被保護者就労支援事業とは
被保護者就労支援事業は、生活保護法第55条の7に規定されており、「保護の実施機関は、就労の支援に関する問題につき、被保護者からの相談に応じ、必要な情報の提供及び助言を行う事業…を実施するものとする」とされており、保護の実施機関(福祉事務所等)が必ず実施しなければならない必須事業です。
対象は被保護者全般で、就労支援員による相談・助言・個別求人開拓等を通じて、ハローワークによる支援が適切な段階にある人を中心に、就労に向けた具体的な後押しを行います。
被保護者就労準備支援事業とは
被保護者就労準備支援事業は、生活保護法第55条の10第1項第2号に規定されており、「保護の実施機関は、次に掲げる事業を実施することができる」とされており、被保護者就労支援事業とは異なり任意事業です。対象は「雇用による就業が著しく困難な被保護者」に限定され、厚生労働省令で定める期間にわたり、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練を行います。日常生活習慣の改善や社会参加の準備など、すぐにハローワークでの求職活動には進めない段階にある人を対象とした、より手前の支援です。
「ひきこもり」「働く自信がない」「コミュニケーションが苦手」「無職期間が長引いて、生活リズムが乱れている」等、スムーズな就職活動が難しいと思われる背景がある場合に、まず利用することが想定される事業です。
上記被保護者就労支援事業を利用することが難しい「就業が著しく困難な被保護者」が対象になっているため、まずは被保護者就労準備支援事業→ステップアップとして被保護者就労支援事業へ移行することも想定されています。
両者の違いの整理
| 被保護者就労支援事業 | 被保護者就労準備支援事業 | |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 生活保護法第55条の7 | 生活保護法第55条の10第1項第2号 |
| 実施義務 | 必須事業(実施するものとする) | 任意事業(実施することができる) |
| 対象者 | 被保護者全般 | 雇用による就業が著しく困難な被保護者 |
| 支援内容 | 就労に関する相談・情報提供・助言 | 就労に必要な知識・能力向上のための訓練 (日常生活習慣の改善等) |
| 国庫負担・補助率 | 国庫負担4分の3(生活保護法第75条第1項) | 国庫補助3分の2以内(同条第2項) |
整理すると、被保護者就労支援事業は「今すぐ就労に向けて動ける人への相談・助言」、被保護者就労準備支援事業は「就労の前段階として、生活習慣や意欲の面から準備が必要な人への訓練」という位置づけの違いになります。費用負担の違い(国庫負担4分の3か、国庫補助3分の2以内か)も、必須事業か任意事業かという法的性格の違いをそのまま反映したものです。
生活困窮者自立支援法の類似事業との違いにも注意
生活困窮者自立支援法にも「生活困窮者就労準備支援事業」という類似の名称の事業があります。こちらは生活保護受給者ではなく、生活保護に至る前の生活困窮者を対象とする事業です。被保護者就労準備支援事業(生活保護法)と生活困窮者就労準備支援事業(生活困窮者自立支援法)は、対象者が「既に保護を受けている人」か「まだ保護を受けていない人」かで区別されます。事例問題では、登場人物が生活保護受給者かどうかをまず確認することが、どちらの制度が適用されるかを見極める手がかりになります。生活困窮者自立法では、こちらの事業は努力義務になっています。
生活困窮者自立支援法はこちらで解説

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第36回 問題68(事例問題)
Eさん(50歳)は、実家で両親と3人暮らしである。両親はともに80代で、実家は持ち家だが他に資産はなく、一家は両親の老齢基礎年金で生活している。Eさんは大学卒業後、出身地の会社に就職したが人間関係がこじれて5年前に退職し、その後は定職に就かず、実家でひきこもり状態である。Eさんの状況を両親が心配し、またEさん自身もこの状況をどうにかしたいと考えて、Eさんは両親とともに生活困窮者自立相談支援機関に来所した。D相談支援員は、アセスメントを経て、Eさんに今後の支援内容を提案した。事例を読んで、生活困窮者自立相談支援機関のD相談支援員(社会福祉士)が提案する自立支援計画案の内容に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 社会福祉協議会での被保護者就労支援事業の利用
2 公共職業安定所(ハローワーク)での生活困窮者就労準備支援事業の利用
3 認定事業者での生活困窮者就労訓練の利用
4 地域若者サポートステーションでの「求職者支援制度」の利用
5 生活保護法に基づく授産施設の利用
1→× 被保護者就労支援事業は生活保護法上の事業であり、対象は被保護者(保護受給者)に限られる。Eさんは被保護者ではないため対象外。実施主体も社会福祉協議会ではなく保護の実施機関(福祉事務所)です。
2→× 生活困窮者就労準備支援事業の実施主体は福祉事務所設置自治体であり、ハローワークではありません。
3→○ 就労訓練事業(中間的就労)は、生活困窮者自立支援法に基づき都道府県知事等の認定を受けた事業者が実施する事業で、対象は生活困窮者である。実施主体・対象者ともに矛盾がありません。
4→× 地域若者サポートステーションは49歳までの若者を対象としている。また求職者支援制度(求職者支援法に基づく制度)とサポステは同じ制度の枠組みでない点も注意が必要です。
5→× 授産施設は生活保護法上の保護施設であり、対象は要保護者である。Eさんは要保護者ではありません。
生活困窮者自立支援法についてはこちらをご参照ください

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