まず、前提を整理しましょう。今回導入されるのは「医療機関機能報告」制度ですが、「報告制度」自体は以前からありました。それが「病床機能報告」制度です。病院内の病棟が4つの機能(高度急性期・急性期・回復期・慢性期)のどれに該当するか選んで報告する仕組みで、これは今後も継続されます。
これに加えて今回「医療機関機能報告」が新設されました。病院は、病棟ごとの「病床の機能」に加えて、病院全体としての「医療機関の機能」も報告することになります。医療機関機能報告は、病院ごとに、地域で担っている役割を5つの機能から選んで都道府県に報告する仕組みで、令和7年(2025年)に成立した医療法等の改正で新設されました。
「新たな地域医療構想」の一部として、ここ数年で仕組みが大きく変わります。順に整理しましょう。
前提:地域医療構想とは
地域医療構想は、将来の医療需要を見据えて、地域ごとに必要な病床数などを定める構想です。2014年(平成26年)の第六次医療法改正で、都道府県が策定する医療計画の中に位置づけられました。
構想の材料になるのが、医療機関からの報告です。圏域の病院が有する病棟のうち、どの病棟が何床くらいあるかのデータを集め、地域の現状を把握し、将来の地域医療の姿を描くために、病床機能報告制度が創設されたという経緯です。
病床機能報告とは(以前からあった仕組み)
まず従前からあった仕組みについてです。病院には様々な病床がありますが、そのうち「一般病床」と「療養病床」を持つ医療機関が、病棟ごとに担っている医療機能を自ら選択して都道府県に報告する仕組みです。選択肢は次の4つ。高度急性期・急性期・回復期(今後は包括期)・慢性期 このどれに該当する病棟か、医療機関が自ら選んで報告します。同じ病院内にいくつか病棟がある時は、その病棟ごとに報告することになります。
*私も???と思っていたので、念のため追記。名称は「病床機能報告制度」ですが、報告は「病棟ごと」に行います。
令和7年改正で何が変わるのか
そして令和7年(2025年)、医療法等の一部を改正する法律が成立し、2040年を見据えた「新たな地域医療構想」が創設されました。都道府県は2026年度に新たな構想を策定し、2027年度から医療機関の連携・再編に向けた協議が本格化します。
変更点は大きく3つです。
①構想の範囲がひろがりました。これまでは入院医療(病床)を中心にした構想になっていましたが、外来・在宅医療・介護との連携まで含めた、医療提供体制全体の構想を策定します。
②医療機関機能報告の新設。従来の病床機能報告が『病棟ごと』の報告だったのに対し、こちらは『医療機関ごと』に、地域で担う機能を報告する仕組みです。詳しくはこの後じっくり
③病床機能の「回復期」が「包括期」に見直されます。急性期を過ぎた患者のリハビリを指す「回復期」から、在宅や介護施設で暮らす高齢者の急変への対応まで広く含めた包括的な機能、それが「包括期」です。
医療機関機能報告とは(新設)
先ほどの②に該当する、医療機関機能報告の新設について詳しく説明します。これまでは病棟ごとにその機能を報告するのみでしたが、今後は、病院ごとに「地域で担っている役割」も報告します。役割は次の5つに分類されていますので、どれに該当するかを選んで報告します。
①高齢者救急・地域急性期機能:高齢者の救急搬送を受け入れ、早期のリハビリを経て在宅や施設への復帰につなげる機能。「包括期」の病棟との関わりが深い機能です。
②在宅医療等連携機能:在宅医療を提供し、介護施設などと連携しながら、地域の在宅療養を支える機能。在宅患者の急変時の受け入れも含みます。
③急性期拠点機能:救急や手術等、急性期医療を地域で集約して担う拠点の機能。
④専門等機能:がん、リハビリ、精神など、特定の分野に特化した専門医療を担う機能。
⑤医育及び広域診療機能:医師の育成(医育)と、都道府県を越えるレベルの高度な診療を担う機能。
*大学病院本院を想定した機能なので、①〜④に比べると特殊な役割です。
なぜ医療機関機能報告を追加する意味があるのか、架空のA病院とB病院で考えてみます。
A病院 病棟3 病床機能報告では「急性期・急性期・包括期」と報告
B病院 病棟3 病床機能報告では「急性期・急性期・包括期」と報告
この2つを比べると、同じような病院に見えませんか。ところが、次のように書くとどうでしょうか。
「A病院は夜間に高齢者の救急搬送を次々受け入れている」
「B病院は高齢者に限らず、がんなどの手術を数多く引き受けている」
地域で果たしている役割が、全く違うことがわかります。
そこで今回の新制度にあてはめると、
A病院は「高齢者救急・地域急性期機能」
B病院は「急性期拠点機能」
ということになります。
これらを追加して報告してもらうことにより、医療機関としてどのような機能を果たしているのかまで、都道府県が把握できるようになります。これが見えると、「〇〇地区には病床が足りない」だけでなく、「〇〇地区は手術を担う病院に偏っていて、高齢者救急の受け皿が足りない」というところまで分かるので、地域医療構想に反映させることができます。これが新しい報告制度の概要です。なお、これらの機能は1つに絞る必要はなく、複数の役割を担っている病院は、該当する機能を複数選んで報告できます。
すっきり整理:2つの報告
| 病床機能報告 | 医療機関機能報告 | |
| 単位 | 病棟ごと | 病院(医療機関)ごと |
| 選択肢 | 4機能 (高度急性期・急性期・回復期→包括期・慢性期) | 5機能 (高齢者救急・地域急性期/在宅医療等連携/急性期拠点/専門等/医育及び広域診療) |
| 始まり | 2014年(平成26年)医療法改正 | 令和7年(2025年)医療法等改正で新設 |
| 共通点 | 医療機関が自ら選択して都道府県に報告する | |
過去問で確認
第34回 問題73
次の記述のうち、2014年(平成26年)の医療法改正(第六次)の内容として、正しいものを1つ選びなさい。
1 地域医療支援病院制度が創設された。
2 医療計画に地域医療構想の策定が位置づけられた。
3 特定機能病院制度が創設された。
4 地域的単位として、新たに区域(医療圏)が創設された。
5 療養型病床群の設置が制度化された。
1 →× 第三次医療法改正(1997年)
2 →〇
3 →× 第二次医療法改正(1992年)
4 →× 第一次医療法改正(1985年)
5 →× 第二次医療法改正(1992年)
第35回 問題73(日本の医療提供体制)
1 医療計画は、市町村が策定義務を負っている。
2 地域医療支援病院は、第1次医療法の改正(1985年)に基づき設置された。
3 診療所は、最大30人の患者を入院させる施設であることとされている。
4 介護医療院は、主として長期の療養を必要とする要介護者に対し、療養上の管理、看護、医学的管理の下での介護、必要な医療及び日常生活上の世話を行う。
5 地域包括支援センターは、地域における高齢者医療の体制を整えるため、地域医療構想を策定する義務を負う。
※選択肢5(地域医療構想の策定主体)が本テーマに直結しています。
1 →× 医療計画の策定義務は都道府県
2 →× 地域医療支援病院は1997年の第三次改正で創設(第一次ではない)
3 →× 診療所は19人以下の患者を入院させる施設
4 →〇 介護医療院の説明として正しい
5 →× 地域医療構想の策定義務は都道府県(地域包括支援センターではない)
第36回 問題73(医療法に基づく医療計画)
1 国が、地域の実情に合わせて策定することになっている。
2 医療提供体制の確保を図るためのものである。
3 医療圏は、一次医療圏と二次医療圏の2つから構成されている。
4 病院の定義や人員、設備の基準を定めることになっている。
5 2年ごとに見直される。
1 →× 策定するのは都道府県(国ではない)
2 →〇 医療計画は医療提供体制の確保を図るためのもの(医療法第30条の4)
3 →× 医療圏は一次・二次・三次の3つ
4 →× 病院の定義や人員・設備基準は医療法本体の規定(医療計画で定めるものではない)
5 →× 6年ごとに見直し(在宅医療等の中間見直しは3年)
今回病床機能報告制度は、「一般病床」と「療養病床」を持つ医療機関が、病棟ごとに担っている医療機能を自ら選択して都道府県に報告する仕組みとなっています。この療養病床は、「出来高払い」か「包括払いか」で出題されたこともあります。病棟と診療報酬の支払い方式の対応は、こちらの記事で整理しています。


コメント