我が国の診療報酬の支払い方式は、出来高払いが原則です。そのうえで、包括払いが導入されているのは、入院医療の一部のみになります。出来高払いと包括払いはどのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか。またどのような入院に包括払いが適用されるのでしょうか。
このテーマ、第35回・第37回・第38回と、直近4年で3回出題されていますので、出題のポイントをもれなく解説します。
出来高払いとは
行った診療行為の一つひとつに点数がつき、それを積み上げて計算する方式です。検査をすれば検査の点数、注射をすれば注射の点数をそれぞれ足して総医療費を計算する仕組みです。
メリット→必要な医療を提供でき、診療の明細が確認できることです。
デメリット→やればやるほど医療機関の収入になる仕組みなので、過剰な診療を誘発する可能性があることです。
包括払いとは
一方、病名や病棟の種類に応じて、1日当たりの定額で計算する方式です。中身の診療行為を一つひとつ積み上げるのでは「こみこみ」で計算します。
メリット→過剰な診療を抑えられることです(次々提供しても医療費は同じなので)。
デメリット→定額であるがゆえに必要な薬や検査まで控えてしまう可能性があることです(医療機関からみると薬を出しても検査をしても報酬として認めてもらえないので)。また、出来高のように、その日実施された医療行為が明細にでるわけではないので、その日、実際にどんな検査や投薬が行われたのかが見えにくく透明性が担保できないという側面があります。
包括払いはどこに導入されているのか
我が国は、原則出来高払いで医療費を支払いますが、いくつかの病棟で包括払いが一部導入されています。
| 病棟の種類等 | 包括払いの内容 |
| 急性期入院医療(DPC対象病院) | DPC/PDPS:1日当たり定額+出来高の組合せ |
| 療養病棟入院基本料 | 1日当たりの包括払い |
| 地域包括ケア病棟入院料 | 1日当たりの包括払い |
| 回復期リハビリテーション病棟入院料 | 入院料は包括払い+リハビリテーション料は出来高 |
今のところ、回復期リハ病棟のみ出題されていません。
それ以外は全て「包括払い」の例として出題されています。
DPC/PDPSを正確に
DPC/PDPSは、急性期の入院医療を対象とした、診断群分類に基づく1日当たり定額報酬算定制度です。2003年に特定機能病院を対象に導入されました。
おさえたいポイントは2つです。
①「1日当たり」の定額だということ。1入院当たりではありません。モデルになったアメリカのDRG/PPSは「1入院当たり」の定額なので、ここが日本との違いです。
②すべてが定額に含まれるわけではないということ。入院基本料・検査・投薬・注射・画像診断などは定額に含まれますが、手術・麻酔・リハビリテーションなどは出来高で別に算定します。「包括」といっても、全部込みではありません。
すっきり整理:比較表
| 出来高払い | 包括払い | |
| 計算方法 | 診療行為ごとに点数を積み上げる | 1日当たりの定額 |
| 長所 | 必要な医療を提供しやすい 診療内容が明確 | 過剰な診療を抑えられる |
| 短所 | 過剰な診療を誘発する可能性 | 医療控えの可能性 透明性が失われやすい |
| 主な場面 | 外来(原則) | DPC・療養病棟 地域包括ケア病棟・回復期リハ病棟 |
過去問で確認!
第35回 問題72
診療報酬制度に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 診療報酬の点数は、通常3年に1度改定される。
2 診療報酬点数表は、医科、歯科、在宅医療の3種類が設けられている。
3 療養病棟入院基本料の算定は、出来高払い方式がとられている。
4 地域包括ケア病棟入院料の算定は、1日当たりの包括払い方式がとられている。
5 診療報酬には、選定療養の対象となる特別室の料金が設けられている。
正答:4
1 →× 改定は通常2年に1度
2 →× 点数表は医科・歯科・調剤の3種類
3 →× 療養病棟入院基本料は1日当たりの包括払い
4 →〇
5 →× 特別室の料金は医療機関が定める保険外の負担。診療報酬には設けられていない
第37回 問題105
診療報酬制度に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 介護報酬改定の時期と診療報酬改定の時期が重なることはない。
2 混合診療が行われた場合、診療報酬は減額して支払われる。
3 診療報酬上で、社会福祉士の配置や関与が評価されているものがある。
4 DPC制度(DPC/PDPS)とは、診療報酬の出来高算定制度のことである。
5 診療報酬の全体の改定率は、社会保険診療報酬支払基金が決定する。
正答:3
1 →× 6年に1度、介護報酬と診療報酬の同時改定がある
2 →× 混合診療は原則禁止。保険診療分を含めて全額自己負担となる
3 →〇 入退院支援加算など
4 →× DPC/PDPSは1日当たりの包括払い
5 →× 改定率は内閣が予算編成過程で決定する
第38回 問題108
診療報酬の支払い方式などに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 出来高払い方式は、必要な診療の手控えを誘発させる可能性がある。
2 出来高払い方式の弊害として、医師の裁量が制約されやすい点がある。
3 包括払い方式では、過剰な診療を誘発させる可能性がある。
4 包括払い方式の弊害として、診療内容の透明性が失われやすい点がある。
5 医療費適正化対策に伴い、DPC対象病院数は減少傾向にある。
正答:4
1 →× 手控えの可能性があるのは包括払い方式
2 →× 医師の裁量が制約されやすいのは包括払い方式
3 →× 過剰な診療を誘発する可能性があるのは出来高払い方式
4 →〇
5 →× DPC対象病院数は減少傾向ではない
第35回は「どこが包括か」。第37回は「DPCの定義」。第38回は「長所と短所」。切り口は毎回違いますが、この記事の内容で3問とも答えられます。
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