マッピング技法とは
クライエントを取り巻く関係を図に表して整理する方法を、マッピング技法といいます。文章で書くと長くなる関係を一枚の図にまとめることで、支援者とクライエントが同じものを見ながら状況を確認できます。
国家試験で問われるのは、ジェノグラム、エコマップ、ソシオグラムの3つです。
・ジェノグラムはgenogram という英語で、gene(遺伝子・血統)と gram(図・記録)、日本語にすると世代関係図、家族関係図です。
・エコマップの eco も同じ発想で、ecology(生態学)とmap(地図)、人を取り巻く環境全体を一枚の地図にするので、生態地図と訳されます。
・ソシオグラムは socio(社会・集団)と gram で、集団の関係を描いた図です
記録の様式としては図表式に該当し、文章で記録するのは記述式です。こちらは別の記事にまとめています。
→ソーシャルワークの記録の文体|逐語体・過程叙述体・圧縮叙述体・説明体・要約体の違い
ジェノグラム
3世代以上にわたる家族関係を図式化したものです。世代関係図、家族関係図とも呼ばれます。

血縁関係と婚姻関係、出生・死亡・結婚・離婚といったライフイベントを書き込みます。男性を四角、女性を丸で表し、クライエント本人は二重の枠で囲みます。婚姻関係は二重線で結び、離婚は婚姻線の上に×を入れます。内縁関係は破線で結びます。同居している家族員は枠で囲みます。数字は年齢を示し、死亡は×とします。ライフイベントは年月日を書き入れることもあります。
エコマップ
クライエントと、その人を取り巻く社会資源との関係を図式化したものです。生態地図(ecology=生態学:map=地図)とも呼ばれます。ハートマンが1975年に考案しました。
→家族システムアプローチ|ハートマン・円環的因果律・境界を整理
中央にクライエントとその家族を置き、その周りに親族、友人、学校、職場、医療機関、福祉サービス、地域の団体などを配置して、線で結びます。

線の引き方で関係の質を表します。関係が強い場合は太線や二重線、弱い場合は破線で表すことが多く、葛藤やストレスのある関係はギザギザの線で示します。支援やエネルギーがどちらへ向かっているかを、線に矢印を添えて表すこともあります。
エコマップを描くと、線でつながっている資源と、図に出てこない(かかわりが持てていない)資源を確認できます。本人を支えている範囲はどこまでなのか、つまり支援の境界が見えてきます。また、支援前後のエコマップを比較すると、関係がどう変わったかも確認できます。
人と環境の交互作用に着目するという発想は、エコロジカルアプローチと同じです。
→エコロジカルアプローチ(ジャーメイン)
ソシオグラム
集団のメンバー間の関係を図式化したものです。モレノが考案したソシオメトリーという方法から生まれました。

個人を円で表し、選択(牽引)は実線、拒否(反発)は破線で結びます。矢印の向きで、誰が誰を選び、誰が誰を避けているかを示します。グループの中に小集団ができていないか、孤立している人がいないか、中心的な役割を担っている人が誰かといったことが見えてきます。
クライエント個人ではなく集団を対象にする点が、ジェノグラムやエコマップと違います。グループワークや学級集団の把握に用いられます。
過去問を確認しましょう
第38回問題71
ハートマン(Hartman, A.)によって開発されたエコマップに関する次の記述のうち,適切なものを 2 つ選びなさい。
1 クライエントを含む生態系システムとその境界を可視化することができる。
2 介入前後の変化を確認するツールとして活用できる。
3 関係性を強く示す線は,破線で記すことで関係性の濃淡を視覚的に捉えられる。
4 クライエントの状態をいくつかの典型例に分類することで,クライエントのニーズを把握できる。
5 これまでの複雑な家族ダイナミクスの展開を理解することができる。
解説
正答は1と2です。
1→○ クライエントと周囲の社会資源との関係を図に表すことで、その人がどのような環境の中にいるかと、その広がりの範囲を目に見える形にできます。
2→○ 支援の前後で書き比べることで、関係がどう変わったかを確認できます。
3→× 破線は結びつきの弱い関係を表します。強い関係は太線や二重線で表します。
4→× エコマップは個々のクライエントの関係をそのまま図にするものであり、典型例に分類するものではありません。
5→× ジェノグラムに関する記述です。世代を超えた家族関係の展開を扱うのはジェノグラムです。
第36回問題102
事例を読んで,乳児院のG家庭支援専門相談員(社会福祉士)が活用するアセスメントツールに関する次の記述のうち,最も適切なものを 1 つ選びなさい。
〔事例〕
一人暮らしのHさんは,慢性疾患による入退院を繰り返しながら出産したが,直後に長期の入院治療が必要となり,息子は乳児院に入所となった。Hさんは 2 か月前に退院し,職場にも復帰したので,息子と一緒に暮らしたいとGに相談した。ただ,「職場の同僚ともうまくいかず,助けてくれる人もいないので,一人で不安だ」とも話した。そこでGは,引き取りに向けて支援するため,アセスメントツールを活用することにした。
1 同僚との関係を整理するために,ジェノグラムを作成する。
2 息子の発育状況を整理するために,エコマップを作成する。
3 周囲からのサポートを整理するために,エコマップを作成する。
4 自宅周辺の生活環境を整理するために,ソシオグラムを作成する。
5 Hさんの病状を整理するために,ソシオグラムを作成する。
解説
正答は3です。
1→× ジェノグラムが図式化するのは家族関係です。職場の同僚との関係は含まれません。
2→× エコマップは周囲との関係を図式化するものであり、子どもの発育状況を整理するものではありません。
3→○ Hさんは助けてくれる人がいないと話しています。誰がどのように関わっているかを図に表すことで、支えとなる資源とその不足が確認できます。
4→× ソシオグラムは集団のメンバー間の関係を図式化するものです。生活環境を表すものではありません。
5→× 病状はソシオグラムで整理するものではありません。
第29回問題118
相談援助の記録方法に関する次の記述のうち,正しいものを 1 つ選びなさい。
1 逐語体は,あらかじめ設定している援助課題の項目ごとに時系列で援助過程を簡潔に示すものである。
2 叙述体は,事実やその解釈,見解の要点を整理して示すものである。
3 要約体は,ソーシャルワーカーとクライエントの相互作用について時間経過に沿って詳細に示すものである。
4 ジェノグラムは,数世代にわたる血族・姻族関係,ライフイベントなどを図式化するものである。
5 エコマップは,グループメンバー間のつながり,構造,関係のパターンを図式化するものである。
解説
正答は4です。
1→× 逐語体は会話をそのまま再現するものです。
2→× 叙述体は解釈を加えません。この記述は、説明体の内容と要約体の内容を混ぜたものになっています。
3→× 要約体は時間経過に沿って詳細に示すものではありません。
4→○ ジェノグラムの説明です。
5→× ソシオグラムの説明です。エコマップが図式化するのは、クライエントと周囲の社会資源との関係です。
選択肢1から3は記録の文体に関する記述です。文体については、別の記事にまとめています。
→ソーシャルワークの記録の文体|逐語体・過程叙述体・圧縮叙述体・説明体・要約体の違い


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