被保護者が医療保険に加入できる?国保との違いを過去問・演習問題で解説

社会保障
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生活保護受給者は国民健康保険に加入できない

生活保護を受給すると、原則として国民健康保険(国保)や後期高齢者医療制度の被保険者ではなくなります。国民健康保険法上、生活保護受給者は適用除外とされており、生活保護開始と同時に国保の資格を喪失し、保険証を返還する扱いになります。

医療サービスは生活保護法に基づく医療扶助として現物で支給されます。医療扶助では、指定医療機関を通じて医療費が原則全額給付されるため、被保護者本人の自己負担は発生しません。

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ただし被用者保険には加入できる

ここが誤解されやすいポイントです。国保・後期高齢者医療制度は適用除外になりますが、健康保険(被用者保険)は生活保護を受給していても加入し続けることができます。会社に勤務して健康保険の被保険者になっている人が生活保護を受けることになっても、健康保険を脱退する必要はありません。同様に、家族の被扶養者として健康保険に入っている場合も、その資格は維持されます。

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被用者保険と医療扶助の関係

被用者保険に加入している被保護者が医療機関を受診した場合、まず健康保険から通常の給付(3割負担分を除いた7割相当)が行われ、残りの自己負担分(3割)を医療扶助が補う、という仕組みになります。つまり、被用者保険と医療扶助を併用することで、結果的に被保護者の実質的な自己負担はゼロになります。

なお、厚生労働省の調査(平成18年被保護者全国一斉調査)によれば、被保護者のうち被用者保険に加入している人の割合は2.4%にとどまっており、大多数の被保護者は医療扶助のみで医療を受けている状況です。

なぜ被用者保険が優先されるのか(補足性の原理)

被用者保険に加入している被保護者が、医療扶助ではなく先に健康保険から給付を受けるのには理由があります。生活保護法第4条は「保護の補足性」を定めており、第1項では利用しうる資産・能力等の活用を、第2項では「民法に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする」と規定しています(他法他施策優先の原則)。

健康保険(被用者保険)は生活保護法とは別の法律に基づく給付なので、この「他法優先」の考え方により、まず健康保険からの給付が行われ、そこでカバーしきれない自己負担分だけを生活保護(医療扶助)が補う、という順序になります。「生活保護だからすべて医療扶助で賄われる」のではなく、「使える他の制度がある場合は、そちらを先に使ったうえで、足りない部分を生活保護が補足する」というのが基本的な考え方です。

短時間労働者の被用者保険加入拡大との関係

近年、被用者保険(社会保険)の適用対象が段階的に拡大されており、従来は加入対象外だった短時間労働者も、一定の要件(週の所定労働時間、賃金、企業規模等)を満たせば被用者保険に加入するようになっています。これにより、パート・アルバイトなど短時間労働で働きながら生活保護を受給している人の中にも、被用者保険の被保険者として健康保険に加入しているケースが増えていると考えられます。

被用者保険の対象拡大についてはこちらをご参照ください

被用者保険の適用拡大とは?4分の3基準と51人要件をわかりやすく整理
被用者保険の適用拡大を、4分の3基準と51人要件から整理しました。2026年10月の賃金要件撤廃、2027年以降の企業規模要件撤廃もあわせて解説します。

つまり、「生活保護=働いていない人が受ける制度」という理解ではなく、就労収入があっても最低生活費に満たない場合は保護を受けながら働くことができ、その際に被用者保険の適用拡大によって健康保険に加入する人が増えている、という近年の動きも押さえておくとよいでしょう。

過去問で確認しましょう

第35回 問題54(選択肢の一部)

社会保険制度の適用に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

5 生活保護法による保護を受けている世帯(保護を停止されている世帯を除く。)に属する者は、「都道府県等が行う国民健康保険」の被保険者としない。

→○ 正解。国民健康保険法上、生活保護受給世帯に属する者は被保険者から除外される(適用除外)。なお「保護を停止されている世帯」は除外の対象外である点にも注意

演習問題

被保護者と医療保険に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

1 被保護者は、健康保険(被用者保険)の被保険者又は被扶養者であっても、生活保護の開始と同時にその資格を喪失する。 
2 被用者保険に加入している被保護者が医療機関を受診した場合、自己負担分は医療扶助によって給付される。 3 被保護者は、生活保護法の規定により、被用者保険に加入することはできない。 
4 医療扶助と被用者保険からの給付は、いずれか一方しか受けることができない。 
5 被用者保険の被保険者である被保護者の保険料は、医療扶助から支払われる。

1→× 健康保険(被用者保険)は雇用関係に基づく制度であり、生活保護の開始によって資格を喪失することはない
2→○ 正解。被用者保険からの給付でカバーされない自己負担分は、生活保護法第4条の他法優先の原則に基づき、医療扶助が補う
3→× 被用者保険への加入を禁止する規定はなく、就労等により加入要件を満たせば被保護者であっても加入できる
4→× 被用者保険が優先され、そこで給付されない部分を医療扶助が補足するという併用の関係にある
5→× 医療扶助は医療費(自己負担分)を対象とするものであり、被用者保険の保険料そのものを支払う制度ではない。 被用者保険の保険料は、通常どおり給与から労使折半で天引きされる。

おさえておきたいポイント

①生活保護受給者は国民健康保険・後期高齢者医療制度の被保険者にはなれない(適用除外) 
②一方で健康保険(被用者保険)は、生活保護受給後も加入資格を失わない 
③生活保護法第4条の「補足性の原理」(他法他施策優先の原則)により、健康保険からの給付が優先され、自己負担分のみ医療扶助が補う 
④被用者保険の適用拡大により、短時間労働者も被用者保険に加入するケースが増えており、働きながら生活保護を受給する人の中にも健康保険加入者が増えていると考えられる 
⑤被保護者全体のうち被用者保険加入者は少数派(2.4%)で、大多数は医療扶助のみで医療を受けている

「生活保護=医療保険にいっさい入れない」という理解は誤りで、「被用者保険にも加入できない」という記述が出てきたら誤り、と判断できるようにしておくとよいでしょう。一方、国民健康保険や後期高齢者医療制度には加入できません。短時間労働者の医療保険加入の仕組みとあわせて確認しましょう。

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