相談援助のアプローチをひととおり眺めていくと、ある時期を境に、議論の質が変わっていることに気づきます。それがバートレットの「そもそもソーシャルワークとは何か」という問いです。
それまでは「診断主義か、機能主義か」という、やり方の優劣をめぐる争いが議論の中心でした。
一方、バートレットは、アプローチの仕方云々の前に、その手前にあるソーシャルワークの土台とは何なのかを問い直しました。バートレットについて勉強すると、相談援助が新しいステージに入っていくことを感じられます。
バートレットは「〇〇アプローチの人」ではありません
先に、位置づけを確認しておきましょう。
ホリスやパールマンは、それぞれ心理社会的アプローチ、問題解決アプローチという方法を提唱しました。
一方、バートレットは、何か新しいアプローチを提唱したわけではありません。
それぞれのアプローチをまとめて確認したい方はこちらをご参照ください

バートレットは、これまで縦割りにバラバラに発展してきた「ケースワーク」「グループワーク」「コミュニティワーク」の3つを見比べて、「三者に共通するもの」は何かを抽出しようと試みました。多くの研究でよく行われることですが、たくさんの事例の中から共通項を探し出すという作業です。
ここが押さえられていれば、一般的なアプローチ論者たちと「追求しているもの」が少し違うことに気が付かれると思います。
バラバラだった3つの方法
当時、ソーシャルワークは、ケースワーク(個別)、グループワーク(集団)、コミュニティワーク(地域)という3つの技術として、それぞれ別々に発展していました。それを構築してきた人も、それを技術として伝える人も、それを学ぶ人も、それを現場で実践する人もバラバラです。同じ「ソーシャルワーク」を実践しているようにみえて、その中身の共通項はさほど意識されず、別々の分野のものとして発展し、そして実践されていたということです。
バートレットは、この3つを見比べて考えました。そして、対象や規模が違ったとしても、共通しているものを発見しました。それが「価値」「知識」「介入(調整活動)」です。著書『社会福祉実践の共通基盤』(1970年)の中で整理した3要素です。
共通基盤の3要素|価値・知識・介入
| 価値 | 実践の目的や方向性を示すもの。人間の尊重、自己決定など |
| 知識 | 判断や行動の根拠となるもの。人間や社会に関する科学的・経験的な知識 |
| 介入(調整活動) | 具体的な働きかけ。人と環境のバランスを回復するための調整活動 |
注目してほしいのは、3つめの呼び方です。試験では「介入」とも「調整活動」とも書かれますが、これは同じものを指しています。どちらで出題されても大丈夫なように意識しておきましょう。
価値と知識が優先される
ただし、この3つは、並列ではありません。バートレットは、価値と知識が優先されるべきであると述べています。
「方法論ありき」で「価値や知識」があるのではなく、先に「価値と知識」があって、そこから方法論を検討すべきだと主張しました。
ただし、価値と知識が優先されるとはいっても、バートレットは、この3つ(価値・知識・介入)が揃い、そのバランスが保たれることで、はじめて実践がその機能を発揮できるとしています。この「3つで一体」という点も、あわせて押さえておきましょう。
人と環境の「均衡」
もう一点、バートレットの視点として押さえておきたいことがあります。人と環境の関係を「釣り合い(均衡)」として捉えた、という点です。
人は、環境からいろいろな要求を受けています。働くこと、家族の世話をすること、地域と付き合うことなど、さまざまです。その一方で、人は、自らの力を発揮して、その要求に応えようと頑張ります。その間、環境が求めてくるものと、本人がそれに応えられる力とが釣り合っているうちは、人は何とかうまくやっていけるのです。一方、環境からの要求が大きくなりすぎたり、本人の力が落ちたりして、その釣り合いが崩れてしまうと、生活が回らなくなります。
バートレットは、ソーシャルワークの仕事は、バランスを失ってしまった状態(釣り合いがとれなくなった状態)を元に戻すことだと説明します。ある時は、本人の力を高めることもあるでしょうし、ある時は環境からの要求を減らすこともあるでしょう。もちろんその両方が必要な時もあるということです。これが人と環境のバランスを取り戻すという考え方です。
ホリスの「状況の中の人」と、どこか似ていますね。方法をめぐって対立していた時代の後で、人と環境をセットで見るという視点は、共通の土台として残っていったのです。
この問いは、今も生きています
バートレットが「価値」「知識」「介入(調整活動)」という共通項を主張したのは、半世紀以上も前の話です。ところが、いま私たちが学ぶソーシャルワーク専門職のグローバル定義(2014年)を読むと、同じ骨組みが残っていることに気づきます。
グローバル定義は、まず、さまざまな原理をソーシャルワークの中核に置きます。次に、ソーシャルワークの理論や、社会科学、人文学、その土地に根ざした知識を、拠りどころにするとします。そのうえで、人々の生活課題に取り組み、より良く生きられるように、人にも、社会の仕組みにも働きかけるとしています。
原理、知、そして働きかけ、この3つ並べてみると、バートレットの価値・知識・介入と、同じ内容なのです。半世紀を越えて、同じ骨組みが生きています。時代が変わってもソーシャルワークの本質は変わらないのだということに気づくと、この仕事の本質が見えてくるような気がします。
ただし、試験では注意が必要です。バートレットが言った「価値の体系・知識の体系・調整活動」は、あくまでもバートレットが示した共通基盤の言葉です。そのため、グローバル定義そのものは、考え方は似ているように見えても、別の言葉を用いて説明されています。根っこにある考え方は同じでも、使われている単語が違うので、もし「グローバル定義の本質的な要素は、価値の体系・知識の体系・調整活動である」と書かれていたら、それはバートレットの説明になってしまい、グローバル定義の説明としては適切ではないということです。使っている単語が違う点は注意しましょう。
グローバル定義についてはこちらをご参照ください

ここで過去問を整理!
第38回 問109
バートレットが示したソーシャルワークに関する記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 クライエントの自我の変化のための、診断と介入による実践として示した。
2 ケースワーク、グループワーク、コミュニティワークのそれぞれの専門家を必要に応じて組み合わせる、コンビネーションアプローチを提唱した。
3 診断主義と機能主義の折衷主義として、問題を持つ人が専門職のいる場所で支援を受ける過程であると示した。
4 価値、知識、介入方法の可視化された相対であり、それらは個別の方法としても分離可能であるとした。
5 社会的役割と関係性の中で人の機能に焦点を当て、環境との関係を重視することを示した。
→正答は5 1は診断主義派ケースワーク、3はパールマンの説明です。2は、バートレットは3つの方法を組み合わせることを主張したのではなく、3つに共通する土台を抽出しようと試みました。4は、価値・知識・介入は3つで一体のものであり、分離可能ではありません。
第36回 問93(選択肢)
ソーシャルワーク専門職のグローバル定義では、価値の体系、知識の体系、調整活動のレパートリーを本質的な要素とする。
→× 「価値の体系・知識の体系・調整活動」は、バートレットが示した共通基盤の言葉です。グローバル定義そのものは、別の言葉で述べられています(くわしくはグローバル定義の記事へ:準備中)。
第32回 問93(選択肢)
ゴールドシュタインは、価値の体系、知識の体系、および多様な介入方法の三要素に基づく、ソーシャルワーク実践の共通基盤を提唱した。
→× 共通基盤を示したのは、バートレットです。
バートレットは、調整活動のレパートリーに応じて価値や知識が異なることから、方法が価値や知識より優位にあると述べている。
→× バートレットは、価値と知識が優先されるべきであると述べています。
まとめると
1917年のリッチモンドから始まり、診断主義と機能主義が対立し、パールマンが折衷し・・・という長い流れの後、バートレットは、どの方法が正しいかを競うのをやめました。そして、全部に共通している土台は何かを取り出したのです。ケースワークもグループワークもコミュニティワークも、同じ価値と知識の上に立っている。ただ方法が違うだけなのだ、と示した人なのですね。
この記事は「頻出!相談援助のアプローチシリーズ」の一つです。
各アプローチの中身は、こちらからどうぞ。→頻出相談援助アプローチシリーズ

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