パーソンセンタード・アプローチとは
提唱者はロジャース(Rogers, C.)です。医師ではなく心理学者でありながら、体系立った心理療法の理論を築いた人物として知られています。呼び方は時代とともに変化しており、「非指示的療法」→「クライエント中心療法(来談者中心療法)」→「パーソンセンタード・アプローチ(人間性中心的アプローチ)」という順で改名されてきました。
ロジャースは、援助関係が機能するために援助者が満たすべき中核3条件を示しました。
「自己一致(congruence)」は援助者が自分の内面と態度を一致させ、偽りのない状態でいること。
「共感的理解(empathic understanding)」はクライエントの内的世界をあたかも自分のことのように理解しようとする姿勢。
「無条件の肯定的関心(unconditional positive regard)」はクライエントの言動を評価・条件づけせずに、そのまま受け止める態度です。
この3条件が満たされた関係の中で、クライエントに本来備わっている「自己実現傾向(自己を成長・成熟させようとする力)」が発揮される、というのがロジャースの人間観の土台です。
キーワードは「環境の問題」「環境を本人に合わせる」
この人間観は、ソーシャルワークに応用されています。不適応が生じたとき、その原因を本人の性格や能力の問題として捉えるのではなく、本人を取り巻く環境の側に問題があると捉える点が特徴です。そのうえで、本人を環境に合わせて変えようとするのではなく、環境の方を本人に合うように変えたり調整したりすることを支援の中心に置きます。
「本人を変える」のではなく、本人の力を信頼し、本人を評価・条件づけせずに受け止めるというロジャースの姿勢が、ソーシャルワークでは「本人に環境を合わせる」という支援の方向性として表れている、とつなげて理解しておくと覚えやすくなります。
国試での出題を確認しましょう
第38回問題122
ソーシャルワークの支援に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。
1 パーソン・センタード・アプローチでは,不適応はその人の問題というより環境の問題と捉え,環境を人に合うように変えたり調整したりする。
2 エンパワメント・アプローチは,クライエントが自身の思考パターンを見い出し,誤った信念を修正して,内面化された抑圧に対処させる方法である。
3 ナラティブ・アプローチでは,クライエントがこれまでに気づいていなかった真実や過去の出来事に対する新たな解釈を見い出し,人生を「書き直す」ための助けをする。
4 認知行動アプローチは,まず偏った行動を変えることにより思考プロセスの変化を促すための支援方法である。 5 課題中心アプローチでは,支援者が専門的な観点から優先順位が高いと判断した課題に焦点を当てて解決する。
解説
1→○ 環境を本人に合わせて調整するという説明は、パーソン・センタード・アプローチの考え方として適切です。
2→× エンパワメント・アプローチは、クライエント自身が持つ力を引き出し、内面化された抑圧に対処する力を高める方法であり、思考パターンの誤りを修正するという説明は認知行動アプローチ寄りの内容です。

3→○ ナラティブ・アプローチは、クライエントが自分の人生の物語を新しい解釈で語り直すことを支援する方法であり、この記述は適切です。

4→× 認知行動アプローチは、行動よりも先に思考(認知)の偏りに働きかけることを重視するため、「行動を変えることで思考の変化を促す」という順序が逆です。
5→× 課題中心アプローチでは、支援者ではなく、クライエント自身が重要だと考える課題を優先して取り組む点が特徴であり、支援者が優先順位を決めるという説明は誤りです。

すっきり整理
| 提唱者 | ロジャース(Rogers, C.) |
|---|---|
| 呼称の変遷 | 非指示的療法→クライエント中心療法→パーソンセンタード・アプローチ |
| 中核3条件 | 自己一致/共感的理解/無条件の肯定的関心 |
| ソーシャルワークでの応用 | 不適応は環境の問題と捉え、環境を本人に合わせて調整する |
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