試験で頻出の「グローバル定義(2014年)」。単に定義文を暗記するだけでは解けない問題が増えています。
この記事では、近年の過去問(第33回〜第37回/38回は出題されていません)を分析し、出題された5つの切り口(定義文の文言、中核原理、知の基盤、旧定義との違い、重層展開)に沿って整理します。各切り口の最後に過去問のポイントをその場でチェックし、記事の最後に4問すべてを全文で解き直せる構成です。
1. 定義文の全体像(切り口①:定義文の文言)
まず、IFSW(国際ソーシャルワーカー連盟)およびIASSW(国際ソーシャルワーク学校連盟)により採択された定義の本文を確認します。読みやすいように4つに分解しました(原文は続けて書かれています)。
ソーシャルワーク専門職のグローバル定義
①ソーシャルワークは、社会変革と社会開発、社会的結束、および人々のエンパワメントと解放を促進する、実践に基づいた専門職であり学問である。
②社会正義、人権、集団的責任、および多様性尊重の諸原理は、ソーシャルワークの中核をなす。
③ソーシャルワークの理論、社会科学、人文学、および地域・民族固有の知を基盤として、ソーシャルワークは、生活課題に取り組みウェルビーイングを高めるよう、人々やさまざまな構造に働きかける。
④この定義は、各国および世界の各地域で展開してもよい。
試験対策のポイント
国家試験では、「どの概念がグローバル定義のものか」を他者・他団体の定義と混ぜて問う問題が出題されます。
・社会変革・社会開発・社会的結束
・エンパワメントと解放
・集団的責任
・地域・民族固有の知
これらのキーフレーズが出てきたら「2014年グローバル定義」だと一目で判断できるようにしましょう。
過去問チェック(第36回・問題93)
問題:グローバル定義の記述として適切なものを選ぶ。
正解:「社会変革と社会開発、社会的結束、および人々のエンパワメントと解放を促進する」。
誤答:パールマンの「4つのP」、バートレットの「本質的な要素」、ブトゥリムの「3つの価値前提」、
全米ソーシャルワーカー協会の「作業定義」の4つが誤答選択肢でした
2. 中核をなす原理と注釈(切り口②:中核原理・実践のリアリティ)
グローバル定義に付随する「注釈」からも深く問われます。特に間違いやすいのが「価値観の対立」と「社会的安定」についての記述です。
① 価値観は対立することがある
「多様性の尊重」と「危害を加えないこと」は、実践現場において常に滑らかに両立するとは限りません。特定の文化的慣習が個人の権利や生命を脅かす場合など、価値や原則が互いに緊張関係に立ち、対立・競合することがあると注釈で示されています。
② 社会的安定への関与とその条件
ソーシャルワークの基本姿勢は「社会変革」ですが、「社会的安定の維持」にも等しく関与します。ただし、条件があります。「特定の集団の周縁化・排除・抑圧に利用されない限りにおいて」です。
③ 優先順位と独自性の形成
実践の優先順位は固定的ではなく、国や時代、地域情勢によって変化します。また、ソーシャルワークの研究と理論は、専門家だけで机上で作ったものではなく、サービス利用者との対話的過程を通じて共同で作り上げられてきました。
過去問チェック(第35回・問題92)
〇:ソーシャルワーク専門職は、社会変革を任務とするとともに社会的安定の維持にも等しく関与する。
(※抑圧等に利用されない限り、という条件付き)
×:「多様性の尊重と危害を加えないことは対立せずに実現可能である」→ 誤り(対立しうる)。
×:「実践における優先順位は固定的である」→ 誤り(状況により変動する)。
3. 知の基盤(切り口③:Knowledge)
ソーシャルワークが拠って立つ「知識(Knowledge)」の範囲も、2014年定義で大きく広がりました。
「地域・民族固有の知」の導入
従来のソーシャルワーク理論は西洋(欧米)中心に発達してきましたが、2014年定義では「地域・民族固有の知(indigenous knowledge)」が明記されました。西洋の理論だけでなく、その土地や民族に受け継がれてきた知恵や価値観を尊重し、統合していく姿勢が求められます。
学問としての特徴
複合性:医学や社会学など特定の単一分野にとどまらず、複数の学問分野と地域・民族固有の知を基盤とします。
応用性と解放性:ソーシャルワークの研究と理論の独自性は、応用性と解放性にあります。閉鎖的な理論体系ではありません。
過去問チェック(第37回・問題65)
〇:地域・民族固有の知が基盤として位置づけられている。
〇:研究と理論の独自性は「応用性と解放性」にある。
×:「西洋の理論・知識のみを根拠とする」→ 誤り(西洋中心主義への批判が背景にある)。
4. 2000年旧定義との比較(切り口④:旧定義との違い)
2000年定義(旧定義)から何が変わり、何が引き継がれたかを整理しておく必要があります。
| 項目 | 2000年定義(旧定義) | 2014年定義(グローバル定義) |
|---|---|---|
| 基本 キーワード | 人間関係における問題解決、社会変革、人々のウェルビーイングの増進 | 社会変革、社会開発、社会的結束、エンパワメントと解放 |
| 中核原理 | 人権、社会正義 | 社会正義、人権、集団的責任、多様性尊重 |
| 知の基盤 | 人間の行動と社会システムに関する理論 | ソーシャルワークの理論、社会科学、人文学、地域・民族固有の知 |
| 介入の焦点 | 人々がその環境と相互に影響し合う接点 | 人々やさまざまな構造に働きかける |
| 展開 | 規定なし(─) | 各国および世界の各地域で展開してもよい(重層展開) |
試験での引っ掛けパターン
「旧定義に書かれていた(以前からあった文言」なのか
「2014年定義で新たに追加された内容」なのか が問われます。
・「人間関係における問題解決」
・「社会システムに関する理論」
・「環境と相互に影響し合う接点」
これらはすべて2000年旧定義の文言です。
「2014年で新しく加わった」と書かれていたら誤りだと見抜きましょう。
過去問チェック(第33回・問題92)
〇(変化した内容):定義は、各国及び世界の各地域で展開することが容認された。
×(旧定義の文言):「人間関係における問題解決」「社会システムに関する理論」「環境と相互に影響し合う接点」が追加された → 誤り(これらは旧定義からあった文言です)。
5. 重層的な展開(切り口⑤:グローバルとローカルの統合)
定義の最終文、「この定義は、各国および世界の各地域で展開してもよい」に関する出題です。
これを「重層的な定義」と呼びます。世界共通の大枠(グローバル定義)を保持しつつ、各国・各地域の歴史、文化的背景、社会情勢に合わせて展開してよい。世界中で「寸分狂わず同一の定義」を強制・推奨しているわけではありません。日本にも、この定義の日本における展開があります。
過去問チェック(第35回・問題92/第33回・問題92)
×:「本定義は、各国および世界の各地域を問わず、同一であることが奨励されている」
→ 誤り(地域に応じた展開が認められています)。
まとめ:5つの得点ポイント
1 定義文のキーワード:「社会開発」「社会的結束」「集団的責任」「解放」があれば2014年定義。
2 実践のリアリティ:原則どうし(多様性の尊重と危害を加えないこと)は対立しうる。社会的安定の維持にも、抑圧に使われない限り関与する。
3 知の基盤:「地域・民族固有の知」が含まれる。独自性は応用性と解放性。
4 新旧比較:「人間関係における問題解決」「社会システムに関する理論」「環境と相互に影響し合う接点」は2000年定義の言葉。
5 重層展開:世界同一を強制せず、各国・各地域での展開を容認している。
仕上げの腕試し!過去問全文
ここまで読んだら、仕上げに解いてみてください。4問すべて解けたら、この単元は完成です。
第33回・問題92(相談援助の基盤と専門職)
次のうち、「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」(2014年)が「ソーシャルワークの定義」(2000年)と比べて変化した内容として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 人間関係における問題解決を図ることが加えられた。
2 中核をなす原理として、社会の不変性の尊重が容認された。
3 実践の基盤として、社会システムに関する理論の導入が加えられた。
4 定義は、各国及び世界の各地域で展開することが容認された。
5 人々が環境と相互に影響し合う接点に介入することが加えられた。
正答 4
1 →× 「人間関係における問題解決」は旧定義の文言
2 →× 「社会の不変性の尊重」はどちらの定義にもない
3 →× 「社会システムに関する理論」は旧定義の文言
4 →〇
5 →× 「環境と相互に影響し合う接点に介入」は旧定義の文言
第35回・問題92(相談援助の基盤と専門職)
次のうち、「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」(2014年)に関する記述として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 本定義は、各国および世界の各地域を問わず、同一であることが奨励されている。
2 ソーシャルワーク専門職は、社会変革を任務とするとともに社会的安定の維持にも等しく関与する。
3 ソーシャルワークの原則において、マイノリティへの「多様性の尊重」と「危害を加えない」ことは、対立せずに実現可能である。
4 ソーシャルワークの研究と理論の独自性は、サービス利用者との対話的過程とは異なるところで作り上げられてきた。
5 ソーシャルワークの焦点は多様であるが、実践における優先順位は固定的である。
正答 2
1 →× 定義は各国・各地域で展開してよい(重層的な定義)
2 →〇
3 →× 状況によっては対立し、競合する価値観となることがある
4 →× 研究と理論はサービス利用者との対話的過程を通して共同で作り上げられてきた
5 →× 優先順位は国や時代によって異なる
第36回・問題93(相談援助の基盤と専門職)
「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」(2014年)に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 人間尊重、人間の社会性、変化の可能性の3つの価値を前提とした活動である。
2 人、問題、場所、過程を構成要素とする。
3 価値の体系、知識の体系、調整活動のレパートリーを本質的な要素とする。
4 ソーシャルワーク実践は、価値、目的、サンクション、知識及び方法の集合体である。
5 社会変革と社会開発、社会的結束、および人々のエンパワメントと解放を促進する。
正答 5
1 →× ブトゥリムの3つの価値前提
2 →× パールマンの4つのP
3 →× バートレットの本質的な要素
4 →× 全米ソーシャルワーカー協会の作業定義
5 →〇
第37回・問題65(ソーシャルワークの基盤と専門職)
「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」(2014年)におけるソーシャルワークの知(Knowledge)に関する次の記述のうち、適切なものを2つ選びなさい。
1 ソーシャルワークの理論的基盤及び研究は、専ら医学の知見に基づいて構成されている。
2 ソーシャルワークの研究と理論の独自性は、閉鎖性と応用性にある。
3 人々と作り上げてきたソーシャルワークの知は、それぞれの国や各地域においても、また国を越えて普遍的に、それぞれの形で、より適切に実践されることになる。
4 ソーシャルワークの知は、西洋の理論や知識を根拠としたものであることが期待されている。
5 多くのソーシャルワーク研究と理論は、サービス利用者との双方向性のある対話的過程を通して共同で作られている。
正答 3・5
1 →× 諸学問と地域・民族固有の知に基づく。専ら医学ではない
2 →× 独自性は応用性と解放性にある
3 →〇
4 →× 西洋中心主義への反省が定義の特徴。地域・民族固有の知を重視する
5 →〇
もっと詳しく知りたい方へ
グローバル定義の前の時代、ソーシャルワークの「共通基盤」を追い求めたのがバートレットです。定義の歴史をさかのぼりたい方はこちらもどうぞ。




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