ソーシャルワークの記録の文体は5つ
ソーシャルワークの記録には、書き方の型として5つの文体があります。
①逐語体 ②過程叙述体 ③圧縮叙述体 ④説明体 ⑤要約体の5つです。
このうち②過程叙述体と③圧縮叙述体をまとめて叙述体と呼びます。テキストによっては「叙述体・要約体・説明体の3つ」と大きく分けたうえで、叙述体の中を過程叙述体と圧縮叙述体に分けるという書き方をしています。
国家試験では、文体の名称と説明を結びつける問題と、記録の一部を読んで文体を判断させる事例問題の両方が出題されています。
2つの軸で分けると整理できる
5つの文体は、次の2つの軸で分けると位置関係がはっきりします。
軸1 時系列に沿って書くか、要点をまとめるか
時系列に沿うのが、逐語体・過程叙述体・圧縮叙述体です。
要点をまとめるのが、要約体です。
説明体は、この軸では分けられません。
軸2 ソーシャルワーカーの解釈を加えるかどうか
加えない文体が、逐語体・過程叙述体・圧縮叙述体です。
加える文体が、説明体・要約体です。
説明体を特徴づけているのは、時系列かどうかではなく、事実に解釈を加えるという点です。
この2つの軸を意識しておくと、解きやすくなり、誤っている選択肢に気づきやすくなります。
| 文体 | 書き方 | 解釈 |
|---|---|---|
| 逐語体 | 会話をそのまま再現する | 加えない |
| 過程叙述体 | 支援の経過を時系列で詳しく書く | 加えない |
| 圧縮叙述体 | 支援の経過を時系列で、要点を圧縮して書く | 加えない |
| 説明体 | 事実に説明や解釈を加える | 加える |
| 要約体 | 支援に関する情報を要点にまとめる | 加える |
逐語体
ソーシャルワーカーとクライエントの会話を、発言そのままの形で再現して記録する文体です。「はい」「ええ」といった相づちや言い淀みも含めて書き起こします。
解釈は加えず、誰が読んでも、その場のやりとりを再現できる形になります。
実務では日常の経過記録に使うことはほとんどありません。面接技術の訓練やスーパービジョン、事例研究など、やりとりそのものを検討したい場面で用いられます。
また、目的は違いますが、社会福祉調査で実施するインタビューの文字起こしは、この逐語体と同様の形式です。
第33回問題115で、逐語体の説明を選ばせる問題が出題されています。
過程叙述体
支援の経過を、時間の順に沿って詳しく記録する文体です。いつ、誰が、何を、どのようにしたのかを追えるように書きます。こちらも解釈は加えません。会話の内容も書きますが、逐語体のように発言をそのまま再現するのではなく、要旨を文章にします。
読むと、その日その場面で何が起きたのかがひととおり分かります。
第38回問題72で、実習記録の文体を判断させる事例問題として出題されています。
圧縮叙述体
支援の経過を時間の順に沿って書くところは過程叙述体と同じですが、事実に焦点をあてて要点を圧縮して記録する文体です。こちらも、解釈は加えません。
実際の記録では、体言止めが多くなり、記述が短く区切られる形になります。日常の経過記録に用いられるのは、多くの場合この文体です。
第35回問題115で、支援記録の一部を読んで文体を判断させる事例問題として出題されています。
説明体
事実に対して、ソーシャルワーカーの解釈や説明を加えて記録する文体です。
解釈を加えるといっても、事実を書かずに解釈だけを書くわけではありません。「こういう事実があった」「そこからこう考えられる」という形で、事実と解釈がセットになります。
そのため、客観的な事実とソーシャルワーカーの解釈を明確に区別して書くことが求められます。どこまでが起きたことで、どこからが判断なのかが読み分けられない記録は、後から検証できなくなります。
要約体
支援に関する情報を、要点にまとめて記録する文体です。ソーシャルワーカーの解釈も含まれます。
個々の出来事を記載するのではなく、主訴は何か、生活状況はどうか、周囲の支援はあるか、現時点で必要な支援は何かといった形で、必要な項目ごとに整理します。
フェースシート、アセスメントシート、終結時のサマリーなどは要約体で書かれます。
説明体と要約体はどこが違うのか
5つの中でもっとも見分けにくいのが、説明体と要約体です。どちらもソーシャルワーカーの解釈を含むため、説明を読んだだけでは重なって見えます。
違いは、何を対象にして書いているかにあります。
説明体は、特定の事実を対象にします。
「朝、予約なく来所した」という事実があり、それに対して「切迫した状況にあると考えられる」と説明を加えます。
要約体は、支援全体を対象にします。
「経済的不安が主訴。単身であり、家族の支援は得られない」という形で、支援に必要な情報をまとめます。ここには、いつ来所したか、どこに座っていたかといった個別の出来事を記録するのではなく、支援の全体像がまとめられています。
昨日何があったのか知りたいという時は説明体(ただし、解釈が含まれている)
支援の全体像を確認したいという時は要約体
と理解することもできます。
事実と解釈を区別して書く
記録に書かれる事実とは、観察できたこと、実際に起きたことを指します。
電話をかけてきた、一人で椅子に座っていた、朝突然来訪した、「もう無理かもしれない」と話した。ここまでが事実です。誰が記録しても同じように書けます。
これに対して解釈は、その事実をどう見るかです。不安が高まっていると考えられる、周囲との関わりを避けている様子がうかがえる、といった記述がこれにあたります。
クライエントの発言は事実として扱います。「もう無理かもしれないと話した」は事実で、「疲弊が限界に近い」は解釈です。この2つを混ぜて「もう無理だと感じている」と書くと、本人がそう話したのか、ソーシャルワーカーがそう判断したのかが分からなくなります。
記録にソーシャルワーカーの判断や解釈を含めること自体は否定されていません。含めたうえで、客観的な事実と区別して記述することが求められます。
また、記録はクライエントが閲覧することを前提として記述することが望ましいとされています。社会福祉士の倫理綱領には、クライエントから記録の開示の要求があった場合、非開示とすべき正当な事由がない限り、クライエントに記録を開示すると定められています。ソーシャルワーカーが独断で不利益になると判断して、意図的に記載しないという扱いは適切ではありません。
過去問を確認しましょう
第33回問題115
ソーシャルワークの記録に関する次の記述のうち,逐語体の説明として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 クライエントの基本的属性に関する事項を整理して記述する。
2 経過記録などに用いられ,ソーシャルワーク過程の事実経過を簡潔に記述する。
3 出来事の主題に関連して重要度の高いものを整理し,要点をまとめて記述する。
4 出来事に対するソーシャルワーカーの解釈や見解を記述する。
5 ソーシャルワーカーとクライエントの会話における発言をありのままに再現して記述する。
解説
正答は5です。
1→× フェースシートに整理される内容であり、要約体の説明です。
2→× 圧縮叙述体の説明です。
3→× 要約体の説明です。
4→× 説明体の説明です。
5→○ 逐語体の説明です。
第38回問題72
事例を読んで,A病院の医療福祉相談室でソーシャルワーク実習中のBが,急性硬膜下血腫と診断されたクライエントのCさん(32歳)とDソーシャルワーカーの面接に同席した日の実習記録の形式として,次のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
〈8月31日実習記録〉
外来の看護師から「医師に入院・手術を要すると言われたCさんがお金がないと繰り返すので,相談に乗ってほしい」と連絡があった。10分後にCさんが来室。建設現場での作業中に転倒し,その後,頭痛が続くので受診したという。CさんはDに「金がないと治療できない。入院したら仕事もろくにできない。どうしろっていうんだ」と声を荒げた。Dは,深くうなずきながら傾聴し,Cさんの気持ちを受け止めた上で,仕事中のけがは労働者災害補償制度が適用されるなどの説明をしていた。
1 インターライ方式
2 SOAP
3 過程叙述体
4 DAP
5 要約体
解説
正答は3です。
1→× インターライ方式は、高齢者や障害者の状態を評価するためのアセスメント方式であり、記録の文体ではありません。
2→× SOAPは主観的情報、客観的情報、アセスメント、計画の4つの項目に分けて記録する問題志向型記録の方式です。事例はこの項目立てになっていません。
3→○ 看護師からの連絡、10分後の来室、Cさんの発言、Dの対応という順に、支援の経過が時系列で詳しく書かれています。
4→× DAPは、データ、アセスメント、計画の3つの項目に分けて記録する方式です。事例はこの項目立てになっていません。
5→× 要点をまとめたものではなく、経過を順に追った記録です。
第29回問題118
相談援助の記録方法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 逐語体は,あらかじめ設定している援助課題の項目ごとに時系列で援助過程を簡潔に示すものである。
2 叙述体は,事実やその解釈,見解の要点を整理して示すものである。
3 要約体は,ソーシャルワーカーとクライエントの相互作用について時間経過に沿って詳細に示すものである。
4 ジェノグラムは,数世代にわたる血族・姻族関係,ライフイベントなどを図式化するものである。
5 エコマップは,グループメンバー間のつながり,構造,関係のパターンを図式化するものである。
解説
正答は4です。
1→× 逐語体は会話をそのまま再現するものです。
2→× 叙述体は解釈を加えません。この記述は、説明体の内容と要約体の内容を混ぜたものになっています。
3→× 要約体は時間経過に沿って詳細に示すものではありません。
4→○ ジェノグラムの説明です。
5→× ソシオグラムの説明です。エコマップは、クライエントと周囲の社会資源との関係を図式化するものです。
第31回問題116
ソーシャルワークの記録に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 ソーシャルワーカーの判断や主観的な解釈を含めず,客観的な事実を記述する。
2 説明体は,事実についてのクライエントによる説明や解釈を記述するものである。
3 実践の根拠と証拠を示し,援助の評価にも活用される。
4 SOAP方式で記録する場合,Aはソーシャルワーカーが行う今後の援助計画のことである。
5 クライエントに不利益となるような情報を記載しないようにする。
解説
正答は3です。
1→× 記録にはソーシャルワーカーの判断や主観的な解釈も含めます。含めたうえで、客観的な事実と明確に区別して記述することが求められます。
2→× 説明体で書かれるのは、クライエントによる説明や解釈ではなく、ソーシャルワーカーによる説明や解釈です。
3→○ 記録は支援内容や支援効果についてのアカウンタビリティを果たす証拠となり、援助の評価やスーパービジョンにも用いられます。
4→× 今後の援助計画はPにあたります。Sは主観的情報、Oは客観的情報、Aはソーシャルワーカーが把握した情報をもとにした評価、分析です。
5→× ソーシャルワーカーが独断で不利益と判断して意図的に記載しないことは、援助に影響を及ぼすため適切ではありません。記録はクライエントが閲覧することを前提として記述することが望ましいとされています。
第35回問題115
事例は,Y地域包括支援センターのE社会福祉士によるFさん(74歳,男性)への支援記録の一部である。次のうち,用いられている文体として,最も適切なものを1つ選びなさい。
〔事例〕
最近,Fさんからの電話連絡が頻回に続き,電話越しに混乱し,慌てている状況があるため,Fさん宅を訪問。財布をなくしたと探しているので一緒に探したが見付からない。また,部屋が片付けられないのでイライラしている様子。片付けの手伝いをボランティアに頼むことができることを伝えると了承した。
後日片付けの日程の件で訪問。Fさんは片付けのことは忘れており,混乱し,怒り出してしまった。Fさんの言動や生活状況から認知症の進行も考えられるため,関係機関の見守りと早急なケース会議の開催を提案。
1 要約体
2 逐語体
3 過程叙述体
4 圧縮叙述体
5 説明体
解説(次の目次まで必ず目を通してください)
正答は4です。
1→× 「Fさん宅を訪問」「後日片付けの日程の件で訪問」と時系列で並んでおり、支援の経過を追える書き方です。要約体は時系列で書きません。
2→× 会話をそのまま再現している箇所がありません。
3→× 時系列である点は共通しますが、体言止めで事実が短く区切られており、過程叙述体のような詳しさがありません。
4→○ 時系列に沿いながら、要点を圧縮した書き方です。
5→× 試験センターが公表している正答では、説明体ではないとされています。ただし、この点については以下に述べます。
この問題について
この問題は、記録中の表現をソーシャルワーカーの解釈ととるかどうかによって、圧縮叙述体とも説明体とも読めます。どのテキストにも、圧縮叙述体にソーシャルワーカーの解釈は含まれないと記載されており、説明体は解釈が含まれるとの記載です。
「慌てている状況がある」「忘れており」「混乱し」「認知症の進行も考えられる」といった表現が
ソーシャルワーカーの解釈→説明体
ソーシャルワーカーの解釈ではない→圧縮叙述体
複数の解説を読みましたが、この違いに焦点をあてて明確に説明しているものは見当たりませんでした。相談援助を主に担当している講師の間でも、解釈が分かれます。
公式に公表されたものではありませんが、正答率は10%程度とされており、勉強していても落としていた可能性が高い問題だったと言えます。
試験センターが公表している正答は4ですが、上記のような懸念点があることだけ記載しておきます。


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