問題解決アプローチとは
→他のアプローチはこちら
たくさんあるので、読む順番もご紹介しています。
問題解決アプローチは、パールマンが『ソーシャル・ケースワーク:問題解決の過程』(1957年)で示したものです。
土台にあるのは精神分析や自我心理学です。ここは診断主義の流れをそのまま引き継いでいます。そのうえで、対立していた機能主義学派の知見を取り入れました。だから折衷派と呼ばれます。
診断主義と機能主義の対立については、こちらで年表つきで整理しています。
→診断主義と機能主義はなぜ対立した?|統合までの流れを年表で整理
キーワードは「4つのP」
ケースワークの構成要素として示されたのが4つのPです。Person(人)、Problem(問題)、Place(場所)、Process(過程)。
PersonとProblem。人を見て、問題を見ていく。これは診断主義が大事にしてきたところです。
PlaceとProcess。機関の機能と、援助が進んでいく流れ。こちらは機能主義が大事にしてきたところです。
「問題を抱えた人が」「場所(機関)に来て、過程を通じて援助される」と時間軸の流れにそって考えると理解しやすくなります。
のちに Professional person(専門職)と Provisions(制度・資源)を加えて、6つのPとされることもあります。
もうひとつのキーワード、ワーカビリティ
ワーカビリティは、クライエント自身が援助を活用していく力のことです。動機づけ(Motivation)、能力(Capacity)、機会(Opportunity)の3つで捉えます。頭文字をとってMCOモデルと呼ばれます。
動機づけ(Motivation)は、何とかしたいと思っているか。
能力(Capacity)は、取り組むだけの力があるか。
機会(Opportunity)は、使える制度や人が周りにあるか。
ワーカビリティは「本人の力」を重視しますが、それだけではありません。「機会」という本人の外側にも目を向けています。
ワーカーが問題を一方的に解決するのでもなく、問題がひとりでに解決するのでもありません。クライエントが問題解決に取り組む、その力そのものに働きかけます。だから「問題を解決できる力を活用するアプローチ」で、問題解決アプローチなのです。
国家試験では、問題解決アプローチについて次のように出題されました。
○「クライエントの動機づけ,能力,機会を把握して支援を進める。」(第37回問題71)
×「機能的アプローチでは,4 つのPを実践の構成要素として,クライエントのコンピテンス,動機づけとワーカビリティを高めることを目指す。」(第36回問題100)→これは機能的アプローチではなく、問題解決アプローチのことです。
×「実存主義アプローチでは、その接触段階で、クライエントの動機づけ・能力・機会についてのソーシャルワーカーからの探求がなされる。」(第35回問題99)→これは実存主義アプローチではなく、問題解決アプローチのことです。
×「問題解決アプローチでは、クライエントのニーズを機関の機能との関係で明確化し、援助過程の中で、社会的機能を高めるための力の解放を焦点とする。」(第35回問題99)→これは問題解決アプローチではなく、機能的アプローチのことです。
×「問題解決アプローチでは,女性にとっての差別や抑圧などの社会的現実を顕在化させ,個人のエンパワメントと社会的抑圧の根絶を目指す。」(第36回問題100)→これは問題解決アプローチではなく、フェミニストアプローチのことです。
×「パールマン(Perlman, H.)の問題解決アプローチは、精神分析や自我心理学の理論を否定し、人・状況・その双方の関連性においてケースワークを捉えた。」(第32回問題101)→パールマンは、精神分析や自我心理学を土台にしています。「人・状況・その双方の関連性」は、ホリスの心理社会的アプローチのことです。
×「トール(Towle, C.)は、「ケースワークは死んだ」という論文を発表し、社会問題へ目を向けることを提唱した。」(第34回問題92)→「ケースワークは死んだ」を発表したのは、トールではなくパールマンです。
「ケースワークは死んだ」
パールマンは1967年に「ケースワークは死んだ」を発表し、ケースワークへの批判を受け止めて、その限界と存在意義を問い直しました。折衷を成し遂げた10年後のことです。
詳しい経緯はこちらで確認できます。
→マイルズ「リッチモンドに帰れ」パールマン「ケースワークは死んだ」どういう意味?|流れで覚えるアメリカのケースワーク史
過去問を解いてみましょう
第37回問題71
問題解決アプローチに関する次の記述のうち,最も適切なものを 1 つ選びなさい。
1 クライエントのもつ主体的な意志の力に注目し,支援機関の活用を図る。
2 クライエントの動機づけ,能力,機会を把握して支援を進める。
3 クライエントが直面している危機状況に対して,短期集中的に働きかける。
4 クライエントへの直接的な支援とともに,個人を取り巻く環境に働きかけを行う。
5 クライエントが解決を望む問題について,目標と期限を設定し課題に取り組む。
解説
1→×これは問題解決アプローチではなく、機能的アプローチのことです。
2→○動機づけ・能力・機会を把握するのは、問題解決アプローチです。
3→×これは問題解決アプローチではなく、危機介入アプローチのことです。
4→×これは問題解決アプローチではなく、心理社会的アプローチのことです。
5→×これは問題解決アプローチではなく、課題中心アプローチのことです。
第36回問題100
ソーシャルワークのアプローチに関する次の記述のうち,最も適切なものを 1 つ選びなさい。
1 機能的アプローチでは, 4 つのPを実践の構成要素として,クライエントのコンピテンス,動機づけとワーカビリティを高めることを目指す。
2 問題解決アプローチでは,女性にとっての差別や抑圧などの社会的現実を顕在化させ,個人のエンパワメントと社会的抑圧の根絶を目指す。
3 ユニタリーアプローチでは,ソーシャルワーカーが所属する機関の機能と専門職の役割機能の活用を重視し,クライエントのもつ意志の力を十分に発揮できるよう促すことを目指す。
4 実存主義アプローチでは,クライエントが自我に囚われた状態から抜け出すために,他者とのつながりを形成することで,自らの生きる意味を把握し,疎外からの解放を目指す。
5 フェミニストアプローチでは,システム理論に基づいて問題を定義し,ソーシャルワーカーのクライエントに対する教育的役割を重視し,段階的に目的を達成することを目指す。
解説
1→×これは機能的アプローチではなく、問題解決アプローチ(パールマン)のことです。
2→×これは問題解決アプローチではなく、フェミニストアプローチのことです。
3→×これはユニタリーアプローチではなく、機能的アプローチのことです。「機関の機能」と「意志の力」の二つがそろっています。
4→○実存主義アプローチの説明です。
5→×フェミニストアプローチは、女性が受けている差別や抑圧という社会的現実に目を向けるアプローチです。
第35回問題99
ソーシャルワークのアプローチに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 行動変容アプローチでは、クライエントの主体的な意思決定や自己選択が重視され、自分の行動と決定によって生きる意味を見いだすことを促す。
2 問題解決アプローチでは、クライエントのニーズを機関の機能との関係で明確化し、援助過程の中で、社会的機能を高めるための力の解放を焦点とする。
3 実存主義アプローチでは、その接触段階で、クライエントの動機づけ・能力・機会についてのソーシャルワーカーからの探求がなされる。
4 ナラティヴアプローチでは、クライエントのドミナントストーリーを変容させることを目指し、オルタナティヴストーリーを作り上げ、人生を再構築するよう促す。
5 機能的アプローチでは、ターゲット問題を明確化し、クライエントが優先順位をつけ、短期処遇を目指す。
解説
1→×これは行動変容アプローチではなく、実存主義アプローチのことです。
2→×これは問題解決アプローチではなく、機能的アプローチのことです。
3→×これは実存主義アプローチではなく、問題解決アプローチのことです。動機づけ・能力・機会は、パールマンが示したものです。
4→○ナラティヴアプローチの説明です。
5→×これは機能的アプローチではなく、課題中心アプローチのことです。
第32回問題101
ソーシャルワーク実践理論の基礎に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ランク(Rank, O.)の意志療法は、利用者の過去に着目し、利用者のパーソナリティの構造や自我の働きを捉える診断主義学派の礎となった。
2 ロス(Ross, M.)のコミュニティ・オーガニゼーション説は、地域における団体間調整の方法としてのインターグループワークを提唱した。
3 ホリス(Hollis, F.)の心理社会的アプローチは、診断主義学派と機能主義学派、両アプローチの折衷アプローチであり、両学派の統合を試みた。
4 タフト(Taft, J.)ら機能主義学派は、ソーシャルワーカーが所属する機関の機能に着目し、機関におけるソーシャルワーカーの役割を重視した。
5 パールマン(Perlman, H.)の問題解決アプローチは、精神分析や自我心理学の理論を否定し、人・状況・その双方の関連性においてケースワークを捉えた。
解説
1→×ランクの意志療法は、機能主義学派の礎です。
2→×インターグループワークを提唱したのは、ニューステッターです。ロスは、住民の参加と組織化を重視する地域組織化説を示しました。
3→×ホリスの心理社会的アプローチは、診断主義の流れをくむアプローチです。両学派の折衷を試みたのは、パールマンです。
4→○機能主義学派の説明です。
5→×パールマンの問題解決アプローチは、自我心理学などの理論を取り入れ、診断主義と機能主義を折衷したものです。
第34回問題92
ソーシャルワークの発展に寄与した代表的な研究者とその理論に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ホリス(Hollis, F.)は、「状況の中の人」という視点で、心理社会的アプローチを提唱した。
2 トール(Towle, C.)は、「ケースワークは死んだ」という論文を発表し、社会問題へ目を向けることを提唱した。
3 パールマン(Perlman, H.)は、社会的要因が心理的要因に従属させられていると指摘し、両者の再統合を提唱した。
4 ロビンソン(Robinson, V.)は、内的な特徴と外的な特徴を統合させて人間を理解することを提唱した。
5 ハミルトン(Hamilton, G.)は、社会科学とのつながりを意識して、「リッチモンドに帰れ」と原点回帰を提唱した。
解説
1→○ホリスの心理社会的アプローチの説明です。
2→×「ケースワークは死んだ」を発表したのは、トールではなくパールマンです。
3→×社会的要因が心理的要因に従属させられていると指摘し、両者の再統合を提唱したのは、パールマンではなくマイルズです。パールマンは、診断主義と機能主義を折衷して問題解決アプローチを提唱した人物です。
4→×ロビンソンは、タフトとともに機能主義アプローチを提唱した人物です。
5→×「リッチモンドに帰れ」は、ハミルトンではなくマイルズの言葉です。ハミルトンは、診断主義学派を理論化した人物です。
暗記から脱却しましょう
人名も単なる暗記ではないのだと思います。人は誰かの影響を受けて理論を構築したり、検討しなおしたりするからです。
パールマンがどのようにして対立する2つの学派を統合しようと試みたのかを理解すると、人名やアプローチの問題が歴史上のストーリーに見えます。とっかかりは暗記でもいいのかもしれませんが、影響関係や背景にあった考えなどを理解すると、意味のない暗記から脱却できる第一歩になると思います。
すっきり整理
ほかのアプローチと、読む順番についての記事はこちら
→ソーシャルワークのアプローチ 記事一覧|読む順番と提唱者・人名


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