この記事は「頻出!相談援助のアプローチシリーズ」の一つです。
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システム理論とは
システム理論は、物事を「バラバラの部品の集まり」ではなく、「互いに影響し合う一つのまとまり(システム)」として見る考え方です。
たとえば家族をイメージすると、父、母、子どもの3人を一人ずつ別々に見るのではなく、「家族」という一つのまとまりとして見るのです。例えば子どもが学校に行けなくなったとき、原因は子ども一人の中にあると捉えるのではなく、父と母の関係、家庭の空気、子どもと親の関係等、そのすべてが影響し合っている点に着目します。そして、その中の「誰か」あるいは「何か」が変われば(動けば)、それが全体に伝播していきます。これがシステム理論の見方です。
そのため、システム理論では、問題の原因を「個人」か「環境」かのどちらなのかと特定しようとする考え方ではありません。個人も、家族も、地域も、互いに影響し合いながら、連続してつながっていると捉えます。
開いたシステムと、閉じたシステム
システムには、外の世界から影響を受けるものと受けないものがあります。外部からの影響を受けないのが閉鎖システムです。たとえば、電池式の時計をイメージしてください。電池の量が最初に決まっていて、その量で、動く時間も、止まるタイミングも決まります。外部から影響を全く受けずに、与えられた最初の条件だけで全てが決まります。これが閉じたシステムです。
一方、外部の影響を受けながら変化していくのが開放システムです。人も、家族も、社会も、必ず外から情報やエネルギーを受け取り、同時に外部に対して情報やエネルギーを発信します。そのやりとりが絶えず続いているため、先ほどの電池のように最初の条件だけで着地点が画一的に固定されるわけではありません。逆に、出発点が異なっていたとしても、外部から受ける(あるいは与える)影響によって、同じところに着地することもありうるということです。つまり、出発地点も着地点も流動的であるということが前提となっています。
このことから、人や社会に、閉じたシステムは存在しないと考えられています。人は、外部との関わりの中で、絶えず変わり続けているからです。システム理論は、人間を「最初から着地点が決まっている存在」ではなく、関わりの中で変わり続ける存在として捉えるのです。
安定を保とうとする働き
開いたシステムは、絶えず変わり続けていますが、同時に、バランスを保とうとする力も働いています。この、安定を保とうとする働きを恒常性(ホメオスタシス)といいます。
その仕組みを支えているのが、フィードバックです。フィードバックは、一般的によく使われている言葉の通り、結果を見て再調整するという意味です。例えば、私たちの体を思い浮かべてみてください。体は、暑くなったというサインを受け取ると、自ら汗を放出して、体温を元に戻そうとする力が働きます。逆に寒いと感じれば、体を震わせるなどして、体温を上げようと試みます。こうやって、結果を見ながら自分の動きを整えていく、これがフィードバックです。
整理すると、「体温を36度台に保とうとすること」が恒常性(ホメオスタシス)です。そして「暑いと感じて汗をかき、寒いと感じて震える」その調整の働きがフィードバックです。恒常性という目的を、フィードバックという仕組みが支えている、という関係になります。
この「結果を受け取って自分を調整する」仕組みを理論にしたものを、サイバネティックスといいます。ここで大事なのは、そこには必ず外部からの情報や刺激があるということです。この刺激(先ほどの例だと暑さや寒さ)に対してフィードバック(汗を出したり、体を震わせたり)し、調整しているのです。外部からの刺激がなければ、変わることはありません。自ら変わるのではなく、外部からの影響で「変わる」ことが前提になっているため、自ら何の刺激もなく変化するということは、理論上起こりえないという立場をとります。
システム理論で、支援をどう見るか
このような考え方は、ソーシャルワークの実践にどのようにつながっているのでしょうか。
たとえば、母親が子どもの成績を心配して、勉強しなさいと口うるさく言ったとします。→子どもは反発して、ますます勉強しなくなります。→成績が下がると、母親はもっと小言を言います。→子どもはさらに反発します。・・・この悪循環は、もう2人の力だけでは止まらなくなっているように見受けられます。システム理論では、これを、家族というシステム全体がどうにもできない負のループにはまってしまった状態、すなわち膠着状態と捉えます。母親が悪いのでも、子どもが悪いのでもありません。両者の関係性が負のループにはまり、膠着状態から脱却できなくなってしまっているのです。
ここで、開いたシステムが機能すれば、どのような変化をもたらすことができるでしょうか。外からの刺激があれば「変わるきっかけが生まれる」ということです。家族だけでは変われなかったとしても、開いたシステムであれば、外からの刺激で膠着状態から抜け出すことができるかもしれません。人や社会に、閉じたシステムは存在しないと先ほど述べました。人は必ず、外部からさまざまな刺激を受けて変化します。この刺激の一つが、ソーシャルワークなのです。
だからソーシャルワーカーは、誰か一人を責めるのではなく、家族の関係そのものに外から働きかけて、止まっていた循環を動かしていきます。これが、システム理論に立った支援です。
システム理論のもう一つの意味|方法の統合
かつては、個人を対象とするケースワーク、集団を対象とするグループワーク、地域を対象とするコミュニティワークが、それぞれ別々の技術として扱われていました。対象の大きさが違うので、別のものだと考えられていたのです。
ところが、システム理論からみると、
・個人を見るときも、その人と周りとの関係を見る
・集団を見るときも、メンバー同士の関係を見る
・地域を見るときも、人や組織のつながりを見る
どれも、要素と要素の「関係」を見て、その関係に働きかけており、中身は、同じなのです。
違うのは、対象の規模(1人なのか、集団なのか、地域なのか)だけであり、「関係を見て、関係に働きかける」というアプローチの仕方は変わらないと考えます。
そのためシステム理論は、バラバラに見えていた3つの方法を、一つの枠組みの中でつなげることができたと表現されているのです。
ここまで読んで、「ケースワーク・グループワーク・コミュニティワークは別々に発展しているが、これらには共通項があるはずだ」と主張したバートレットのことを思い出した方はいらっしゃらないでしょうか。気になる方はこちらのリンクをご参照ください。
ここで過去問を整理!
第34回 問98
システム理論に基づくソーシャルワークの対象の捉え方に関する記述のうち、正しいものを2つ選びなさい。
1 家族の様々な問題を、家族員同士の相互関連性から捉える。
2 個人の考え方やニーズ、能力を固定的に捉える。
3 個人や家族、地域などを、相互に影響し合う事象として連続的に捉える。
4 問題解決能力を、個人の性格特性的な力と捉える。
5 生活問題の原因を、個人と環境のどちらかに特定する。
→正答は1と3
1は、個人か家族かのどちらか一方を直接の原因とするのではなく、個人と家族の相互の影響で捉える考え方です。3は、個人・家族・地域といった環境が相互に影響し合うという捉え方です。どちらもシステム理論の見方です。2と4は個人を固定的・特性的に捉えており、5は原因を個人か環境かに特定しているため、システム理論の説明とは言えません。
第32回 問98
システム理論に関する記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ホメオスタシスとは、システムが恒常性を保とうとする働きである。
2 システムとは、複数の要素が偶然的に関わっている集合体である。
3 開放システムの変容の最終状態は、初期条件によって一義的に決定される。
4 外部と情報やエネルギーの交換を行っているのは、閉鎖システムである。
5 サイバネティックスとは、システムが他の干渉を受けずに自己を変化させようとする仕組みである。
→正答は1
3は、初期条件で決まるのは閉鎖システムです。4は、外部とやりとりするのは開放システムです。5は、サイバネティックスはフィードバックによって自己を調整する仕組みで、「干渉を受けず」というところが誤っています。
第36回 問98
システム理論の考え方に関する記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ピンカスとミナハンの実践モデルにおけるターゲットシステムは、目標達成のためにソーシャルワーカーと協力していく人を指す。
2 開放システムの変容の最終状態は、初期条件によって一義的に決定される。
3 システムは、他の要素からのフィードバックを受けることで、自己を変化・維持させようとする仕組みがある。
4 クライエントの生活上の問題に対し、問題を表出させている原因と結果の因果関係に着目する。
5 家族の問題に対して、課題を個々の家族員の次元で捉え、個人に焦点を当てたサービスを提供する。
→正答は3 2は、初期条件で決まるのは閉鎖システムです。
*ピンカスとミナハンの実践モデルについては、こちらをご参照ください。この記事で必ずわかるようになります。自信作の一つです。

第38回 問119
父(35歳)は、5年前に妻を亡くし、子(中学生)と2人暮らしである。父は、SNSで知り合った女性との再婚を考えていることを子に相談したところ、子は黙り込み、全く口を利かなくなった。学校も休みがちになった。この状況に困った父が子の担任に相談し、担任からAソーシャルワーカーを紹介された。Aは父と面接を行い、父がこれまでの経緯を話した。システム論に基づくアセスメントとして、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 勝手に再婚を決めた父に対して、子は怒りを感じている。
2 再婚が子に与える影響について、父と女性とで十分に話し合われていない。
3 父が子に再婚について十分に説明できていないことが原因である。
4 父と子は、お互いの気持ちを十分に話し合うことができない膠着状態に陥っている。
5 子の思春期特有の問題が影響している。
→正答は4 誰か一人の中に原因を求めるのではなく、父と子の関係そのものが動けなくなっている、と捉えるのがシステム論の見方です。
第29回 問98
システム理論に基づくソーシャルワーク実践モデルに関する記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ケースワーク、グループワーク、コミュニティワークという方法を統合する視座を示した。
2 システムの中心を個人と見なし、個人の変化に焦点化する方法を示した。
3 クライエントの自己への評価の低さに伴う否定的な感情に注目する視座を示した。
4 現実は社会的に構成されるという見方を示した。
5 精神の力動性に着目し、パーソナリティの変容を目指す視座を示した。
→正答は1
すっきり整理
| 基本の見方 | 物事を、影響し合う一つのまとまり(システム)として捉える |
| 開放 システム | 外とやりとりする。人・家族・社会。初期条件だけでは結末が決まらない |
| 閉鎖 システム | 外とやりとりしない。初期条件で結末まで決まる(例:電池式の時計)。人や社会には存在しない |
| キーワード | 恒常性(ホメオスタシス)/フィードバック/膠着状態/方法の統合 |
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