。

解説

1→○専門家の「客観的な正解」を疑い、本人の語りを重視するのが、ポストモダンの影響を受けたソーシャルワークです。
2→×欠点を見つけて直すという発想は、原因を特定して治療する立場のものです。
3→×社会構成主義への批判から発展したのではなく、社会構成主義の影響を受けて発展しました。
4→×客観主義や実証主義を疑うところから出発しています。
5→×効率性を求める立場ではありません。本人の語りに時間をかけて耳を傾けます。

第31回問題101

事例を読んで、この場面におけるナラティブ・アプローチに基づくA生活相談員(社会福祉士)の応答として、最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕
Bさん(85歳、男性)は、特別養護老人ホームに入所している。妻は10年前に亡くなっており、子どももいないため身寄りがない。Bさんは、話し相手もおらず、部屋に閉じ籠もりがちである。ある時、A生活相談員に対して、「生きていても仕方がない。早くお迎えがくればいいのに」と語った。

1 「そのような悲しいことは言わないでください」
2 「何があなたをそのような気持ちにさせるのか教えてください」
3 「奥さんの死がBさんの孤独を深めているのかもしれません」
4 「グループ活動に積極的に参加するといいと思います」
5 「この先、きっといいこともありますよ」

解説

1→×語りを止めてしまっています(③語りを止めない)。
2→○Bさん自身の言葉で語ってもらう問いかけです(①本人の言葉で語ってもらう)。
3→×A生活相談員の側で、出来事の意味を決めています(②解釈を押し付けない)。
4→×助言で答えを示しています(④書き換えは本人が行う)。
5→×なだめて話を終わらせています(③語りを止めない)。

第35回問題99

ソーシャルワークのアプローチに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 行動変容アプローチでは、クライエントの主体的な意思決定や自己選択が重視され、自分の行動と決定によって生きる意味を見いだすことを促す。
2 問題解決アプローチでは、クライエントのニーズを機関の機能との関係で明確化し、援助過程の中で、社会的機能を高めるための力の解放を焦点とする。
3 実存主義アプローチでは、その接触段階で、クライエントの動機づけ・能力・機会についてのソーシャルワーカーからの探求がなされる。
4 ナラティヴアプローチでは、クライエントのドミナントストーリーを変容させることを目指し、オルタナティヴストーリーを作り上げ、人生を再構築するよう促す。
5 機能的アプローチでは、ターゲット問題を明確化し、クライエントが優先順位をつけ、短期処遇を目指す。

解説

1→×これは行動変容アプローチではなく、実存主義アプローチのことです。
2→×これは問題解決アプローチではなく、機能的アプローチのことです。
3→×これは実存主義アプローチではなく、問題解決アプローチのことです。動機づけ・能力・機会は、パールマンが示したものです。
4→○ナラティヴアプローチの説明です。
5→×これは機能的アプローチではなく、課題中心アプローチのことです。

第38回問題122

ソーシャルワークの支援に関する次の記述のうち,適切なものを 2 つ選びなさい。

1 パーソン・センタード・アプローチでは,不適応はその人の問題というより環境の問題と捉え,環境を人に合うように変えたり調整したりする。
2 エンパワメント・アプローチは,クライエントが自身の思考パターンを見い出し,誤った信念を修正して,内面化された抑圧に対処させる方法である。
3 ナラティブ・アプローチでは,クライエントがこれまでに気づいていなかった真実や過去の出来事に対する新たな解釈を見い出し,人生を「書き直す」ための助けをする。
4 認知行動アプローチは,まず偏った行動を変えることにより思考プロセスの変化を促すための支援方法である。
5 課題中心アプローチでは,支援者が専門的な観点から優先順位が高いと判断した課題に焦点を当てて解決する。

解説

1→○パーソン・センタード・アプローチの説明です。合わないのは人ではなく環境だと考え、環境のほうを調整します。
2→×思考パターンを見つけて誤った信念を修正するのは、エンパワメント・アプローチではなく、認知行動アプローチの考え方です。
3→○ナラティブ・アプローチの説明です。
4→×認知行動アプローチは、物事の受け止め方(認知)に働きかけて、感情や行動の変化につなげる方法です。
5→×取り組む課題を選ぶのは、支援者ではなくクライエントです。

第34回問題100

ソーシャルワークのアプローチに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 ソロモン(Solomon, B.)のエンパワメントアプローチは、人の自我機能に着目し、自己対処できないほどの問題に直面しバランスを崩した状態を危機と捉える。
2 キャプラン(Caplan, G.)の危機介入アプローチは、クライエントが社会から疎外され、抑圧され、力を奪われていく構造に目を向ける。
3 ホワイト(White, M.)とエプストン(Epston, D.)のナラティヴアプローチは、クライエントの生活史や語り、経験の解釈などに関心を寄せ、希望や意欲など、肯定的側面に着目する。
4 リード(Reid, W.)とエプスタイン(Epstein, L.)の課題中心アプローチは、クライエントが解決を望む問題を吟味し、計画的に取り組む短期支援である。
5 サリービー(Saleebey, D.)のストレングスアプローチは、クライエントの否定的な問題が浸み込んでいるドミナントストーリーに焦点を当て家族療法を行う。

解説

1→×これはエンパワメントアプローチではなく、危機介入アプローチのことです。
2→×これは危機介入アプローチではなく、エンパワメントアプローチのことです。
3→×希望や意欲などの肯定的側面に着目するのは、ナラティヴアプローチではなく、ストレングスアプローチです。
4→○課題中心アプローチの説明です。
5→×ドミナントストーリーに焦点を当てるのは、ストレングスアプローチではなく、ナラティヴアプローチです。

第31回問題103

ソーシャルワークのアプローチに関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 解決志向アプローチは、クライエントが抱く解決のイメージを尊重し、その実現に向けてクライエントの社会的機能を高めることを目指す。
2 行動変容アプローチは、クライエントが、置かれている否定的な抑圧状況を認識し、自らの能力に気付き、その能力を高め、問題に対処することを目指す。
3 エンパワメントアプローチは、行動を学習の結果として捉え、正しく学習することにより問題行動を消去することを目指す。
4 フェミニストアプローチは、クライエント自らが問題を解決するための課題を設定し、あらかじめ決められた期間の中で課題を達成することを目指す。
5 課題中心アプローチは、クライエントが自らの人生のストーリーを理解し、新たなストーリーに書き換えていくことを目指す。

解説

1→○解決志向アプローチの説明です。
2→×これは行動変容アプローチではなく、エンパワメントアプローチのことです。
3→×これはエンパワメントアプローチではなく、行動変容アプローチのことです。
4→×これはフェミニストアプローチではなく、課題中心アプローチのことです。
5→×これは課題中心アプローチではなく、ナラティヴアプローチのことです。

すっきり整理

項目 内容 提唱者 ホワイト、エプストン 背景の思想 ポストモダン、社会構成主義 キーワード クライエントの主体性と語り キーワード ドミナント・ストーリー(支配的な物語) キーワード オルタナティヴ・ストーリー(もうひとつの物語) ひとことで 自分を縛る物語を、対話を通して語り直していく 過去問をもとに著者が作成した図です。無断転載・複製はご遠慮ください。

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