厚生労働省は、短時間労働者に対しても医療保険や厚生年金保険を、できるだけ正社員と同じように適用する方向で法改正を進めています。雇用保険についても加入要件の見直しが予定されており(週20時間以上から週10時間以上へ、2028年10月施行)、被保険者の範囲を広げていくことは、社会保障全体に共通するテーマになっています。
この背景には、同じように働く人には同じ条件を適用すべきだという考え方と、被保険者を増やしていかなければ保険料収入が確保できず、財源が立ち行かなくなるという事情があります。ここでは、被用者保険の適用拡大について、現在の仕組みを中心に整理します。短時間労働者が社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入できるかどうかは、「4分の3基準」を満たすかどうかで、まず大きく2つに分かれます。

4分の3基準を満たす場合
1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が、その事業所の通常の労働者の4分の3以上である人は、企業の規模に関わらず、健康保険・厚生年金保険の被保険者となります。これが適用の原則です。
注意 51人以上の企業の規模はここでは問題になりません。必ず適用されます。
4分の3基準を満たさない場合(短時間労働者の特例)
4分の3基準を満たさない短時間労働者であっても、次のすべての要件を満たす場合は、被保険者となります。
①週の所定労働時間が20時間以上であること
②雇用期間が2か月を超えて見込まれること
③賃金の月額が8.8万円以上であること(注1:2026年10月撤廃予定)
④学生でないこと
⑤厚生年金保険の被保険者の総数が51人以上の特定適用事業所に勤めていることa
(注2:2027年以降改正予定)
注1:最低賃金の引き上げが続いたことで、週20時間働けばほとんどの場合この金額を超えるようになっており、実質的な意味を持ちにくくなっています。2026年10月は正式に撤廃される予定です。
注2:2016年当初は500人超が対象でしたが、2022年10月に100人超、2024年10月に現在の50人超(51人以上)まで引き下げられました。今後2027年10月以降は36人以上、2029年10月以降は21人以上と段階的に引き下げられ、2035年までに撤廃される予定です)
過去問で確認しましょう
第36回 問題32
Aさん(47歳)は、大学卒業と就職氷河期が重なったことにより、正社員として就職することができず、現在に至るまでアルバイトとして働いている。Aさんは7歳の子と二人で暮らしている。被用者保険の適用拡大によって、それまで国民健康保険の被保険者だったAさんは初めて健康保険の被保険者となった。これにより、Aさんの状況はどのように変化するか。
1 新たに、国民年金の第二号被保険者となる。 2 児童手当の支給額が増額される。 3 新たに、労働者災害補償保険が適用される。 4 新たに、介護保険の第二号被保険者となる。 5 健康保険の保険料を、Aさんが3分の2、事業主が3分の1を負担することになる。
1 →〇健康保険の被保険者になると同時に厚生年金保険の被保険者にもなり、国民年金の第二号被保険者を兼ねる。
2 →× 児童手当は被用者保険の加入と連動しない。
3 →× 労働者災害補償保険は雇用形態に関わらず、労働者であれば適用されている。
4 →× 介護保険の第二号被保険者は40歳以上65歳未満が対象で、Aさんは47歳のため、健康保険の被保険者になる前から対象である。
5 →× 健康保険の保険料は、被保険者と事業主が折半で負担する。
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