診断主義アプローチとは
→他のアプローチはこちら
たくさんあるので、読む順番もご紹介しています。
提唱者:ハミルトン、トール、ギャレット
内容:リッチモンド「社会診断」×フロイトの精神分析
・クライエントが抱える問題の原因は、パーソナリティの側にあると考えるため、援助者は生育歴を聞き取り、過去にさかのぼって原因を突き止め、そこに働きかけます。医師が患者を診察して治療するのと同じ構図なので、医学モデルと呼ばれます。援助を進めるのは援助者の側で、援助者中心の発想だと整理されます。
→診断主義と機能主義はなぜ対立した?|統合までの流れを年表で整理
源流としてのリッチモンド
リッチモンドの特徴や功績は以下の通りです。
ケースワークの定義
リッチモンドは、ケースワークの体系化に貢献したことから、後に「ケースワークの母」と呼ばれます。
『ソーシャル・ケース・ワークとは何か』(1922年)では、ケースワークを、人間と社会環境との間を個別に意識的に調整することを通してパーソナリティを発達させる諸過程から成り立っていると定義しました。
『社会診断』(1917年)
『社会診断』では、社会的証拠の探索と収集を重視しました。思い込みや印象で判断するのではなく、事実を
め、確かめ、その上で援助を組み立てます。調査から診断へ、そして処遇へという手順です。
卸売的方法と小売的方法
卸売は問屋がまとめて大量に商品を扱うことで、小売は店が客ひとりひとりに販売することですが、リッチモンドはそれを援助の話にあてはめて説明しています。
卸売的方法は社会改良のことで、法律を作り、制度を整え、貧困を生む仕組みそのものを変えていくやり方です。一度に大勢の生活を変えることができます。小売的方法は個別救済のことで、目の前のひとりの事情を聞いて、その人に合った援助をします。一度にひとりです。
当時は、社会をまとめて変えるほうが主流であるべきで、ひとりずつ関わるのは対症療法にすぎないと見られていました。焼け石に水だ、というわけです。
リッチモンドはそこに反論して、小売的方法もまた社会環境を改革する一つの形態であると位置づけました。
リッチモンドと診断主義学派のずれ
診断主義学派はリッチモンドの枠組みを引き継ぎましたが、そこにフロイトの精神分析が入り、原因を個人の内面に求める方向へ進んでいきます。人の心の中を掘り下げることが援助の中心になっていったわけです。
リッチモンドが重視していたのは人間と社会環境との「間」を調整することでしたから、少しずれてきてしまったということになります。
そこでマイルズは1954年に「リッチモンドに帰れ」という表現で、当時のケースワークの在り方に警鐘を鳴らしました。ソーシャルワークが精神分析学に過度に傾斜してきたことへの反省から、社会科学とのつながりを意識して、原点回帰を提唱したのです。
→マイルズ「リッチモンドに帰れ」パールマン「ケースワークは死んだ」どういう意味?|流れで覚えるアメリカのケースワーク史
過去問を確認しましょう
第35回問題95
リッチモンド(Richmond, M.)の人物と業績に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。
1 ケースワークの専門職としてニューヨーク慈善組織協会に採用された。
2 ケースワークの体系化に貢献したことから,後に「ケースワークの母」といわれた。
3 社会改良を意味する「卸売的方法」は,個別救済を意味する「小売的方法」の始点であり終点であると位置づけた。
4 『社会診断』において,ケースワークが社会的証拠の探索と収集を重視することに対して,異議を唱えた。
5 『ソーシャル・ケース・ワークとは何か』において,ケースワークを人間と社会環境との間を調整し,パーソナリティを発達させる諸過程と定義した。
解説
正答は2と5です。
1→× 採用されたのはニューヨークではなくボルティモアの慈善組織協会です。
2→○ 記述のとおりです。
3→× リッチモンドは、小売的方法もまた社会環境を改革する一つの形態であると位置づけました。
4→× 『社会診断』で社会的証拠の探索と収集を重視したのがリッチモンドです。異議を唱えたのではありません。
5→○ 記述のとおりです。
第34回問題92
ハミルトンは、社会科学とのつながりを意識して「リッチモンドに帰れ」と原点回帰を提唱した。
解説
→× 「リッチモンドに帰れ」はマイルズの言葉です。ハミルトンは診断主義学派を理論化した側の人で、精神分析を取り入れる方向に進めた立場になります。原点回帰を唱えたのとは逆の位置です。
第33回問題98
リッチモンドは、人、状況、人と状況の相互作用という3つの相互関連性を説いた。
解説
→× ホリスの心理社会的アプローチの説明です。リッチモンドの定義は「人間と社会環境との間を個別に意識的に調整する」で、3つの相互関連性という整理はしていません。
すっきり整理
| 理論化した人 | ハミルトン、トール、ギャレット |
| 基礎理論 | リッチモンドの社会診断 フロイトの精神分析 |
| 問題の捉え方 | 原因は個人の精神内界にあると考える |
| 援助の進め方 | 過去にさかのぼって原因を診断し治療する。援助者中心・医学モデル |
| 源流 | リッチモンド『社会診断』(1917年)の治療モデル |
| リッチモンドの定義 | 人間と社会環境との間を個別に意識的に調整することを通して、パーソナリティを発達させる諸過程(『ソーシャル・ケース・ワークとは何か』1922年) |
| その他のキーワード | 社会的証拠の探索と収集/卸売的方法と小売的方法/「リッチモンドに帰れ」(マイルズ・1954年) |


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