生活扶助基準の設定方式とは
生活扶助基準は、厚生労働大臣が定める保護の基準のうち、日常生活の費用にあたる部分です。昭和59年から現在まで「水準均衡方式」を用いて、金額が算出されています。戦後からどのようは方式で生活費の計算が行われていたのか、その変遷を確認しましょう。
標準生計費方式(昭和21年度から昭和22年度まで)
旧生活保護法の下で用いられた方式です。経済安定本部が定めた世帯人員別の標準生計費を基に算出しました。
マーケット・バスケット方式(昭和23年度から昭和35年度まで)
飲食物費だけでなく衣類、光熱費、家具什器など必要な物資を一つひとつ積み上げて合計する方式です。買い物かご(スーパーマーケットのバスケット)に必要なものを入れていき、レジで合計金額を算出するイメージです。ラウントリーがヨーク調査で用いた貧困線の算出方法と同じ発想で、全物量方式(全ての必要なものを足す方式)とも呼ばれます。
ラウントリーの貧困の調査についてはこちらをご参照ください。
→貧困を「発見」した4人|ブース・ラウントリーから、貧困の再発見へ
エンゲル方式(昭和36年度から昭和39年度まで)
エンゲル係数を用いて生活費の総額を割り出そうとする方式です。栄養所要量を満たすことができる金額を基準にし、そこから生活費を算出しようとする方式です。
格差縮小方式(昭和40年度から昭和58年度まで)
低所得世帯と一般世帯との間の格差を埋めるため、生活扶助基準額消費水準の伸び率を上回る引上げを行って差を縮めていく方式です。
水準均衡方式(昭和59年度から現在まで)
一般世帯の消費支出の伸びに合わせて改定し、一般世帯とのバランスをとろうとする仕組みです。
この方式が導入された背景には、格差縮小方式のもとで生活扶助基準額の引上げを続けた結果、一般世帯と低所得者世帯の消費水準を比較して、一定程度バランスがとれたと評価されたことがありました。これまでの差を縮めていく方法から、一般世帯とのバランスを保ち続ける方法へ切り替えたことになります。
具体的には、政府経済見通しの民間最終消費支出の伸び率に準拠して毎年度の改定率を決めます。あわせて、全国消費実態調査(現在の全国家計構造調査)の結果を用いて、一般世帯の消費水準と生活扶助基準との均衡が保たれているかを定期的に検証します。
なお、検証に用いられる全国家計構造調査は、統計法に基づく基幹統計調査です。社会福祉調査の基礎で統計法や基幹統計が問われますので、あわせて確認してください。
→絶対的貧困と相対的貧困の違いはこちらをご覧ください|SDGsの極度の貧困は国際貧困線
絶対的貧困から相対的貧困へ
標準生計費方式、マーケット・バスケット方式、エンゲル方式は、生きていくために必要なものを積算して最低生活費を出す方式です。金額はその時の物価に左右されますが、一般世帯の消費水準と連動して決まるわけではありません。
これに対して格差縮小方式と水準均衡方式は、一般世帯の消費水準を基準として生活扶助基準を決めます。一般世帯の暮らしぶりにあわせて最低生活費を見直す仕組みです。絶対的な金額を固定するというより、相対的に金額を見直していくという考え方になります。
過去問を確認しましょう
第35回問題66
生活扶助基準の設定方式に関する次の記述のうち,最も適切なものを 1 つ選びなさい。
1 標準生計費方式とは,現行の生活保護法の下で,栄養審議会の答申に基づく栄養所要量を満たし得る食品を理論的に積み上げて最低生活費を計算する方式である。
2 マーケット・バスケット方式とは,最低生活を営むために必要な個々の費目を一つひとつ積み上げて最低生活費を算出する方式である。
3 エンゲル方式とは,旧生活保護法の下で,経済安定本部が定めた世帯人員別の標準生計費を基に算出し,生活扶助基準とした方式である。
4 格差縮小方式とは,一般国民の消費水準の伸び率を超えない範囲で生活扶助基準を引き上げる方式である。
5 水準均衡方式とは,最低生活の水準を絶対的なものとして設定する方式である。
解説
正答は2です。
1 →× 標準生計費方式は、旧生活保護法の下で経済安定本部が定めた標準生計費を基に算出する方式です。
2 →○ マーケット・バスケット方式は、必要な費目を積み上げて最低生活費を算出する方式です。全物量方式とも呼ばれます。
3 →× 記述の内容は標準生計費方式です。エンゲル方式は、エンゲル係数を用いて生活費の総額を算出する方式です。
4 →× 格差縮小方式は、一般国民の消費水準の伸び率を上回る引上げを行い、格差を縮小する方式です。伸び率を超えない範囲という記述が誤りです。
5 →× 水準均衡方式は、一般国民の消費実態との均衡を図る方式で、相対的な考え方に立ちます。絶対的なものとして設定する方式ではありません。


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