2027年度から、「新たな地域医療構想」が始まります。それに合わせて、病床機能報告制度の4区分が「高度急性期・急性期・回復期・慢性期」から「高度急性期・急性期・包括期・慢性期」に変わります。
今回は、この「包括期」を整理します。
包括期とは
文章で書くと長くなるので、包括期の役割をまず並べます。
①高齢者救急等を受け入れ
②入院早期からの治療とともに
③リハビリテーション・栄養・口腔管理の一体的取組等を推進し
④早期の在宅復帰等を包括的に提供する
この①〜④の全てを担うのが「包括期」です。
③や④は、これまでの「回復期」のイメージに近いと思います。急性期の治療が終わった後の、リハビリと在宅復帰、回復期が担っていたのは、ここでした。
新しい包括期には、①と②も含まれます。救急の受け入れという入口から、治療、リハビリ、在宅復帰という出口まで全てです。単に回復期から包括期に名前が変わったのではなく、役割自体が広がっていることを理解しましょう。
ここまで読まれた方は「救急の受け入れは急性期の仕事では?」という疑問がわいてくると思います(私も最初そう感じました)。ここで急性期と包括期の「救急の受け入れ」の役割の違いについて説明しておきます。すぐに手術が必要な患者や、集中的な治療が必要な患者は、これまでどおり急性期が担います。一方で、包括期が受け入れるのは、そこまでの医療資源は必要ない比較的軽度の救急です。誤嚥性肺炎や尿路感染症で救急搬送された高齢者などをイメージしてください。緊急手術は必要ないが、入院しての治療は必要、このような救急患者の受け皿が包括期です。
ここで簡単に復習 病床機能報告制度
ところで、今、なぜこの病床について確認しているのか覚えているでしょうか。この包括期という名称は、病床機能報告制度で用いられる単語です。そこで病床機能報告制度について簡単に見直しをしておきます。
病床機能報告制度は、2014年(平成26年)の医療法改正で導入されました。一般病床・療養病床を持つ病院や有床診療所が、毎年度、自分の病棟がどの機能を担っているかを都道府県に報告する仕組みです。
※私も???と思っていたので、念のため追記。名称は「病床機能報告制度」ですが、報告は「病棟ごと」に行います。
機能はあらかじめ4つに分類されているため(高度急性期・急性期・回復期・慢性期)、この中から自ら選び報告します。この報告をもとに、都道府県が地域医療構想を策定し、地域の病床の機能分化・連携を進めてきました。地域医療構想は、同じ2014年の医療法改正で、医療計画の一部として位置づけられたものです。
この4つのうちの回復期が「包括期」になった、ということです。なぜ「回復期」を見直すことになったのか、次で確認します。
なぜ回復期のままではいけなかったのか
背景にあるのは、高齢者の救急患者の増加です。先ほどの例にあてはめて考えていきましょう。誤嚥性肺炎や尿路感染症は手術は必要ありませんが、本人の体には大きな負担があり、すぐに治療が必要な状態です。そのため、家族や本人からの要請で救急搬送されてきた、という場面です。「手術が必要なほど重くはない」「入院は必要」という状態です。こういう「比較的軽度だけど、確かに急性期」の高齢者が、これからますます増えていきます。
この患者さんが本格的な急性期病棟に入ると、どうなるか想像してみましょう。
病院目線・・・限られた急性期の資源を比較的軽い患者に投入することになる
患者目線・・・急性期病棟は治療が優先で、リハビリは手薄になりがち。ベッドで寝ている間に足腰が弱っていき、肺炎は治ったのに歩けなくなって家に帰れない
どちらの目線にたっても、いいことではありません。
このような場合に必要なのは、治療と同時に、入院初日からリハビリと栄養管理をし、速やかに在宅復帰を促すこと。この一続きを担う枠が、これまでの4区分(高度急性期・急性期・回復期・慢性期)にはありませんでした。そこで、回復期の枠を救急の入口まで広げて、「包括期」としたわけです。
地域包括医療病棟という新しい病棟
この「比較的軽度だけど、確かに急性期」の高齢者を受け止めるために、2024年度(令和6年度)の診療報酬改定で新設されたのが地域包括医療病棟です。
高齢者の救急患者等に対して、治療とともに、リハビリテーション・栄養管理・口腔管理・入退院支援・在宅復帰等の機能を包括的に提供する病棟です。誤嚥性肺炎や尿路感染症など、中等症までの急性期疾患を担います。
名前の似た病棟は、これまでも国家試験に出題されてきました。「回復期リハビリテーション病棟」と「地域包括ケア病棟」です。この2つと、今回新設された「地域包括医療病棟」。3つの病棟を並べると、在宅復帰を目指す病棟であるという共通点があります。ただし、「入院」するときの「入り口」が違います。以下で違いを確認してください。
回復期リハビリテーション病棟(2000年新設)
定められた一定の疾患等(脳血管疾患や大腿骨頸部骨折等)により一般の急性期で治療
急性期を経過した後に回復期リハ病棟で集中的なリハビリ→在宅復帰へ
地域包括ケア病棟(2014年新設)
「急性期治療を終えた患者(主に回復期リハ病棟の対象外の疾病等)」または
「在宅で療養中の患者の緊急の受け入れ」
どちらの場合も→在宅復帰支援へ
地域包括医療病棟(2024年新設)
高齢者救急の直接受入れ。治療と同時にリハビリ・栄養・口腔管理→在宅復帰へ
上記2つと違い、救急の受け入れから在宅復帰まで一つの病棟で完結させます。
この3つの病棟は、病床機能報告制度では「包括期」に該当する代表的な例と理解してください。
いつから「包括期」に変わる?
まず2026年10月から、医療機関機能報告が始まります。これは、病棟ごとの病床機能報告とは別に、医療機関全体としてどのような役割を担うのかを報告する、新しい仕組みです。こちらについては別記事をご参照ください。

そして2027年度から、病床機能報告の区分が新しい4区分(高度急性期・急性期・包括期・慢性期)に切り替わる予定です。包括期という区分での報告が始まるのは2027年度からです。
今年、2026年度は、都道府県が新たな地域医療構想を策定している年でもあります。これまでの地域医療構想は「2025年」に向けた取組でしたが、今後は「2040年頃」を見据えて、医療提供体制が再検討されることになります。入院医療だけでなく、外来・在宅医療、介護との連携まで含めた、地域の医療提供体制全体の構想になります。
新カリキュラムになってから、すでに法改正が決定してあとは施行を待つだけという制度も出題されています。こちらで紹介した包括期も、すでに導入することは決定していますので、出題される可能性はゼロではありません。また、直接的に出題されなかったとしても、今、国が何を考え、どのような政策に力をいれているのかを知っておくことは大きな意味があります。出題されるとしたら保健医療と福祉で出題されることが予想されます。頻出の診療報酬もあわせてチェックしてください。


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